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16 夜の魔法実験

 しばらく魔法陣作成の練習を続けてた私に、マレイトさんがそろそろ日が暮れてきたと教えてくれた。


 さすがに真っ暗の中帰る気はしないので、この辺りで練習をやめることにする。


「大分熱心にやっとったようじゃが、大丈夫かの?」

「んー、集中したって感じの疲れはありますけど、ダルイとかってのは全然ないですね。まだまだいけますよ」

「もう驚くのにも慣れたわい……ほんと大した嬢ちゃんじゃ」

「では、暗くなる前に失礼しますね」

「ああ、また明日来るといい。続きを準備しておこう」

「よろしくお願いします」


 そのまま帰ろうとする私をマレイトさんが呼び止めた。


「ああ、ちょっと待つんじゃ」

「どうしました?」

「これを持って行くといいじゃろ」


 そう言って例の資料の山に近寄ると革を2枚引っ張り抜いた。


 よく崩れないなー……見てる方が怖いよ。


「これは?」


 差し出された革にはどれも魔法陣が記されている。

『光源』の魔法陣と比べても、どれも微妙に形が違うところを見ると別の魔法陣のようだ。


「『湧水』と『送風』の魔法陣じゃ。どうせ嬢ちゃんの事じゃから帰ってからも練習を続けるのじゃろ? 『光源』の魔法ばかりじゃつまらんじゃろうし、魔法陣を覚えるのも練習の一環じゃ。これも使ってやるのがよかろう」


 いやまぁ確かに帰ってからアレコレ試すつもりでしたが。

でもそう言う事ならありがたく持ち帰らせてもらいます。


「すみません、ありがとうございます」

「なに、ではまた明日にな」

「はい、失礼しますー」


 雑貨店を出た私は、傾いた陽を眺めつつ帰路についた。






 もうすっかり帰る場所と化してきた、セルデスさんの屋敷に戻った私は夕食後、儀式の予定を伝えるために執務室にお邪魔していた。


 目の前の椅子にはセルデスさん、テーブルを挟んで向かって座る私。テーブルの上にはポットとカップが2つ、それから近くで控えるグリックさん。いつも通りの構図だ。


 なんかこの光景も見慣れてきたなーと思いつつ報告をする。


「今日、聞いた話によりますと儀式は1巡りに1回、頭から数えて10日目に行われるんだそうです」

「ふむ、今日が25日目に当たるから……あと15日後か。いや、今日はもう何も出来んから実質あと14日と言ったところか」

「それから、儀式に参加するには事前にその神殿に参加する旨を伝えないといけないそうです。儀式の3日前から受け付けてくれると言ってました」


 ……あれ? そいや参加受付っていつまでやってるんだろ。

しまったなー、聞いてないや。


「そうなると実質、あと11日と言ったところか。ここから王都までなら、馬車を使うなら5日で到着するから、5~6日後に出発という事になるな」


 馬車で5日かー。歩いていくと10日ぐらい掛かるのかね。

そうなると猶予は実質1日……きっついなー。


 そーするとやっぱ馬車か。料金いくらぐらいするんだろ?


「王都まで馬車に乗るのって、どのぐらいお金かかりますか?」

「王都までの共用馬車を利用するなら、銀貨2枚で王都まで乗っていけるな」


 共用馬車……そんなのあるんだ。バスみたいなもんかな?

それに銀貨2枚=2万円って結構するなぁ。

5日分の旅行費(移動のみ)って思うと安いかもしんないけど。


「それなら、共用馬車を使った方がよさそうですね。それで行く事にします」

「ああ、それがよかろう。明日にでも予約をしてくるといい」


 予約?


「共用馬車に乗るのって予約が要るんですか?」

「おや、共用馬車に乗るのは初めてかね? 馬車に乗れる人数は限りがあるからね、いつ何人乗せるかを調整するために予約制になっているのだよ」

「分かりました……それなら早いうちに予約した方がよさそうですね。明日にでも行ってきます」

「それがよかろう、馬車ギルドの場所は昨日行った治療院のすぐ近くにある。馬車の絵が描かれた看板があるからすぐに分かるだろう」

「わかりました、ありがとうございます」


 馬車ギルドなんてものもあるのかー。予約するならその場で料金が必要なのかな?


 ……あ。忘れてた、預かってたお金ほぼ使い果たしてたんだっけ。

魔石の代金から引いてもらうように言わないと。


「ところでセルデスさん、預けてた魔石ってどうなりました?」

「冒険者ギルドの方で買取りたいと申し出があったからそこに売る事にしたが……どうかしたのかね?」

「実は今日替えの服が欲しくなり買いに行ったんですけど、思ったより値が張りまして。預かってたお金がほぼ無くなってしまったんで、魔石が売れたのならそこから差し引いてもらえないかと思いまして」

「む、そのぐらいは気にせずともよいのだ…が……分かった分かった、差し引かせてもらうからそう睨まんでくれ」


 無言でじーっと見つめたのが効いたようだ。


「ところで、どのぐらいで売れたんですか? 魔石」

「金貨4枚と半金貨5枚だな。もう少し粘ってももよかったかもしれんが……」


 うわ、400万+50万ですか……。銀行とかないかなー。


「かなりの大金ですね……」

「他ならぬ君の為だからね、頑張らせてもらったよ」

「あ、ありがとうございます?」


 どこに力入れてるんですかこの人は。


 もう……とにかく、なんか盗難防止の魔法がないか明日マレイトさんに聞いてみよ。






 セルデスさんの執務室を後にした私は部屋に戻り、湯浴みを済ませた後(ピンポン玉については気にせず使う事にした。代わりになるモノがないんだし)、今日覚えた魔法陣を作るやり方の復習をしていた。


 とりあえず、気になってた事を試しますか。


 見本の魔法陣が描かれた革を横に置き、右手を突き出し魔力を流す。

流れ出る魔力を調節しつつ見本の魔法陣と同じものを作るように魔力を置いていく。


 魔力が見えるって便利だなー。感覚だけでこれやれって言われたら無理だったかもしんない。


 魔力で形作った魔法陣に更に魔力を塗り固め、魔法陣が完成する。

作った魔法陣は今日散々練習した『光源』の魔法陣だ。


 完成した魔法陣に魔力をそっと流して光の球を生み出す。実験はここからだ。


 念のため、室内を見回し誰もいない事を確認したのち大鎌を取り出す。

軽く振りかぶって光の球を切りつけてみると、光の球は真っ二つになり消えてしまった。


 切れちゃった。これで魔力=魂のエネルギー説はほぼ確定かなー。


 大鎌を消し、次の実験に取り掛かる。

今度は魔法陣を形作った後、魔力を塗り固めることなくそのまま魔力を流してみるつもりだ。


 魔法陣に魔力を流せば魔法が発動するのなら、見えない状態(?)の魔法陣でも魔法が使えるのではないかと思ったからだ。


 同様に右手を突き出し魔力を流す。作る魔法陣は同じく『光源』。

……なんかこの作業にもいい加減慣れてきた気がする。


 魔力を流し、半透明の魔法陣を完成させるとそのまま魔力をそっと流す。

そして生み出される光の球。


 おー、これでも出来るのね。しかも塗り固める手間がないからこっちのが早いし。

でもこのやり方の説明は受けてないから……使われてないって事?


 このぐらい誰かが思いついてそうなモンなんだけどなー。

こっちのやり方についても明日マレイトさんに聞いてみよう。


 試したいのはこんなとこだっけ?

あとは……あ、もう1つあったか。ついでだし最後にもう1つ実験してしまおう。


 再び右手を突き出し魔法陣の作成に入る。作る魔法陣はまたまた『光源』だが、魔法陣自体の大きさを変えて効果をみるのが目的だ。


 ちょっと考えて3つのサイズで実験してみる事にした。

1つは倍のサイズ、1つは通常のサイズ、そしてもう1つは半分のサイズだ。


 それぞれのサイズで1つ1つ魔法陣を作成し、塗り固め魔力を流していく事にする。

大きいサイズの魔法陣は楽々完成したが、小さいサイズの魔法陣を作成するのはなかなかに難しかった。


 小さくした分、細かな部分を作るのが難しいわー……。


 なんとかして魔法陣を作り上げ、魔力を流した結果、目の前には同じ様に光る3つの光の球が完成。特に大きさや色が違うとかいった事もなく爛々と輝いている。


 魔法陣自体ののサイズを変えても効果には影響なしっぽい?

うーん、よく分からない。


 これも明日聞いてみるとしますか。


 気になってた事は試せたので、今日はもう休むことにしますか。

ベッドに入って目を瞑り、明日の予定を考える。


 明日は馬車の予約して、マレイトさんのところへ行って……かな。

それではお休みなさい……。


 …………。


 …………。


 …………。


 ま、眩しくて眠れない。『光源』の消し方ってどうすればいいのーっ。


活動報告にも書いていますが、10月31日の投稿はお休みさせていただきます。

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