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13 交渉

2014/03/30 ふりがな表記をカタカナに修正

 え? なに、なにが起こったの!?


 真っ白になった視界が徐々に戻ってくる。

カウンターの向こうには同じく驚いた顔のおじいさんが立っていた。


「驚いたの……お主、大丈夫か?」


 私自身と私の立っている付近は真っ白い粉のようなもので汚れてしまっている。


「えーと……、コレは一体……」


 混乱する頭を必死で静めながら深呼吸を繰り返す。


 …………。


 ……よし、もう大丈夫。

それで、今のは一体何事よ。


 私が落ち着いたのを見取ってか、おじいさんが口を開く。


「……魔力の込めすぎじゃよ。お主、一体どれだけの魔力を込めたんじゃ? 見てみぃ、ランタンが吹っ飛んでしもとるぞ」


 手に持つランタンを見ると取っ手の部分だけを残して残りの部分が全て跡形もなくなっていた。


 ヤバ、壊しちゃった!?


「うわ、ごめんなさい! ランタン壊しちゃったみたいで……」

「それよりお主、疲れたり怪我したりはしてないかの?」


 これといって特に痛むところはない。ランタンを握ってた手も大丈夫のようだ。

体にだるい所とかも感じられない。


「怪我は……大丈夫そうです、手も汚れてるだけのようですし、体にも異常はないみたいです」

「……そうか、無事でなによりじゃ」


 そう言ってカウンターから出て、店の入り口へ向かうおじいさん。


「どこへ行かれるんですか?」

「店を閉めるんじゃよ、さすがにこの状態で営業は出来んでの」


 う、ごめんなさいおじいさん。確かにこの真っ白の粉が被りまくってる状態じゃ営業なんて出来ないよね。


「ぅ、ごめんなさい……」

「すまんがお主はそこで待っとってくれ、あとで話があるでの」


 あうぅ、ランタン壊しちゃったし弁償かなー……。

あ、他のお客さん大丈夫だったんだろーか? 確か数人居たよね。


「他のお客さんは大丈夫だったんですか?」

「何を言っとるのじゃ? 他の客はとっくに帰っちまっとるぞ」


 店内を見回すが確かに誰もいない。


「あ、あれ? 確か2~3人見た気がするんですけど」

「お主がランタンを振り回し始めた辺りでみんな帰っちまったぞ、気付かなんだか?」


 げ、アレ見られてたんだ。うわハズカシイ……。

カウンターでお喋りしながらランタンを手に唸ったり振り回したりする女……我ながらおかしな光景だったと思う。


 他に巻き込まれた人が居ないのはよかったと思うけど、ちょっとへこむなー……。


「ここじゃなんだの、こっちへ着てくれんか」


 いつの間にか店じまいをしたおじいさんがカウンター奥にある扉の前で呼んでいる。


「分かりました……お邪魔します」


 扉をくぐり奥へと入る。おじいさんの先導で目の前の細い廊下を抜けるとなにやら研究室っぽい場所に出た。


「ま、そこに座ってくれ」


 おじいさんが示した部屋の隅にはテーブルが置いてあり、そのテーブルを挟むようにして椅子が置いてあった。

テーブルの片隅にはポットが1つと布を掛けられたコップらしきものが乗っている。


 私が片方の椅子に座ると対面の椅子におじいさんが座る。


「まずは自己紹介といこうかの、わしはマレイト・エークトル。魔法陣開発のかたわらに雑貨店を営んでおる」

「魔法陣開発……?」

「本職はこっちじゃ。が、さすがに開発だけだと食っていけんでな。雑貨店もやっとるんじゃ」


 その魔法陣開発ってのがよく分かんないんですけど。


「エクソシスト見習いのハルナです。ランタンを壊してしまって本当にごめんなさい」

「ん、なんじゃ、まだその事を気にしとったのか」


 あれ?


「? 違うんですか? てっきり弁償するために奥へ着たんだと思ってましたけど……」

「あぁ、違う違う。説明不足じゃったの、わしが呼んだのはそんな事ではない、嬢ちゃんにちょっと頼みたい事が出来ての」

「頼みたい事、ですか」


 うー、ランタン吹っ飛ばした手前断りづらいなぁ……。


「まあ、まずはお茶でも入れよう」


 マレイトさんはそう言ってテーブルの上に置いてあったコップを手に取り、ゆらゆら熱気漂うポットからお茶を注ぐ。


「ありがとうございます」


 2人分のお茶を入れたマレイトさんが話を続ける。


「頼みたい事と言うのは、わしの魔法陣開発を手伝って欲しいと言う事じゃ」

「……魔力の出し方すらついさっき知った、魔法とは無縁だった私に手伝えるとはとても思えませんが……」

「ああ、手伝いと言っても開発その物を手伝えというわけではない。開発した魔法陣の動作実験をお願いしたいんじゃ」

「動作実験……それ、危なくないですか?」

「実験というても、魔法陣に魔力を流し動く・動かないを見る程度じゃ。そうそう危険はあるまい。やってくれるなら報酬も用意するぞい?」


 話を聞く限りは問題ないように思うが気になることが2つある。


 1つはなぜ私なのかということ。この条件だと別段私でなくても魔力さえ流せれば問題はないはずである。


 2つ目はマレイトさんの魔法陣開発をしてるって肩書きだ。

開発と言うからにはそう簡単に他人に開発内容を開示することはしないはず。

それなのに実験の手伝いをして欲しいという事は、それを上回る何かがあると見て構わないだろう。


「……なぜ、私なんですか? 話を聞く限りだとあなた1人でも問題ない気がしますが」

「さっき嬢ちゃんがランタンを吹っ飛ばしたのが理由だな。あれは魔力の込め過ぎが原因なんじゃが、あれだけの量の魔力を、魔力を練った末ではなく一瞬にして出して疲れたそぶりも見せん嬢ちゃんだからこそ頼んでいるんじゃ」


 あれはすごい事やったって事?


「さっきのランタンを壊しちゃったのってそんなすごい事なんですか?」

「同じ事をやれと言われてもわしには出来ん。王宮の宮廷魔術師でも一瞬ではあんなマネは出来んと思うぞ。時間をかけてやったとしてもその後にぶっ倒れるわい」


 魔法を使う素質だけならバッチリって事ですか?


「話を戻すが、わしの開発のやり方がまず動く魔法陣を組む、と言うやり方での。消費魔力とか度外視して目的の効果を持った魔法陣を作るんじゃ。

 もちろんそのままじゃ動かせんから、消費魔力を抑えるように魔法陣を改造してそれから初めて魔法陣の動作実験となるわけじゃ。

 ここからが難しいところでの、そのまま素直に魔法陣が動いてくれればいいのじゃが、全然違う動作をすることもよくある話での。最初の作りが間違っとったのか、改造が原因で正常に動かなくなったのかが分からんのが困ったとこでの。

 ところがじゃ。ここで嬢ちゃんが居てくれると消費魔力とか度外視した状態の魔法陣でも動かす事が出来るんじゃないかと思ってな、わしの開発が凄まじくはかどるのだよ」


 む、難しい……。


「えーと……知らない事が多すぎてあんまり理解出来ませんでしたが、要は私がお手伝いする事によって開発がはかどると」

「要約するとそうなるの。必要となる魔法の基礎や知識についてもわしが教えよう。どうじゃ、受けてくれんかね?」


 引き受ければアルバイト料が入る上に魔法の基礎と知識が貰える、引き受けなければランタンの弁償ぐらいはあるかもしんないけどなにもなし、っか。


 正直、魔法には物凄く興味があるので受けてもいい気はするが、いくつか確認だけしておく事にする。


「いくつか質問があるんですが」

「なんじゃ?」

「まず1つ目なんですけど。もしこの話を受けたとしまして、ここに着て実験の手伝いをするってのは毎日やるんですか?」

「いや、魔法陣を組む方でかなり時間を取られるでな。動作実験をやるのは精々1巡りに1回、多くて2回といったところかの」


 意外と少ないのね。


「2つ目はちょっと聞きづらいのですが……報酬はどのぐらいいただけるんでしょう?」

「おおすまん、言い忘れとった。実験1回につき半金貨1枚出そう」


 えーと、銀貨10枚分だから……10万円!?

日雇いレベルで10万円とは、魔法初心者もいいとこの私には破格ではなかろーか。


「えーと、3つ目です。私は12日後、王都に用事があります。またこの先ちょくちょくとこの町を出る可能性も少なからずあると思います。そういった事情があるので定期的にお手伝いをするというのはかなり難しいと思うのですが?」


 これは本当の事である。一握りしか居ないと言われる宝石持ちのエクソシストになればあちこちから呼び出される事になるのは目に見えてるので、定期的にここを訪れると言うのは無理な可能性が高い。


 儀式を通過しなかった場合のことはこの際考えないでおく。


「む……。いや、頼んでるのはこちらじゃ、それで構わん。実験の手伝いは嬢ちゃんがこの町に居る時だけでいい、報酬も変わらず払おう」


 えぇぇ、この条件飲んじゃうの!? どんだけ高く買われてるんだ私は……。


「ただ、こちらにも予定があるでな。町を出る場合はなるべく事前に連絡して欲しいの」


 はぁ、参ったなー。ここまで譲歩されたらこの話受けるしかないじゃないの……。

ここで断るって選択肢は私にはないわー。


「聞きたい事は以上かの?」

「ええ……そうですね、質問は以上です」

「そうか。ならば返事を聞かせてくれんか?」

「ここまで言われて断るなんて事は出来ません。ここでのお手伝い、引き受けさせてもらいます」


 そう返事を返すとマレイトさんの顔に笑みが広がった。


「そうか、よかった。これからよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


「それにしてもしっかりとした嬢ちゃんじゃ。とても15~6とは思えんの……」


 待て。今なんてった。



などと言う没ネタが最後にあったとかなかったとか。


ちなみにハルナちゃんの年齢は肉体23歳中身26歳となってます。


また、活動報告で更新予告などをしておりますのでよろしければそちらも合わせてご覧下さい。

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