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12 雑貨店と魔法の道具

 再びダリタ君に案内され、市場から1本道を外れたところを少し進んだところで雑貨屋さんに到着。


 こんなとこにもお店あったのね……。これは気付かなかったなー。


「到着っと。よし、今日は開いてるな。この店、安くて品揃えいいんだぜ」

「へー、こんなとこにお店あったんだ……案内ありがとね」

「気にすんなって」


 早速中へ入りますか、と思った時、セニア先生が待ったをかけた。


「はーい、みんなはここまで。もうすぐゴミ拾いの時間でしょ」

「えー、もうちょっとだけいいだろ?」


 ゴミ拾い? なんの事だろ。


「ゴミ拾い、ですか?」

「ええ、孤児院の活動の1つなんですよ。子供達みんなで毎日ゴミ拾いをするんです」

「へー、そんな事してるんですね」

「領主様の方針なんですけどね」


 セルデスさん……の息子さんか。

そう言えば会った事ないなー、ずっと出掛けてるのかな?


「先生ー、もうちょっとだけいいだろ? まだハルナねーちゃんの案内終わってないしさ」

「んー、行きたい所はここで最後だし、私はもう大丈夫だよ? それに、ゴミ拾いも大事な仕事なんだしそっちに行かないと」


 あらら、なんだか悲しそうな顔。


「ほら、ハルナさんもああ言ってるんだからゴミ拾いに行きましょう?」

「わかったよ……ゴミ拾いに行く。ハルナねーちゃん、また着てくれよな」

「うん、また寄らせてもらうから」

「絶対だぞ、約束だかんな!」

「ん、約束ね」


 悪い気はしないけど、なんかえらく懐かれたなー。


「それではハルナさん、わたし達は一旦戻るのでこれで失礼しますね」

「はい、今日はありがとうございました」

「ハルナねーちゃん、またなー」

「さようなら、ハルナお姉さん」

「さようなら」

「おねえちゃん、またねー」


 ふぅ。なんか一気に静かになったかな……。

気を取り直して店に入りますか。


 店に入ると中はそこそこ広く、大き目の棚がいくつか置いてあるのが目に止まる。どうやら商品の種類ごとに棚を分けてあるようだ。


 商品の種類は様々で生活雑貨からアウトドア用品までって感じだ。

少し離れたところには外套(てゆかマント?)まで吊ってある。


「いらっしゃい」


 入り口横にあるカウンターから声を掛けてくる店番をしてるおじいさん。なんて言うか、趣味と実益を兼ねてでお店開いてますって感じだ。

客の姿はまばらで私の他に2~3人、店の中をそれぞれ見て回っている。


 まずはあのピンポン玉から探すかなー。


 ふふふ、こーゆーこまごまとした物を見るのは大好きなのだ。

なにかしら面白い物が見つかる事も多いしね。


 ゆっくり店内を見て回る。

匂い袋とか小銭入れなどが気になるがとりあえずそれらは後回しだ。

気にしてたら目的のものがいつまで経っても見つからないしね。


 変わった置き物発見。へー、これ小物入れなんだ。

……と、いかんいかん。まずはピンポン玉っと。


 アレコレと気を引かれつつごそごそ見て回るがなかなか見つからない。


 んー、店番のおじいさんに聞いてみるかな?


「すみませーん、ちょっと聞きたいんですけど」

「む、どうされましたか?」


 指で輪っかを作って大きさを示しながらたずねる。


「このぐらいのサイズで、お湯に溶かすと体や髪の毛を洗う薬液になるやつありますか?」

「ああ、それなら洗溶球じゃの。ちゃんと置いてあるぞい」


 おー、あった。洗溶球って名前なんだ……割とそのまんま?


「それ、見せてもらっていいですか?」

「ああ、少々待ってておくれ」


 そう言ってカウンターの裏にしゃがんで四角いクッキー缶ぐらいのサイズの木箱を取り出してきた。


「ほい、これでよろしいか?」


 パカっと木箱を開けると中にぎっしりとピンポン玉が。


「こっちの半分が普通のやつ、こっち側のが香草入りになっとるよ」

「おー、これです。これ1つでいくらぐらいですか?」

「1つ半銀貨1枚じゃよ」


 えーと、1,000円。……高っ!? これ使い捨てだよ!?


「この1箱じゃなくて1つでですか!?」

「ああ、これ1つの値段じゃ」

「ほえぇ……」

「貴族様の屋敷ではよく使われてるのじゃが、平民が常時使うにはちょっと厳しいかのぅ」

「高いモノだったんですね……」

「一応高級品じゃからの、滅多に買う人が居ないんでこうして裏に置いてるんじゃよ」

「ナルホド」


 とりあえず目的の物は見つけたので良しとしておく。値段は聞かなかった事にしよう。

他になんか面白いものとかないかな。


「んー……なんか面白いものとか置いてませんか? 買えるかどうかは別として、私そーゆーモノを見るのが好きなんですけど」

「面白いものかい?」

「ええ、珍しいモノとかでもいいんですけど」

「ほほ、嬢ちゃんとは気が合いそうだの。わしもそういった物は大好きでな、色々面白い物を集めてるうちに店が開けるぐらいの仕入れルートが出来まっちまっての。この店も半分趣味でやってるようなもんだよ」


 予想は当たったけど……いーのか初対面の客にそこまで話して。


「あはは……それでしたら遠慮なく。面白そうな物って何かあります?」

「そうだの、このランタンとかはどうかな?」


 そう言ってカウンターの裏から引っ張り出してきたのは1つのランタン。

持ち運び用の取っ手が付いてはいるが、ランタンの中心に光源になるような物はなにも見当たらなく、風除けのガラスもないただの張りぼてのように見える。


「普通のランタンは中に火を入れて使うんじゃが、これは中に何もないじゃろ?」

「張りぼて……じゃないですよね?」

「もちろん。これはこうやって使うんじゃ」


 そう言っておじいさんはランタンの取っ手を掴む。

すると張りぼてと思われたランタンの中心に小さな光の玉が出現し辺りを照らしだした。


「うわぁ……。なんですかこれ?」

「これは魔法のランタンじゃよ。取っ手を掴んだ人がランタンに魔力を送る事によって光を生み出す魔法が展開されるようになっておる」

「へぇー……」


 ついに出たよ魔法の道具っ。いいなー、面白そうだなー。

この分だと空飛ぶホウキとかもあるのかな。


「嬢ちゃんもやってみるかの?」

「いいんですか?」

「そうじーっと見つめられたら分かるわい」


 あはは、顔に出てたらしい。


「ほれ、取っ手を握って、ここにある魔法陣に指を当てて魔力を送ればいい」


 よく見れば取っ手の指が当たる部分に、円を中心としたなにやら複雑な模様が描かれている。

これが魔方陣ってやつかな?


 取っ手を握り、魔方陣に指を当てて……魔力を送るってどーやるのよ。


「む、どうした?」


 ランタンを手に固まってしまった私に声を掛けてくるおじいさん。


「えぇと……魔力を送るってどうやるんですか」

「ありゃ、知らなんだか。そりゃ悪い事をしたの。まあ、魔力なんて使わん人は一生使わんからな、知らなくても仕方ない」

「それじゃこのランタンって私に使えるんですか?」

「ああ、それは大丈夫じゃ。魔力は多かれ少なかれ誰でも持ってるものじゃからな」


 魔法なんてなかった別世界出身の私にもあるんでしょーか、魔力。


「じゃ、どうやればいいんですか?」

「そうだの……わしの場合だと、体の中の力を集めて取り出す感覚かの。曖昧ですまんな、この辺りの感覚は人によって違うようなのじゃ」


 むぅ、難しい。


「それじゃ色々試してみるのがよさそうですね。このランタンが光れば魔力が出せたと言う事で」

「おお、それはいいな。今までになかった発想だわい」

「そうなんですか?」

「今のやり方は、小指の先ほどの小さな玉を握ってやっておるのだ。魔力が流れたら玉の色が変わるようになっとっての、色が変われば成功というわけじゃ」

「ランタン握り締めてアレコレ試すよりかはそっちのがいい気がしますが……」

「それもそうだの」


 ひとしきり笑ったところでレッツトライ。


 光れーと念じてみる……ダメ。


 ふんっと力んでみる……これもダメ。


 上下にぶんぶん振り回してみる……1分ほど振り回してみたけど反応なし、ダメ。


「苦戦してるようじゃの」

「なかなか難しいですねー」

「ただ、さすがに振り回すのはなしだと思うんじゃが……」

「あははは、つい」

「さっきも言ったが、わしの場合だと体の中の力を集める感覚かの。なにかしらヒントになればいいんじゃが」


 力を集める、ねぇ。


「うーん……」

「まあ、そう焦りなさんな」


 集める……取り出す。


 取り出せるもの……大鎌? いやいやいや、こんな所で大鎌取り出してどーする。


 そいや大鎌取り出す時にも力を込めるイメージあったっけ。これでやってみるかな?


 ランタンの取っ手を握りなおし、大鎌を取り出す感覚でランタンを握り締める。

それと同時にランタンの中に生まれる光。


 おぉ、成功?


 と思った次の瞬間。


 パァァ────────────ン!!


 もの凄い破裂音と共に目の前が真っ白になった。


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