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11 市場でお買い物

2014/03/30 ふりがな表記をカタカナに修正

 次の日の朝、朝食を済ませた私は孤児院を目指して歩いていた。

昨日決めたとおり、エクソシストになるための儀式について聞くためだ。


 市場を抜け、職人通りを通り過ぎ、歩き続けると十字のシンボルが乗ったとんがり屋根が見えてくる。目指す孤児院まであと少し。


 これだけ歩き回れば少しは疲れそうなものだが、肉体的な疲れはまるで感じない。

気疲れは何度かあった気がするけど……こーゆーとこは死神体質(?)のままなのかね。


 なんだかんだと考えてる内に孤児院到着。さて、セニア先生は居るかなー。


「ハルナねーちゃん?」


 ひょいっと覗き込んだところで横から声を掛けられた。振り向くとそこにダリタ君が立っていた。


「ダリタ君、お早う」

「おはよう、ハルナねーちゃん」

「あれ、今日は1人?」

「今ちょっと先生に呼ばれててな。その帰りってとこ。アールとノルジュとミリーならなんでも部屋に居るぜ」

「そっか」


 ちょうどいいからダリタ君にセニア先生を呼んでもらおう。


「ハルナねーちゃんこそ朝からどうしたんだ? 町の案内してほしいのか?」

「あー、それはあとでお願いするかも。今日はセニア先生に用事があって来たんだけど、先生居るかな?」

「セニア先生ならさっき会ってきたぜ、呼んでくればいいのか?」

「うん、お願い出来る?」

「まかせとけ」


 そう言うとダリタ君は走って行ってしまった。そしてぽつんと取り残される私。

……なんか前にもこんな事があったよーな。


 ま、すぐ戻ってくるでしょ。


 そう結論付けて孤児院の入り口で待つ事約5分、玄関の扉が開いてセニア先生が顔を出した。


「セニア先生、お早うございます」

「お早うございます、ハルナさん。昨日はお世話になりました」

「いえいえ。アール君はもう大丈夫ですか?」

「お陰さまで。病気が治ったと聞き昨日からもう走りっぱなしですよ」

「それはまた……大変ですね」

「あのぐらいの子は元気が一番ですよ」


 少しだけ世間話をしたところで本題に入る。


「それで、今日はどうされたんですか?」

「えーと……ここは教会も兼ねてると聞きまして。教会の人に少し聞きたい事があるのでどなたか紹介して頂けないかと思って訪ねてきたんです」

「教会にご用でしたか。それでしたら、わたしがお伺いしますよ。これでも一応、教会の方にも在籍してますので」


 先生だけじゃなくシスター(でいいのかな?)も兼ねてるのね。それならセニア先生に聞いてみよう。


「じゃあ、少し質問させてもらってもいいですか?」

「ええ、出来るだけ答えさせてもらいます。ここではなんですから奥の部屋へ案内しますね」


 そう言って扉を開け中へと入っていく。私も先生の後に続いて中へと入る。

今日は玄関入ってすぐの左手の扉ではなく、正面奥の横長の大きな扉の方に行くようだ。


 こっちの大きな扉が教会、ってことなのかな。


 大きな扉をくぐると広めの部屋があり、横長の椅子が2列ずつずらりと並んでいる。

部屋の奥はちょっとした教壇のようになっており、その頭上の壁には大きな十字のシンボルが飾られていた。


「ここは……」

「ここは見ての通り礼拝堂ですね、お祈りする際はみなさんよくここを使われますよ」


 あ、礼拝堂でいいんだ。


 セニア先生は更に奥へ進み、教壇の隣にある扉を開いていた。


「こちらで話を伺います、どうぞ中へお入り下さい」

「あ、はい、お邪魔します」


 中は応接室のようだった。少し大きめの机を挟むように少しだけ横長の椅子と普通の椅子が置いてある。


「今、お茶をお持ちします。そちらの椅子に掛けて待っててください」

「ありがとうございます」


 椅子に座り、質問するべき事を頭の中で考える。

最低限聞きたいのは儀式の日程と参加資格だが、エクソシストについても聞いてみたほうがいいだろう。


「お待たせしましたー」

「あ、ありがとうございます」


 お茶が入り、セニア先生も椅子に座ったところで先生が口を開く。


「それじゃ、質問を伺いますね。なにをお知りになりたいんですか?」

「実は私、今エクソシストを目指してまして。それで、王都で行われるという御使い様に認めていただくという儀式に参加したいと思ってるんです」


 なんかセニア先生が目を丸くしてる……。


「ハルナさんって……エクソシストだったんですか。それも儀式に参加出来る程の」

「一応そういった事が出来るだけなんですけど……。それで、儀式が行われる日程を知りたいんです」

「儀式の日程ですか。儀式は確か1巡りに1回、頭から数えて10日目に行われるはずです。今日が25日目ですから、次の儀式まで15日あることになりますね」


 あと15日っか。王都までどのぐらいかかるんだろ?


「ただ、事前に儀式に参加すると伝えておく事が必要で、当日いきなり行っても儀式に参加できませんので気をつけてくださいね」


 げ、当日押しかけるのはダメなんだ。


「儀式に参加される方は、儀式の3日前から神殿で受付をやってるはずですからまずはそこで申し込みをするんです。その時、費用として銀貨が1枚と紹介状が必要になりますのでここも注意です」


 3日前から予約開始で銀貨1枚っと。

てことはあと12日かー、次の儀式に間に合うのかな?


「大体こんなとこですね、分かり難いとことかありましたか?」

「いえ、大丈夫です。銀貨1枚と紹介状以外に必要なものってあります?」

「それだけで大丈夫ですよ」

「分かりました、ありがとうございます」


 聞きたい事ってこんなもんかな? ……あ、儀式の内容って聞けるのかな。


「えーと、儀式の内容って分かります? どんな事をする、とか」

「わたしも直接見た事はないんですけど、聞いた話でよろしければ。

 確か、儀式に参加した人達が順番に、一抱えもある大きな魔石に触れて祈るそうですよ。そして、御使い様が力を貸してもいいと思われた人物、つまり認められた人が触れた場合、魔石を光らせて知らせてくれるそうです」


 魔石に触って祈って光ったらOKって事?


「それで、魔石が光った場合はその光り方に応じて、その場で神殿長から宝石名を授かるそうです」

「なるほど、分かりました」


 力を借りる気なんてさらさら無いんだけど……大丈夫かな、光るよね?


「他になにか、質問なさりたい事はありますか?」

「いえ、聞きたかった事は聞けましたのでもう大丈夫です。助かりました」

「そうですか、お役に立てたようでなによりです」


 お茶を飲んで、ほふー、と一息。

あまり長居するのもなんだしそろそろ失礼するとしますか。


「この後少し寄る所があるので、そろそろ失礼しますね」

「そうなんですか、では玄関までお送りしましょう」


 セニア先生に連れられて玄関を出たところで、再びダリタ君と遭遇。

今度はアール君、ノルジュ君、ミリーちゃんも一緒だ。


「あれ、ハルナねーちゃん? もう帰っちゃうのか?」

「うん、ちょっと市場に寄りたくてね。アール君、ノルジュ君、ミリーちゃん、お早うー」

「お早うございます、ハルナお姉さん」

「お早うございます」

「おねえちゃん、おはよー」


 挨拶が済んだところでダリタ君が口を開く。


「ハルナねーちゃん、市場に行くなら案内するぜ?」

「そう言えばお願いする約束だっけ。お願いしたいとこなんだけど……セニア先生、構いませんか?」

「そうですね……少しの間だけでしたら大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。じゃダリタ君、案内よろしくね」

「おう、まかせとけ」

「ではわたしも出掛ける準備をしてきますね、すぐ戻りますのでお待ち下さい」


 セニア先生はそう言って玄関から中へと入っていった。


「ハルナねーちゃん、市場でなに買うんだ?」

「手や体を洗う時につける薬液があるかなーって。あとはちょっと服も見たいかな」

「それだったら雑貨屋と服屋だな。服屋はいまいちわかんねーけど、雑貨屋ならいい店知ってるから案内するな」

「うん、よろしくね」


 そう言えばこの子達は出掛ける準備とかしなくていいんだろうか?


「ダリタ君達は、出掛ける準備しなくても大丈夫?」

「準備っても特にねーしなぁ……おれはすぐにでも行けるぜ」

「ボクもいつでも行けるよ」

「ぼくも大丈夫です」

「あたしもー」


 てことはセニア先生待ちか。早かったらそろそろ出てくるかな?


「じゃ、セニア先生が来ればすぐ行けるんだね」

「そーだな。ま、もう出てくるだろ?」

「あたし見てこようっか?」

「いいよ、ミリーちゃん。見てこなくても大丈夫。ダリタ君がもうすぐって言ってるからもう少しだけ待ちましょ」

「はーい」


 そんな会話をしてると、がちゃりと玄関の扉の開く音。セニア先生が出てきたようだ。


「ハルナさん、お待たせしました」

『先生、おそーい』


 子供達が合唱する。見事にシンクロしてるなー。

それでは市場に向けて出発しますか。






 市場についた私達は、雑貨屋より服屋の方が近いというダリタ君の言葉に従いそっちから寄ることにする。


 聞いた話によると服屋にも種類があり、スーツやドレスが欲しいとかになるとそれ専門の店に行かないといけないらしい。作り置きとかはせず、完全なオーダーメイドで作るんだとか。


 私が欲しいのはそんな一品物ではなく、普段着の替えなので今回行くのは誰でも着れるようなフリーサイズの服をある程度揃えておき、気に入った商品を選んで買うという方式を取ってる店だ。


「ハルナねーちゃん、こっちこっち」

「ここっか、ありがとう」


 案内された服屋に入ると店員さんが出迎えてくれた。


「いらっしゃいませー、どのような品をお探しですか」

「今の私が着てるような服で、替えが欲しくなりまして」


 ちなみに私の今の格好は、白のブラウスに紺のジーンズ、少しヒールのついた黒いサンダルである。これは私が死んだ時の服装そのままだ。

いつもならこれに死神印の黒いローブを着るのだが、今日はローブを着ていない。


「それでしたらあちらの方ですね、ごゆっくりどうぞ」


 店の奥へと移動しつつ、並ぶ商品を眺めながら買うべき物を考える。


 とりあえず、替えの上着2~3着とズボンの替えも1つ2つ欲しいよねー。

あとは下着類だけど……ここで売ってるのかな。


 似たような色違いのブラウスを見つけたのでそれを2、3候補に入れておく。

他にも服はあるのだがどれも似たり寄ったりでいまいちピンとこなかった。


 次にズボンを見て回る。別にスカートでもいいのだがしばらくは動き回る事が多そうなのでここは動きやすいズボンにしておく。


 ふと店内を見回すと、子供達が座り込んだり足をぶらぶらさせたりと退屈そうにしているのが目に入った。


 あー……退屈させちゃったか。じっくり見るのはまた今度にして、今日は替えの服を買うだけにしときますか。


 候補に入れてたブラウス3着とズボン2着を持って店員さんに声を掛ける。


「すみません、これだけ頂けますか」

「はーい」


 持っていった商品を見て少々驚いた顔をする店員さん。どーしたんだろ?


「これ全部買われるんですか?」

「そうですけど……」


 このぐらい必要だよね?


「失礼しました。全部で銀貨7枚と半銀貨2枚になります」


 えーと、換算して72,000円……って、高っ!?

なにそれこの世界の服ってそんなにするの!?


「すごいですねハルナさん、そんなに一度に買うんですか?」


 セニア先生が声を掛けてくる。驚いてないところを見るとこの値段で普通らしい。


「あははは……」


 嘘でしょー……。

でも服が必要なのは変わりがないし買わないって選択肢はないんだよねー。とほほ。


 うぅ、セルデスさんから預かってたお小遣いがほとんど吹っ飛んでしまった。

あとで理由を話して魔石の代金から引いてもらおうっと……。


 少々顔が引きつりつつも子供達に声を掛ける。


「みんな、お待たせー」

「ハルナねーちゃん、終わったのか?」

「今さっきね。次雑貨屋さんまでお願い出来るかな?」

「りょーかい、こっちだぜ」


 雑貨屋さんでは値段に気をつけよう、と思いつつ店を後にする私だった。


補足:服の値段ですが、安さがウリの量販店(ユ○クロ等)で服を購入したら上下セットで1着辺り3万円しました、って感覚でお読み下さい。


服の値段ってピンキリすぎる……。

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