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10 御使い様

2014/03/30 ふりがな表記をカタカナに修正

 魔石についてはこれでいいとして、あとは……やっぱエクソシストという言葉が気になるかなぁ。


「セルデスさん、もう少しだけ聞きたい事があるんですけど」

「む、何かな?」

「えーと……。さっきチラッと出てきたエクソシストについてなんですけど。エクソシストってそんなに珍しいんですか?」

「ふむ……。エクソシスト自体はそう珍しいものではない、治癒魔法の使い手並に貴重ではあるがね」


 あれ? じゃなんで驚いたんだろ。


「ただこれは下級のゴーストを追い払う事が出来る程度でもエクソシストを名乗る事が出来るからだ。デーモンや中級以上のゴーストに対抗できる宝石持ちと言われるエクソシストとなると話はまた違ってくる」

「そう言えば今回のゴーストは中級とか言ってましたっけ」

「ああ。宝石持ちのエクソシストとなると正確な人数は知らないが、ほんの一握りと言われているな」


 うわ、一気に貴重な存在に。でも宝石って……?


「その宝石持ちって言うのは……?」

「エクソシストの力の強さによって宝石名を階位として与えられるらしい。一般的には宝石持ちかそうでないかぐらいの認識だな。その辺りの詳しい話は教会や神殿で聞いた方がいいだろう」


 頭に『ルビー』とか『エメラルド』とか『ダイヤモンド』とか付くんだろーか。

例えば『ルビー』のハルナとか……うわぁヤメテそれハズカシすぎる。


 密かに悶絶しかかったがなんとか話を続ける。


「えー……じゃあ、その宝石持ちのエクソシストになるってのは相当難しいんですね」

「ああ、まずなろうと思ってなれるものでもないからね。何より『御使い様』に認めていただくのが難しいと聞いている」


 また知らない単語が出てきたよ。


「御使い様、ですか?」

「御使い様とは、生命と秩序を司ると言われる神、ネテシアス様からの使いと言われている存在の事だ」


 神様の使いだから御使い様、っか。ナルホド。


「御使い様は、黒い衣を纏い、背の丈ほどもある大鎌を持ち死者の元へと現れ神の元へと導く存在だと言われている。大昔には実際に姿を見たことがある人も居るらしいな」


 ぶ───────────っ!?


「その御使い様に認めていただいた上、その力を借りてゴーストやデーモンと対峙する者が宝石持ちのエクソシストと言われているな」


 ちょ、ちょっと待った待った待った。


「す、すいませんセルデスさん、ちょっとだけ考えをまとめる時間を下さいっ」

「ん、ああ、一度に話しすぎたな。一旦休憩を入れるとするか」


 チリンチリンとベルを鳴らして人を呼ぶセルデスさんを横に頭を回転させる。


 さっきの御使い様の話ってどー考えても死神の事だよね……。

てことは何? ここだと私、宝石持ちエクソシストから御使い様にパワーアップ?


 いやそれはどーでもよくて。私の存在がバレるとますますヤバイ事態になった気がする。

信じてもらう気も証明する気もないけど、実体ある神様の使いで不治の病を治癒しましたなんて祭り上げられる要素満載だわ……。


 今までお気楽に(?)死神してきたのに、生きた御使い様なんていう神経削りまくりそうな役なんて冗談じゃない。


 誰にも言えそうにない事がまた増えたなぁ……。セルデスさんにも言えないやこりゃ。

この人なら大鎌見せるだけで素直に信じて突然ひれ伏しそうだし。いや本気で。


 病気治した件が元でお世話になってるってだけでも心苦しいってのに、これ以上居心地悪くしてたまるかっての。


 あと気になるのが、さっきの話。宝石持ちになるには御使い様に「認めていただく」と言ってたはず。どこかは知らないけどその「認めていただく」場に行けばこの世界の死神と会えるかもしれない。


 エクソシストを目指して頑張ってみるかなー。幸い素質(?)はバッチリのはずだし、さっきの金額を聞く限り魔石ってのを手に入れれれば収入面も問題はないはず。

あとはこの世界のお仲間に会えるかもしれないってのもあるし。


「考えはまとまったかね?」


 ふと気付けばセルデスさんが新しいお茶を入れてくれていた。


「すみません、少し考え事に夢中になってました。その『御使い様』にちょっと心当たりがありましたので」

「君も宝石持ちと同等の力を持っているようだからな。呼び方は違うかもしれないが、同じ存在に力を借りているのだ。思い当たる節もあるだろう」


 借りるってかその御使い様本人です……。


「セルデスさん、ここで私がエクソシストを目指すとしたらどうしたらいいですか?」

「目指すもなにも、君は立派な宝石持ちのエクソシストだろう?」


 う、言い方が悪かったか。


「能力的にはそうかもしれませんが、しっかりとした形にしときたいと思いまして。エクソシストとして仕事しようにも信用とかあるでしょうし」

「ふむ、そういう事か。本来であれば教会や神殿で基礎の修行を積んでから実践を繰り返したのち、誰かの推薦や紹介を経て王都に行き、そこにある大神殿で御使い様に認めていただく儀式を行うのだが……」


 うわ、一から目指すならなかなかに面倒だなー。

それにしても認めていただく場って王都なのか。遠いのかな?


「君の場合だと全て終わってしまっているからね、最後の御使い様に認めていただく部分だけで問題なかろう。紹介状も私の方から付けるとしよう」

「分かりました、ありがとうございます」

「ただ一度、教会か神殿へ出向いて、王都での儀式について詳しく聞いておくのがいいだろう。どのぐらいの頻度で儀式が行われるかも分からないわけだしな」


 それもそーか。年に1回だとしたら最悪1年待ちぼうけになるわけだし。


「あー、それもそうですね。明日にでも聞いてみる事にします。この辺りにある教会か神殿ってどこになりますか?」

「すぐ近く、と言うわけではないがルーブジュ孤児院に行ってみてはどうだろう。あそこは確か教会と孤児院を兼ねていたと思うが。それに、顔見知りの方が話も聞き易かろう」


 あー、確かに十字のシンボルを見た気がする。


「そうですね……分かりました、明日孤児院を訪ねてみる事にします」

「ああ、詳しい日程が分かったら私にも知らせてほしい」

「はい、その時はよろしくお願いします」


 そう言って私はセルデスさんの執務室をあとにした。






 部屋に戻った私は今後の予定について考えていた。


 なんか勢いでエクソシストを目指す事になったなぁ。

まぁ、あの程度の浮遊霊を相手にするだけならなんとでもなる気はするんだよね。魔法も見掛け倒しだったし。

ある意味手馴れた仕事ではあるから、経験があるってのは心強いや。


 それにしても世の中何が役に立つか分かんないもんだなー。


 とりあえず明日になったらまずは孤児院に行って、セニア先生が居れば誰か儀式について知ってる人を紹介してもらう、ってとこかな。


 聞きたい事は儀式の日程とその参加資格。あとは都度気になったことぐらいかな?


 あとは……孤児院の方に顔出してみるかなー。アール君は元気になったんだっけ。

そう言えばダリタ君達が町を案内してくれるって言ってたから、服飾店がないか聞いてみよう。今の服を洗濯するにも替えがないというのは非常に困る。


 あー、思い出した。治療方法について院長先生から聞かれてたんだ。

なんて答えようか。魂に直接手を突っ込んで原因を消しましたなんて言えるモンじゃない。

なぜそんなことが出来るのかって聞かれたら困る。


 いっそエクソシストの能力を応用したって事にしようかなー。御使い様の力を借りて内部から患部を直接治すやり方です、って。


 これならあながち間違ってるとも言えないハズ……誰にでもマネ出来るってワケじゃないから言い渋る理由にもなるし。


 苦しい言い訳だなー。

でも御使い様ですなんて明かす気にはなれないし、苦しくても何かしら別の納得できる理由が必要になるんだよね……。


 ここまで考え、はふ、と一息ついたところでノックの音。


「ハルナ様、夕食の準備が整いましたので食堂まで案内させて頂きます」


 ん、もうこんな時間っか。


「はい、今行きますー」


 返事をした私はグリックさんの案内の元、食堂へ向かった。






 夕食後、私はあるお願いをするためにセルデスさんの元を訪れていた。


「すみません、セルデスさん。ちょっとお願いしたいことがありまして」

「君がお願いとは珍しいね、なにかな?」

「ここ、お風呂ってありますか?」


 そう、お風呂である。実体を持って2日目、そろそろ体と髪の毛を洗いたいのだ。

ついでに洗濯もしたいんだけど……服がまだこれしかないんだよね。


「お風呂……とはなんのことだ?」


 う、言葉が通じず。


「えーと……温かいお湯で体を洗う場所の事です」

「ああ、湯浴み場の事か。迂闊だったな、すぐに案内させよう」

「ありがとうございます」


 やった、久々のお風呂ー。


「グリー、ターニスを呼んでハルナ君を湯浴み場まで案内して差し上げなさい」

「かしこまりました」


 そういって部屋から出て行くグリックさん。


「ターニスさん、って?」

「ここで働いている使用人の1人だ。湯浴み場へ行くのなら、男性より女性をつける方がよかろう」


 それもそーだ。


「セルデス様、ターニスを呼んでまいりました」


 グリックさん早っ! まだ1分も経ってないよね!?

そして静かに扉から入ってくる長い金髪を持ったエプロンドレスの女性。


「お待たせしました、ハルナ様。これより私ターニスが湯浴み場まで案内させて頂きます」


 毎度思うがあんたらどこに控えてるんだ……?


「はい、お願いします」

「ではこちらに。セルデス様、失礼致します」


 ターニスさんに案内されて歩く事約3分、1つの扉の前まで案内された。

そーいえば私手ぶらだわ。なにか必要なものあるのかな。


「ターニスさん、私準備も何もしてませんけど大丈夫ですか?」

「はい、問題ありません」


 そう言って近くの壁に手を置き、なにやらごそごそと弄るターニスさん。

そうすると壁の一部がパカリと開き、その中から大き目の桶のようなものを取り出した。


 荷物を取り出しパタンと閉めるとパッと見継ぎ目とかは全然分からない。


 忍者屋敷かここは……?


「これをお使い下さい」


 そう言って渡されたのは中ぐらいの桶と小さな桶が3つ、あとは小さな布と大きな布が数枚ずつ。それからピンポン玉ぐらいの大きさの白いボールが2つ。


 どう使うんだろう、と思っているとターニスさんが説明を始めた。


「扉を開けてすぐが脱衣所、その奥の扉が湯浴み場へと通じてます。湯浴み場の奥にお湯を張った大きなサイズの桶がありますので、そのお湯をこちらの桶へと汲み上げてお使い下さい。

 この玉はお湯に溶かしますと体を洗うための薬液となりますので、こちらの小さな桶にお湯を汲みその中へ直接入れて溶かしてお使い下さい。

 こちらの玉は同じ様にお湯に溶かして使いますが、香草を少々混ぜております、髪の毛を洗うのに使用されるのがよろしいでしょう。

 こちらの布は小さいのを1つ体を洗うのに、残りの布は湯浴み後体を拭くのにお使い下さい。

 使い終わった桶と布は脱衣所に置いたままで結構です、あとで私共が片付けますので。

 それでは、ゆっくりとお寛ぎ下さい」


 長い説明を聞き、とりあえず入ってみるかと桶セットを受け取り脱衣所へ。


 ぱぱっと服を脱ぎ湯浴み場へと足を踏み入れる。中は石造りで出来ていて水はけはよさそうだ。奥に直径1mぐらいのサイズの桶があり、お湯がなみなみと入っているが深さはそれほどでもないので桶の中に直接入れそうではない。


 お湯を汲み上げて体を拭くだけかー。


 残念に思いつつもお湯を汲み上げ、ピンポン玉を溶かして作った薬液を使い体を洗う。


 いいなーこれ、お手軽ボディソープみたい。


 体を洗い終わったら次は髪の毛だ。中ぐらいの桶にお湯を汲み上げ髪の毛をつける。

そしてあらかじめ作っておいた髪の毛用といわれた薬液をつけて丁寧に洗う。

ふわっと立ちのぼる匂いもいい感じ。


 こっちもいいなー。こーゆーのって市場で売ってるのかな。


 明日市場を覗いてみようと密かに決心しつつ薬液を洗い流す。


 一通りお湯を掛け流したあと、髪の毛の水分を取りつつ脱衣所へと戻り体を拭いて衣服を身につける。あー、替えの服が欲しいなー。


 でもこのさっぱりした感覚は久々だし、セルデスさんに感謝、っと。

あとは湯船があったら最高なんだけどなー。なんか考えてみるかな?


 脱衣所の外で待機していたターニスさんにもお礼を言い、部屋まで案内してもらう。

そろそろ道を覚えたいです……。


 それでは、明日に備えて休みますか。


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