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儀式の真実

王太后からいきなり言われて侍女はドキッとしましたが、

「王太后さま、何をおっしゃっているのか分かりかねます。」


「隠さずともよい。私は陛下の母ゆえ、あの子の様子を見れば分かります。女官長にはそなたから聞いたとは申さぬゆえ、教えてもらえぬか?」

王太后は微笑みながら侍女に尋ねます。


侍女は困惑しながらも、国王陛下にプライバシーにかかわることなので、

「王太后さま、申し訳ございません。恐れながら、そのようなことはお答えいたしかねます。」


王太后はしぶとい侍女だなと思いながら、強い口調で、

「そなたは何か思い違いをしておらぬか?王妃不在のいま、この後宮のあるじはこの私です。この後宮で起こったことを把握しておかねばならぬのです。さあ、申してみよ。今すぐに。」


侍女はもう仕方ないと思い、

「恐れながらお答え申しあげます。私も詳しくは存じ上げませんが、寝室にお印が残されておりませんでしたので、恐らくは何もなかったのではと思われます。」


王太后はやっぱりそうだったか。シャルロッテが俯いていたのはこのせいかと思い、

「そうでしたか。ありがとう。よく話してくれましたね。もう下がるがよい。」


「かしこまりました。失礼いたします。」

侍女はそう言うと下がっていきました。





それから何週間かたった頃、シャルロッテが王太后とのお茶会から戻る途中、オリガとすれ違いました。


いいところで出逢ったとオリガは思い、

「ごぎげんよう、シャルロッテさま。お散歩でございますか?」


「ごぎげんよう、オリガさま。いいえ、王太后さまのお茶会からの帰りですの。」

王太后の招待を受けているのは私だけよと言わんばかりに自慢そうにシャルロッテは答えました。


オリガはやっぱりねと思いながら、

「まあ、それは羨ましいこと。私などには声もかかりませんわ。」


「まあ、そうでしたの?では、私から王太后さまにオリガさまを招待して下さるようお頼み致しましょうか?」

いかにも気の毒そうにシャルロッテが話しかけます。


「あら、とんでもない。そんなつもりで申しあげたわけではございませんわ。どうぞお気遣いなく、シャルロッテさま。」


「ご遠慮なさらないで。王太后さまは私から申しあげればきっとご招待して下さいますわ。」

微笑みながらシャルロッテは自慢そうに言います。


「まあ、それはそれはさすがはシャルロッテさま。儀式をつとめられ方は違いますわね。いずれは王妃さまになられるのかしら?」


シャルロッテそれを聞いて満足そうに

「まあ、そんな恐れ多いことを。お決めになるのは陛下でいらっしゃいます。」


「そんなご謙遜を。ところで陛下にはあれからお会いになりまして?」


「いいえ。陛下はお忙しくていらっしゃいますから。」


「そうでしたか。では、私はこれにて失礼いたします」


「オリガさま、お茶会のこと、いつでも王太后さまに申しあげますから遠慮なさらないで下さいませね。失礼いたします。」


オリガはシャルロッテを見送った後、

「ふふ、いい気なものね。陛下がいまどこにいるのか知りもしないで…。」

とニヤリと笑ってつぶやき、やがて自室へと戻って行きました。

これから楽しくなりそうです。次は陛下の登場です。たぶん…

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