オリガの訪れ
「ナターリアさま、突然訪れたのにこうして迎えて下さってありがとうございます。」
オリガが遠慮がちにナターリアに話しかけます。
「とんでもございません。オリガさまをお迎え出来て嬉しく思います。」
戸惑いがちにナターリアが答えます。
「おやさしい方ね、ナターリアさまは。突然で申し訳なかったのだけれど、ナターリアさまと仲良くしたいと思って参りましたの。ご存知かしら、昨日の儀式の噂を?」
「噂でございますか?いえ、私は何も存じませんわ。」
訝し気にナターリアが答えます。
「実は陛下は別の方をとお考えでしたのに、王太后さまに泣きつかれてシャルロッテさまになさったという話しですよ。」
「まぁ、そのようなことが…。」
興味なさげにナターリアが答えます。
「あまり興味がおありがならないのですね。私、もしやそのお方はナターリアさまではないかと思っておりましたのに…。」
ナターリアはちょっと驚いて、
「まさか、そのようなことがあるはずがありませんわ。」
「あら、ご病気の父君のいらっしゃるナターリアさまを後宮に召し出されたのですからそれなりの理由があると思いましたのに。私の思い違いかしら?」
「私には分かりませんわ、オリガさま」
困ったようにナターリアが答えます。
「まあ、そのうち分かるでしょうけど。ねぇ、ナターリアさま、こうして時々はお茶でもいたしません?きっと私たち、よいお友達になれると思いますのよ。」
「ええ、それは喜んで…」
戸惑ったようにナターリアが答えます。
「戸惑ってらっしゃいますね。率直に申しますと、王妃になられるのはおそらく大臣の息女で王太后の後押しもあるシャルロッテさまでしょう?それに比べて私は王女を母に持つとはいえ伯爵令嬢、ナターリアさまだって公爵令嬢とはいえ父君はご病気でいらっしゃっいますからお互い後宮においての立場は弱いですわ。だから、この後宮で生きていくために仲良くいたしません?いがみ合うよりはその方がいいと思いますのよ。」
ナターリアは後宮に入ったものの、ここで生きていくことをあまり実感出来ていませんでした。
なので、オリガの言うことに感心して、
「オリガさまは、率直な方でいらっしゃるのですね。あの、後宮はそうして生きていくものなのですか…?」
オリガはそれを聞いてクスクスと笑い出し、
「ごめんなさい、笑ったりして…。ナターリアさまがあんまりのんびり構えていらっしゃるものだから。そうですわよ。それから噂も気にしなくては、ナターリアさまが不利な立場になることだってあるのですから。」
ナターリアはさらに感心して、
「そういうものなんですね。いろいろありがとうございます。私、オリガさまが率直におっしゃっていただいたので申しますが、お父さまが病気になり、急に後宮に入ることになってしまって少し戸惑っておりますの。」
オリガは紅茶を一口飲んで、ふぅーとため息をついて、
「そのようですわね。分かりましたわ。私と仲良くなさりたいお気持ちになられたら、いつでもお越し下さいな。私ね、シャルロッテさまよりナターリアさまの方が仲良くなれそうな気がしますの。」
「まぁ、シャルロッテさまよりだなんて…。私、そんなたいした人間ではありませんし。」
「ご謙遜を、ナターリアさま。母君に似てお綺麗ですわよ。では、私はこれで失礼します。私のところに来て下さることを願っておりますわ。」
そう言うとオリガは立ち上がりました。
「はい。必ずお訪ねしますわ、オリガさま」
ナターリアは笑ってオリガを見送りました。
その頃、王太后さま はシャルロッテが帰ったあと、儀式を担当した侍女を呼びつけておりました。
「お呼びでございますか、王太后さま。」
「わざわざすまぬな。昨日の儀式のことが気になりましてね。少し尋ねたいのです。」
侍女は少し身を堅くして、
「はい。どのようなことでございましょうか?」
「昨日、何もなかったのであろう?」
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