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オルティス公爵の提案

大変お待たせしました。続きをどうぞ。

コンコン…

「失礼いたします、陛下。宰相、お呼びにより参りました。」

宰相が内密の用件だとアレクセイの私室に呼ばれて、部屋に入ると国王アレクセイとオルティス公爵が待っていました。



「宰相か、よく来た。こちらに参れ。」

アレクセイが声をかけて、近くの席にに座らせました。


意外な人物にいたので、宰相は少し驚きましたが、会釈をして席に座りました。

「オルティス公爵どのもおいでとは、いかなるご用件でございましょうか、陛下?」

怪訝そうに宰相かアレクセイに尋ねます。



「宰相、それは分かっているだろう?大臣のことだ。」

アレクセイはさも当然のように宰相に言います。



「陛下…!オルティス公爵どのに話されたのですか!」

宰相は気まずそうにアレクセイに確認します。



「心配はいらない、宰相。オルティス公爵は力になってくれるそうだ。それによく考えたのだが、このままでは埒があかない。何か対策を考える必要があると思うのだが、宰相はどう思う?」



宰相は痛いところをつかれて、うっとなり、

「そ、それは確かにそうですが…。陛下がそう仰せならしかたありませんね。」

仕方なさそうに手にしていた書類を広げて説明をし始めました。



「私が調べましたところによりますと、大臣には横領の罪。それにおそらくナターリアさまに関係することだと思われますが、王女さまの側近として隣国にいるカールと申す者の弟に無実の罪を着せて、大臣の裁量により微罪にしているようにございます。」

宰相が苦々しげに説明します。



「なぜ、大臣さまはそのようなことを…?」

オルティス公爵はわけが分からないといった表情で宰相に尋ねます。



「それは私も知りたいところにございます、オルティス公爵どの。」



「しかし、陛下。ここまで分かっていながら、なぜ大臣さまをそのままにしておかれるのですか?国法に照らして、罪を問わなくては…。」

オルティス公爵は当たり前のようにアレクセイに疑問をぶつけます。



「それは、大臣の息女の婚約者が隣国の王族であるからだ。」

一番の難点をアレクセイは答えます。



「そのことは聞いたことがございます。確か王太后さまのお取り計らいでございましたな?」

オルティス公爵はちらっと宰相を方を覗き見て言います。



嫌みか…。


中立派であるオルティス公爵とは、話しをしても無駄だと思い、政務のことであまり話すことのない宰相でしたが、言われても仕方のないことでも憎らしく感じました。



「……。」


「……。」



しばらくの沈黙のあと、オルティス公爵がおもむろに口を開きました。

「…恐れながら、陛下。まだ婚約の段階でございます。結婚したわけでもないのですから、婚約を解消なさればよろしいではありませんか?」



「簡単に言ってくれるな…。」

アレクセイは頬をピクピクさせて、苦しそうに答えます。



「オルティス公爵…!政務から離れておられる公爵にはお分かりにはならないかも知れませんが、理由もなく王族との婚約解消など出来ることではありません。」

忌ま忌ましそうに宰相が言います。



「確かに…。ですが、このたびは理由がございます。罪人の娘と隣国の王族を結婚させるようなことがあってはそれこそ国際問題になりますぞ。」

オルティス公爵は冷静に言います。



「それは言われなくとも分かっております!しかし、先だってのハリス伯爵の事件に引き続き、この状況を明らかにせよと申されるのか!」

宰相はイライラとしながら言い募ります。



「くっ…、宰相さま。落ち着かれませ。そのようなことは申してはおりません。」

涼しい顔でオルティス公爵が答えます。



「…というと、オルティス公爵はこの件について考えがあると?」

アレクセイは訝し気な表情で尋ねます。



「はっ。考えというほどではございませんが、申し上げてもよろしいでしょうか?」

ちらっと宰相の方を見ながら、オルティス公爵が答えます。



「よい。申してみよ。」



オルティス公爵はふっと考え込むような表情でしたが、

「恐れ入ります、陛下。私が考えますところ、大臣さまの処遇についてですがここは通常の方法ではなくいっそ引退させてはいかがでしょうか?」



「引退…?」


「……。」


思わずアレクセイと宰相は顔を見合わせました。



「…オルティス公爵、それはどういうことだ?」

アレクセイは眉をひそめて尋ねます。


もちろん大臣のことをよく思ってるわけではありませんが、母や宰相のように大臣を特別扱いしたくないのです。

だからこのようなことになったのに、なぜ…!



「恐れながら大臣さまは、ハリス伯爵のときとは違い、死罪なるような罪を犯したわけではありません。些か問題ではありますが、大臣さまを引退させ、公爵家は親戚筋から適当な者を継がせるのがよろしいのではありませんか?」


それはいわゆる政治的配慮というものです。

しかし、そのおかげで現在このような事態になっていると思っているアレクセイには到底受け入れられるものではありませんでした。



「それはなかなかの案ですね。しかし、隣国の王族とのことはいかがなされるおつもりですか?」

宰相が興味深そうにオルティス公爵に尋ねます。



「宰相さま、それは陛下次第かと存じます。」

オルティス公爵はちらっとアレクセイの方を見つめます。



「…僕、次第とは?」アレクセイは嫌そうに答えます。



「恐れながら陛下、このご婚約のことを解消してほしいと隣国に申し出ては下さいませんでしょうか。」

オルティス公爵は平伏しながら言い募ります。



「何、僕がか…?」



「左様でございます。陛下がみずから申し出るのでございます。何らかの交換条件が必要やも知れませんが、それしか解決の道はございません。それから、男爵家にも何らかの配慮が必要かと思われます。」

オルティス公爵は窺うようにアレクセイに言います。



「それは、なかなかの案です。さすがはオルティス公爵ですな。早速、隣国へ行く準備を進めましょう。」宰相は希望が見えてきたと言わんばかりに、この案を進めていきます。



オルティス公爵も満足そうに頷いて、

「宰相さまに褒めていただけるとは光栄でございます。」



「……。」



「それでは陛下、この案で進めて参りますので、日程調整いたします。近く隣国に…」

宰相が実務的に話しを進めようとアレクセイに話しかけました。



「ちょっと待て!僕はその案は承知していないぞ。」

アレクセイは不機嫌そうに言い放ちます。


お読みいただきまして、ありがとうございます。

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