儀式の翌日
儀式の翌日のお話です。
添臥の儀式の翌日、王太后のもとにシャルロッテが挨拶に訪れていました。
「王太后さまにはご機嫌麗しくおめでとうございます。昨日、無事に儀式を終えましたことをご報告申し上げます。」
「ごぎげんよう、側妃どの。無事のごおつとめ、ご苦労でありました。」
「恐れ入ります。すべては王太后さまのお導きにございます。」
「さ、シャルロッテどの、儀式はこれで終わりです。こちらへおいでなさい。」
王太后はそう言うと侍女にお茶を用意をさせました。
「ありがとうございます、王太后さま。」
シャルロッテは礼を言うと、用意された席につきました。
「今日はよい天気ですね。儀式が終わり、疲れてはいませんか?」
王太后はシャルロッテにやさしく話しかけます。
「いいえ、疲れたなどということはございません、王太后さま。大役を終えて、少しぼんやりしておりますが。」
俯いてシャルロッテが答えます。
王太后はちょっと笑って、
「それは疲れたということですよ。陛下はやさしくして下さいましたか?」
「はい。とてもおやさしい方でございました。」
俯いたまま恥ずかしそうにシャルロッテが答えます。
「そうですか。陛下とよき夜を過ごされましたか?」
「はい…」
「それはなによりです。シャルロッテどの、もう側妃となられたゆえ申しますが、ここ後宮は公爵家とは違いますゆえ、しきたりも多く、勝手な振る舞いは許されませぬ。嫌なこともあろうが、陛下と仲睦まじく過ごされますように。」
それを聞いたシャルロッテは少し驚いて、初めて顔を上げて、王太后に抗議しました。
「えっ…!でも、王太后さまは我が家のつもりでおいでなさいとおっしゃったではありませんか?」
「つもりでと申したでしょう。女は嫁いだ先が我が家になるのですからね。公爵夫人は何もあなたに伝えなかったのですか?」
「いえ、お母さまは何も…。」
「後宮に入る娘に何も伝えぬとは…。まあ、これから私が教えましょう。」
仕方なさそうに王太后が言います。
シャルロッテは少し不満そうに、
「はい、よろしくお願いします。」
王太后は少し微笑んで、
「そう心配することはない。何かあったら私に申しなさい。私にできることはしましょう。いいですね?」
「はい。王太后さま、頼りにいたします。」
シャルロッテは少し警戒しながらも、安心したように言います。
「あなたには私がついてますからね。さあ、お茶がさめてしまうわ。これは隣国から取り寄せた美味しいお茶なのよ。」
と言ってお茶を勧めます。
「美味しい…。とても馨しい香りがしますわ、王太后さま」
「喜んでもらってうれしいわ。時々、お茶をいたしましょうね?」
「はい、楽しみにしております。」
シャルロッテはそつなく答えます。
その頃、ナターリアのもとに同じく側妃となったオリガが訪れていました。
「まあ、オリガさま。ようこそおいでくださいました。」
ナターリアは戸惑いながらオリガを迎えました。
「連絡もなく来てしまって申し訳ございません、ナターリアさま。」
申し訳なさそうにオリガが話しかけます。
「いいえ、そのようなことは…。でも、おっしゃっていただければお伺いしましたのに。」
「そうおっしゃっると思って参りましたのよ。これはお近づきのしるしに…」
そう言うとオリガは侍女に持たせていた菓子折を手渡しました。
「まあ、恐れ入ります。アリス、すぐにお茶の用意を…」
ここからワクワクの展開が…。陛下もいないのに。