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シャルロッテの心境

続いての更新です。

すっかり立場の変わった二人の様子をごらん下さい。

パタン…。


「陛下…。」

王太后の居室を出ると女官長が心配そうに待っていました。



「女官長か…。待たせたな。すぐ謁見の間に戻るぞ。」

アレクセイはそう言うと、歩き始めました。



「お待ち下さいませ、陛下。先程、公爵方はお帰りになられたとのことでございます。」

女官長がそう言いながら、慌てて後を追います。



「何、すでにか?馬車はどうしたのだ?」



「それが皆様方はご自分の馬車でお帰りになられたとのことでございます。侍従より陛下にくれぐれもよろしくお伝え下さいとの伝言を承っております。」



「そうか、レオンが相手では侍従も帰すしかないだろうな。それにしても、王宮の馬車で帰ればよいものを…。」

苦笑いしながらアレクセイが答えます。



「さあ、それは分かりかねます。おそらくはオルティス公爵さまのお考えかと存じます。思慮深い方であられますから。」

にこやかに女官長が答えます。



「そうだな…。それなら、執務室に行くか。侍従も待っているであろう。」



「はい。それより陛下、王太后さまのご様子はいかがでございましたか?」

心配そうに女官長が尋ねます。



「ああ、大変なことが分かった…。執務室で話す。」



「は、はい。陛下。」









ナターリアが王宮を出て一月余り経ちました。


ここ後宮は、今までとは考えられないくらい閑散としておりました。


それと言うのも三人いた側妃のうち、後宮に残っているのはシャルロッテただ一人。


そのシャルロッテに対しても、あの夜会の一件以来、ご機嫌伺いをする貴族たちもまばらになりました。


たくさんいる貴族の前で大臣がすすめたワインを飲んだときにナターリアが倒れたのです。

懐妊したためとは分かった後でも、疑いはぬぐいきれません。


それに何より、肝心の国王陛下が後宮を訪れないのです。


閑散とするのも無理はありません。




「シャルロッテさま、ご機嫌はいかがでございますか。」

大臣がいつものように娘のご機嫌伺いに訪ねてきました。



「機嫌がいいようにみえて、お父さま?」

シャルロッテが不機嫌そうに答えます。



「シャルロッテさま、いかがなされたのですか?ああ、もしや夜会でのことでしたらご心配は無用でございますよ。父は何もしておりませんし、人の噂など無責任なものにてすぐ消えましょう。」

笑みを浮かべながら大臣が言います。



「ふふふ…。厚顔無知とはお父さまのことね。」

父親に従順だったシャルロッテにしては珍しく、大臣に嫌みを言います。



「これは本当にどうなされたのですか、シャルロッテさま?ナターリアさまもおいでになりませんし、陛下のご寵愛の邪魔するものは何もありませんでしょうに。」



「お父さまは分からない方ですね…。陛下がこちらにおいでになっていたのは、すべてナターリアさまの為だったのですよ!」

イライラとしてシャルロッテが叫びます。


「な、何を言われるのですか…!」

大臣は従順だった娘に叫ばれて動揺してしまいました。



「お父さまがナターリアさまを追い出したのでございましょう?こんな結果になってご満足でしょう。」

涙目でシャルロッテは父を睨みつけます。



「も、もし…、陛下がおいでにならないのでしたら王太后さまにお頼みになられてはいかがでございますか?よろしければ、この父が頼んで参りましょう。」



「おやめ下さい、お父さま。王太后さまに頼んでもムダでございますよ。ナターリアさまのお立場を考えてこちらにおいでになっていた陛下ですもの、こちらにおいで下さるはずがありませんわ。これ以上、私を惨めにしないで下さいませ!」

シャルロッテはそう言うと泣き崩れてしまいました。



「シャルロッテさま、父が悪かった。父を許してくれ。ただ、そなたためを思ってしたことだ。」

大臣はさすがにかわいい娘に泣かれては致し方なく、謝罪します。



「私の為?お父さまの為でしょう。私はナターリアさまの為でも来て下さるだけでよかったのに…。いつか、私のことも見て下さればと思っていたのに、お父さまのせいですわ!もう、帰って下さいませ。」

シャルロッテは感情的にそう言うと、大臣を部屋から無理に追い出してしまいました。




娘であるシャルロッテの部屋から無理に追い出された大臣は訳が分からず、すっかり戸惑ってしまいました。


このまま帰るのもどうかと思い、王太后に面会を申し込みました。


以前とは状況が変わってしまった後宮のことを聞きたかったのです。


しかし、なぜか王太后の体調不良を理由に面会を許されませんでした。


今までこんなことはなかったが…。

はて?

どうしたことだ、いったい…。


しかし、体調不良では仕方ないか…。



ならば見舞いに、いや王太后の不興を買っては元も子もないか。


あれほど王太后に尽くしたのだ、裏切られることはあるまい。


お大事にと伝えて、大臣は後宮を後にしました。


王妃の父となるまであともう少し、まさかその夢がなくなるとはこの時の大臣は思いもしませんでした。







さて、そのころナターリアは王宮の混乱を知らず、実家の別荘で幸せに過ごしておりました。



「ナターリアさま、王子さまがお呼びでございます。」



「まあ、アルバートが?どうしたと言うのです。」

ゆったりと席に座って編み物をしていたナターリアが侍女の呼びかけに振り向きました。



「また、おむずかりのご様子にて、母君さまをお呼びとのことでございます。」

少し困った顔をして答えます。



「まあ、こちらに来て、すっかりアルバートは甘えん坊になってしまったようね。行きましょうか、アリス?」

ナターリアはそう言うと、椅子から立ち上がりました。



「はい、ナターリアさま。」

にっこり笑ってアリスが答えます。




ナターリアがここ実家の別荘に来てから、王宮から追い出されたアリスが以前のようにナターリアに仕えておりました。


妹メアリーが姉ナターリアの為に別荘に行かせました。


ナターリアはここに来てから、両親に逢えたのもうれしかったのですがアリスに逢えたのが何よりもうれしかったのです。





びぃ~、びぃ~。

「いやいや…。」


アルバート王子はすっかり泣きじゃくり、乳母がすっかり困り果てておりました。

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