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アレクセイの乱入

お待たせしました。

すみません、あまり進んでません。

宰相も席に座り、ため息をついてから話し始めました。


「陛下、何と申してよいやら分かりかねますが…。このたびのことは、私が知ったのはつい先程にございます。」



「それはどういう…?」

アレクセイは疑わしそうに尋ねます。



「宰相の言っていることは本当のことてすよ、陛下!」

気持ちが少し落ち着いた王太后が悲痛な声で言います。



「母君まで私をごまかすおつもりですか?」



「そんなつもりは…。お兄さま、あの。」

王太后はめずらしく弱気な有様で宰相に助けを求めます。



「陛下、実は王太后さまに頼まれて大臣のことを調査したのですがその報告が上がってきたのがつい先程のことなのです。」

宰相が王太后を安心させるように話します。



「そ、そうなのですか、母君?」

アレクセイが面食らったように尋ねます。



「え、ええ…。実は前ロプーヒナ公爵から手紙をもらって、大臣のことを調べてもらったのです。」



「前公爵が…。しかし、なぜ…?」



「それは分かりかねますが、結果として大臣に不審な点が見つかりました。ゆえにシャルロッテさまを王妃にするわけには参りません。」

宰相が力なく答えます。



「勝手なことを…!母君も叔父君もあれほどシャルロッテどのを王妃に望まれていたではありませんか。」

アレクセイが呆れたように答えます。



「それはこの事実を知らない時のことにございます、陛下。罪を犯した身内のいる者を王妃にしては国の威信に関わります。陛下にもお分かりのはずにございましょう。」

苦々しい表情で宰相が答えます。



「そ、そのようなことを申しているのではない!この事態をいかがなされるおつもりか!?大臣の息女が隣国の王族を婿養子に迎える手筈を整えたのは母君にございましょう?」

アレクセイはイライラして、怒鳴り散らします。



「そ、それは…。私も困っているのです。ああ、あの手紙が届いた時に調べていれば…。」

そう言うと王太后は泣き崩れてしまいました。



アレクセイはこんな母の姿を見たのは、父が亡くなった時以来でしたのですっかり動揺してしまいました。


「母君、僕は責めているわけでは…。」



「陛下、私が悪いのですわ…。前ロプーヒナ公爵まで娘を王妃にしたくてこんなありもしないことを書いて寄越したと、思い込んでしまって…。あの方がそんなことをするはずがないのに。」

王太后はぐずぐずと涙を啜りながら言います。



「母君、これを…。」

アレクセイはそう言うとポケットからハンカチを差し出します。



「ありがとう、アレクセイ。母はただあなたのためを思って…。」

王太后はハンカチを受け取って涙をふきました。





「母君、そう思われていたのになぜお調べになろうと…?」

アレクセイはふと、疑問に思って尋ねます。



「私にも分かりません。ただ、ナターリアどのを見ていると何か違うような気がしてきて、お兄さまに頼んだのです。」



「その結果が分かったのが、少し遅すぎたようで…。しかし、もう少し調査を行う必要があります。」



「宰相いや叔父君、何をのんきなことを…。すぐに大臣を拘束して、調べればすむ話しでしょう!」



「陛下、それはなりません。ハリス伯爵の時とは違い、大臣の息女が隣国の王族との婿養子に内定しているのです。ことは慎重に運びませんと…。」



「それはそうかも知れないが、何を調べる必要があると言うのです、叔父君?」



「フレデリカ男爵の子息の件です、陛下。」



「フレデリカ男爵の?その者がどうしたと…。」



「恐れながら陛下、大臣がその者を罪に陥れたやも知れぬのです。この件について、詳しく調査をしなければなりません。」



「それは分かるが、なぜそれにこだわる?」



それを聞いた宰相は王太后と顔を見合わせました。

「陛下、ご存じないのですか?罪に陥れたフレデリカ男爵の子息の兄は、テオドラ王女さまの側近として隣国に行ったカールですよ。」



「カール…?それはどういうことだ。」



「まだ何とも言えませんが、王太后さまが王女さまの側近に望まれて、その手配を大臣に頼まれました。そのことに関係していると思われます。早急に調べさせますので、しばしお時間をいただきたく存じます。」



王太后は申し訳なさそうな顔をして、

「ごめんなさい、アレクセイ。こんなことになるなんて思わなくて…。」



アレクセイはため息をついて、

「まさか母君は何かテオドラのためだけでなく、他に理由があって?ナターリアに関することですね。」



王太后は、うっとつまりながら、

「あの、アレクセイ、誤解しないでね。最初はナターリアどのに頼んだのよ。でも、断ってきたから大臣に頼んだのよ。」



「ナターリアに?それはなぜです?」



「幼なじみと聞いているし、それにナターリアは王妃になりたくないようでしたから条件を出したのよ。その代わりに王妃にしないようにして上げるからと言って。でも、ナターリアどのは断ってきた…。」



「そ、そうですか…。」

アレクセイは複雑そうな表情で答えます。


ナターリアは王妃になりたくなかった…。

しかし、断ったと言うことは受け入れたのか…。


わからない。

カールはただの幼なじみではないのか。


王女の側近として、隣国に行かせないために王妃に…。





思いつめた表情をしているアレクセイに、ふと気がついたように宰相が話しかけます。


「ところで陛下にはなぜこちらにおいでになったのでございます?」



アレクセイはあっと、思い出したように、

「ああ、そうでした。昨夜の夜会でのことはご存じですね。」



「はい、確かナターリアさまが倒れられたと聞いておりますが。その後、いかがでございますか?」



「そのナターリアのことです。実は懐妊しておりまして、静養のため王宮を出しました。」



「何ですって!王宮を出たと…?私は何も聞いておりませんよ。」

王太后は驚いて叫びました。



「急なことでしたから。ナターリアが望んだことです。表向きは離宮に行ったことになってますが、近くにあるナターリアの実家の別荘に行かせました。」



「な、なんてことを…!このような事態になって、前公爵がナターリアどのを返さないと言ったらどうするつもりです。」

王太后が悲痛な様子で言います。



「そ、そんなことは…。ただ、父君に逢いたいだけですよ。アルバートもいるし、そんなことにはなりませんよ。」

言いながらアレクセイはなんだか不安になりました。


もしかして、帰ってこないのだろうか…。

アルバートも一緒だし。


しかし、母君も誰のせいで王宮を出たと思っているんだ…。




「呑気なことを…。早く使いを出しなさい。すぐに王宮に戻って来るようにと。」



「何を言っているんですか。だいたい、母君も原因の一つでしょう。それにこの問題が解決しない限り、戻りたくないはずですよ。それに、お腹の子に何かあったらどうされるつもりですか?」



「そ、それは、そうかも知れないけど…。」

痛いところをつかれて王太后は黙りこくってしまいました。




「まあ、陛下。そのくらいで。この件については、早急に調べますのでそれまで内密に願います。今後のことはその後に話し合いましょう。」

宰相が怖ず怖ずと提案します。



「仕方ないですね。ではそのように…。」

アレクセイはしぶしぶそう言うと部屋を出て行きました。



読んでいただきましてありがとうございます。


終わりにクライマックスに近づいてきました。


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