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レオンの暴言

お待たせしました。

すみません、あまり進んでません。

パタン…


「しっかし、たぬきじじいそのものだな。よくしゃあしゃあと…。」

大臣が去った後、レオンがおもむろに口を開きました。


「だんなさま、陛下の御前ですよ。」

メアリーが少し笑いを含みながら、レオンをたしなめます。



席に座っていたアレクセイがなんとも言えない表情でため息をつきました。

「はぁ…。大臣はああいう人間だからな。」


「分かっているのなら、何か手を打つべきではありませんか?」

レオンが辛らつな言葉をアレクセイに投げかけました。


アレクセイはうっ、と言葉に詰まりながら、

「分かっているが、今のところ手がないのだ。」そう言うと、思わず顔をしかめました。


「何ということですか。だから、義姉君は王宮を出られたのでしょう。お気の毒に…。」

レオンはアレクセイのいとこであるせいか、遠慮のない言葉をいいます。


その直後、謁見の間の空気が緊張につつまれました。



「…レ、レオンさま、いえロプーヒナ公爵さま!それはあまりに無礼ではありませんか?」

女官長がわなわなと震えながらレオンに注意を促します。


メアリーはさすがに心配そうにレオンの様子を窺いますと、レオンが心配ないからと言うように微笑みました。


レオンは悪びれもせず、

「これは、失礼を致しました。陛下に対して誠に無礼でございました。お許しを願います。」

そう言って神妙そうに平伏しました。



「ロプーヒナ公爵、許すゆえ頭を上げよ。」

アレクセイはレオンの言葉によって傷つきましたが、事実なので、反論するわけにもいきません。

それに、頭を下げて誤っている以上許さないわけにもいきません。それに何より、愛するナターリアの実家の人間でもあります。

処罰したとなれば、ナターリアがどんなに悲しむことでしょう。


まったく、こいつは自由に発言してから…。

処罰しにくいということを分かっているのか。

国王の立場にもなれ…。



「ははっ。寛大なお心に感謝致します。」

レオンは何か含むような笑みを浮かべて頭を上げました。


そばにいたメアリーもホッとしたように、「感謝申し上げます、陛下。」

そうアレクセイにお礼を申し述べました。



「ふふ…。まったくロプーヒナ公爵は怖いもの知らずですな…。」

オルティス公爵が笑ってレオンに話しかけます。


「恐れ入ります。」

アレクセイには、いとこの気安さと義姉のナターリアのあまりの扱いに憤慨していたせいもあり、些か言葉が辛辣でしたが、人望のあるオルティス公爵にかかっては恐縮して、レオンはうつむき加減で答えます。


「さすがのロプーヒナ公爵さまも、オルティス公爵さまには弱いと見えますね。」

女官長はレオンをからかうように言います。


「女官長、ロプーヒナ公爵をあまりからかうものではない。」

アレクセイが少し機嫌をよくしたのか、笑いながら女官長をたしなめます。


「これは、失礼を致しました、陛下。ロプーヒナ公爵さま、申し訳ございません。」

女官長がしまったと言うようにレオンに謝罪しました。



レオンは謝られて、なんとも言えない表情でアレクセイの方を見ます。



「もうよろしいではございませんか?それよりこれからのことを考えませんと…。」

オルティス公爵夫人が遠慮がちに割り込んで入りました。



「そうだな。レオンが余計なことを申すからな。」

アレクセイが自由に生きているいとこのレオンを睨みつけました。


「も、申し訳ございません。」

レオンがしぶしぶ答えました。




「恐れながら陛下、これからどうなさるおつもりでございますか?」

オルティス公爵夫人が遠慮がちにアレクセイに尋ねます。


「どうするとは…?」

アレクセイは少し緊張しながら言いました。



「もちろんナターリアさまのことでございます。たとえシャルロッテさまが王妃になられるとしても第一王子の母君に相応しい待遇にして差し上げなくてはなりません。私どももいままで知らぬこととはいえ、何も出来ずに申し訳なく思っております。」

オルティス公爵夫人が沈痛な表情でアレクセイに訴えます。


「陛下、及ばずながら私に出来ることは協力させていただきますので…。」

続いて慎重なオルティス公爵もアレクセイにたたみかけます。




「あ、ありがとう…。オルティス公爵夫妻、その言葉嬉しく思うぞ。」

アレクセイもいままでナターリアに対して好意的な貴族たちに出逢うことがなかったので、少しとまどってしまいましたが、国王としての偉ぶった返事を返しながらもなんだか嬉しくなって表情がゆるんでしまうのを隠し切れませんでした。



父が早くに亡くなったため、若くして国王に即位してからというもの、アレクセイはいつしか国王の仮面を被るようになっていたのでした。

その仮面が外せるのはナターリアだけだったのですが…。


その年季の入ったアレクセイが表情を隠しきれないとは、よほど嬉しかったのでしょう。



「感謝申し上げます、オルティス公爵さま。陛下が謁見の間であのように喜ばれたのは久しぶりでございます。」

女官長も乳母として育てたアレクセイが喜んでいる姿が嬉しいのか、妃に対して公平であらなければならない立場を忘れて感謝の言葉を伝えます。




「恐れ入ります、陛下。しかし、臣下として当然のことでございますゆえ、礼には及びませぬ。」

オルティス公爵が臣下の礼をしつつ、にこやかに答えます。





「それにしてもおかしいな?あの叔母君が何にも言ってこないなんて…。陛下はどう思われます?」

レオンが不思議そうにアレクセイに尋ねます。



「う~ん、実は僕もそれが謎なんだけど、ね…。そうだ!レオン、母君のところに行って何か聞き出して来てくれ。」

アレクセイはポンといいことを思いついたようにいたずらっぽくレオンに頼みます。



「な、何言ってるんですか?嫌ですよ!あの叔母君ですよ。また、ぐだぐだと説教受けるだけでな~んにも聞き出せませんよ。」

レオンが本当に嫌そうに首をぶんぶんと振って拒否します。




「くっ…。レオンにも怖いものがあったのか?」

笑いを含みながらアレクセイが尋ねます。



「からかわないで下さいよ。ただ、ちょっと苦手なだけですよ。あ、それより、陛下が聞き出して来られてはいかがですか?かわいい一人息子だからすぐに何でも教えてくれますよ、きっと!」



アレクセイはそれを聞いた瞬間、目が泳いでしまいました。


「いや、たぶん無理だ!最近は、ナターリアのことで仲が良くないんだ…。」

弱り切ったようにアレクセイが答えます。



「あの…。」

何か言いたそうにメアリーが目で訴えます。



「何、メアリー。どうしたの?」

レオンが振り向いて、メアリーの顔を覗き込んで尋ねます。





「あの、だんなさま…。どちらでもいいんですけど、お姉さまのために王太后さまのご意向を聞いて来ていただけませんか?」

あまえるようにメアリーがレオンにお願いをします。




それを見たレオンは、蕩けるような表情なり、

「まいったなぁ…。メアリーに頼まれると嫌とは言えないな。」




「じゃあ、だんなさま…!」

メアリーが期待に満ちた顔でレオンに話しかけます。



「うん。そういうわけだから、陛下よろしくお願いします。」

レオンが事もなげにアレクセイに頼みます。



「「え!」」

その場にいたレオン以外の全員が見事にハモりました。



「おい、レオン!違うだろう。おまえが頼まれたんじゃないか!?」

アレクセイがレオンにツッコミます。



レオンが頭をかきながら、

「いや~、よく考えたらさぁ…。ナターリアさまが離宮に行かれたから、うちの別荘にいる義父君たちに使いを出したり、召し使いの手配や何やらとすることが多いから、ね。だから、陛下よろしくお願いします。」




「確かに、それはそうだな…。」

アレクセイは何か腑に落ちないようでしたが、自分が行かなければいけないような気がしてきました。




「そうでしょう?夫が妻の幸せのために働くのは当然のことですよ。それに、ナターリアさまの妹に嫌われたくないでしょう?」

レオンがニヤリと笑ってアレクセイに尋ねます。




こっ、こいつは…。


「分かったよ。夫は妻の幸せのために働くものだ。女官長、行くぞ。」

アレクセイはすっかりお手上げとばかりに、席をたちあがりました。



「よろしくお願いします、陛下。」

ペコリと頭を下げて、メアリーが頼みます。



「分かった。」

アレクセイはにっこり微笑んで出て行きました。


パタン。



同じ姉妹でも違うのだな…。

ナターリアはあまえることなどなかったが。


しかし、頑張ってなんとか状況を変えねば…。

ナターリアのために!






アポもなく王太后の居室に向かうアレクセイでしたが、そこにはある人物が王太后に驚く報告をしておりました。

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