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客室にて②

お待たせしました。

アレクセイはそれを聞いて、えっという表情をしました。


「え…、あ…、ラウル卿。それはどういうことなのだ?」

アレクセイは動揺を隠しきれない様子で、ラウル卿に尋ねました。


ラウル卿は尋ねられて、些か困惑しながら答えます。

「は、それがその…。側妃さまには、始めは報告しなくてもよいとのご意向でしたが、私の立場を申し上げますと、あるがまま報告するようにとのことでございます。」


「なぜ、そのようなことを…?」

アレクセイは顔色を変えて呆然としながらも、ラウル卿に尋ねます。



「そ、それは、私には分かりかねます。恐れながら、側妃さまには何かお悩みがおありがあってのことと存じます。」

ラウル卿は、

まさかナターリアが「祝うようなことではない」と言っていたとは言い出せないので、遠回しに言葉を濁して答えました。



アレクセイはそれを聞くと、ショックだったのか暗い表情で、座っていた席のひじ掛けに俯いてしまいました。



しばらくの沈黙のあと、虚ろな顔をしたアレクセイが尋ねます。

「ラウル卿、ナターリアに逢うことは出来るのか…?」



「え、はい、陛下…。さきほど、お目覚めになられましたゆえ、少しのお時間でしたら可能でございます。ご案内申し上げましょうか?」

ラウル卿は、虚ろな様子のアレクセイを気遣いながら答えます。



「頼む…。」

アレクセイはそう言うと、立ち上がってトボトボとラウル卿と一緒に客室を出て行きました。


その様子はまるで捨てられた子犬のようでした。

どこにも国王陛下としての威厳はありませんでした。





「ちょっと、何なの!私だってお姉さまを心配しているのに…。ほったらかし!?」


アレクセイとラウル卿が何も言わずに部屋を出てナターリアのもとに向かってから、あまりのことにメアリーが思わず叫びだしました。



「落ち着いて、メアリー。すぐ陛下も戻られるよ。」

レオンがポンと肩を叩いて、メアリーを慰めます。

そして、ちらっと女官長を方を向いて、

「そうだよね、女官長…?」



女官長は少し気まずそうに、頭を下げて、

「申し訳ございません、ロプーヒナ公爵さま。陛下には、側妃さまをご心配のあまり出て行かれたものと存じます。私が様子を伺って参りますので。」



「そう、悪いね?でも僕だけに謝られても困るなぁ…。他にも、ね?」

レオンがニヤリと笑って女官長に追い討ちをかけます。



女官長は、

コイツは…!

いくら陛下のいとことはいえ…。

なんだかレオンが憎たらしくなりましたが、他に人がいなければと思いましたが致し方ありません。

ふぅ~と、ため息をついて心を落ち着けて、また頭を下げました。


「誠に申し訳ございません、ロプーヒナ公爵夫人ならびにオルティス公爵ご夫妻。陛下に成り代わりましてお詫び申し上げます。ただいま様子を伺ってまいりますので、こちらで少しお待ちいただけますでしょうか?」



「いや、女官長。私どもは気にしておりませんので。こちらで待ちましょう。」

オルティス公爵が穏やかに話しかけます。


「ありがとうございます、オルティス公爵さま。」

女官長は少しホッとしたように答えます。



「まあ、私もそのようにしていただけるのでしたら、お待ちしますわ。でも、女官長どのみずからなんて、なんだか申し訳ないですわ。」

メアリーも少し機嫌をなおしたのか、女官長を気遣います。



「ありがとうございます、ロプーヒナ公爵夫人。私の役目でございますから、どうぞお気になさいませんように。」

女官長が微笑んで答えます。



「そうだよ、メアリー。気にすることないよ。だいたい女官長があまやかして育てたからこんなことになったんだから。」

微笑んでレオンが軽口を言います。


その場にいた女官長以外の人間は、危うく吹き出しそうになりましたが女官長の前ですから、なんともいえない表情で、お互いの顔を見合わせました。


気まずそうな表情で女官長は、

「レオンさまにはかないませんわ。では、私は様子を見てまいりますので失礼いたします。」

そう言って部屋を出て行きました。




ぷっ!

ふふふ…


「だんな様たらっ…。ちょっと言いすぎじゃないの!」

メアリーは女官長が部屋を出ていくと、たまらずに吹き出してしまいました。


「そんなことないよ。あのくらい言ったほうがいいんだよ。義姉君がお優しいのをいいことにあまえすぎてるんだし。」

レオンが少し憤慨したように言います。


「う~ん、それは否定しないけどね。」

メアリーもそう言うと、微笑みながら、お茶を飲みました。


「ククッ…、ロプーヒナ公爵夫人、私どももそう思いますぞ。少し耳にはいっただけですが、王妃ではないにせよ、第一王子の母たる側妃にたいしてあまりのお扱いに存じます。」

オルティス公爵が少し笑いながら言います。


「あ、これは…。オルティス公爵どの、ありがたいお言葉にございます。」

メアリーは、姉ナターリアの敵ならいくらでもいましたが、味方になってくれた人は初めてでしたので少し戸惑いながら答えます。


「少し、警戒しておられますかな?ご心配には及びませんぞ。私は、大臣とはつきあいはありませんぞ。ただ、知らぬこととはいえ、申し訳ないことをしたと思いまして。中立の立場をとっていたとはいえ、第一王子の母たる妃にたいしてこのようなお扱いとは…。何か出来ることがありましたら、何でもお申し付け下さいますようにどうぞ姉君さまにお伝え下さい。」

オルティス公爵が真摯な態度で、メアリーに話しかけます。


それを聞いたメアリーが少し信じられないような面持ちで、レオンを顔を見ます。


レオンはにっこり微笑んで、

「心配ないよ、メアリー。公爵どのは大臣と違ってたぬきじゃないから信用できるよ。」


それを聞いたメアリーは少し安心したように笑って、

「だんなさまたらっ!あの…、オルティス公爵どの、頼みにしておりますので、よろしくお願いします。」

そういうとメアリーかペコリと頭を下げました。


「お仲のよろしいことね。ロプーヒナ公爵ご夫妻は…。お任せ下さい。出来ることはいたしますので。それしても陛下はナターリアさまをもう少し庇ってさしあげなくては、身の置き所がないでしょうに。」

オルティス公爵夫人が同情したようにしんみりと話しかけます。






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