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夜会④

お読みになる前にお伝えしたいことがあります。


大臣の敬称についてですが、何としたらいいか考えましたが、「さま」で統一することにしました。

閣下は閣僚や将軍、貴族に対する敬称ですが、外交上で利用することが多いものだそうです。

さまは何か感覚的に違うような気がするのですが、さまに相手に敬意を現して使う一般的なものなので、これを使うことにしました。

もし、いい敬称があれば教えて下さるとありがたいです。

ヘタレな作者で申し訳ありません。



「これは、大臣さま…。ご機嫌ゆるわしく存じます。」

オルティス公爵夫人がスッと大臣の前に現れて、にこやかに挨拶を交わします。


それを聞いた大臣が、意外そうな表情で、

「ごきげんよう、オルティス公爵夫人。思わぬところでお目にかかりますな。」


「意外でございますか?それはそうと、このたびのご令嬢のご婚約、お祝い申し上げます。」

オルティス公爵夫人が微笑んで、祝いの言葉を述べます。


「ありがとうございます。オルティス公爵夫人からも祝われるとは、娘も幸せものです。ところで、公爵はいずれにおいでで?」

大臣は顔は目は笑ってないものの、にこやかに答えました。


「あちらにおりますわ。呼んで参りましょう。」

オルティス公爵夫人はそう言うと、名残惜しげに公爵を呼びに行きました。




そこに残された大臣は、邪魔者は去ったといわんばかりに、ナターリアに近づき話しかけました。

「お初にお目にかかります、ナターリアさま。側妃シャルロッテさまの父でございます。」


ナターリアは少し緊張気味に、

「はじめまして、大臣さま。お目にかかれてうれしゅうございます。このたびのご令嬢のご婚約、お祝い申し上げます。」


「これは、側妃さまにまでお祝いいただくとは、些か面映ゆいですな。ところで、お帰りとお見受けいたしましたが?」


「ええ、少し気分がすぐれないもので失礼させていただこうかと思いまして。」

ナターリアは少し疲れたように答えます。


「それは残念ですな。お美しいナターリアさまがおいでになりますとこの夜会も華やぎますものを…。」

大臣はいかにも残念そうに言います。


「いえ…。他にもお美しい方々がおいでになりますのに、そのようなことはございますまい。」

ナターリアは俯き加減にそう言います。


「ご謙遜を、ナターリアさま。お帰りにになられる前に、お近づきのしるしに乾杯をいたしましょう。」

大臣はそう言うと側に控えていた侍女からワイングラスを受け取ると、ナターリアに渡そうとします。


その様子を見たメアリーはスッと前に出て、

「恐れ入りますが、姉は気分が悪うございます。私は代わりにいただきたく存じます。」


それを聞いた大臣は少し不機嫌そうな様子です。

側にいた取り巻きの貴族の一人が心得たように、メアリーに向かって咎めます。

「大臣さまが側妃さまにと話しておられるのに、無礼ではないか!」


普通の女性ならこれで怯むはずですが、そんなことで怯むメアリーではありません。

「申し訳ございません、大臣さま。側妃さまを思うがゆえでございますので、ご容赦を。」

そう言ってメアリーは、お辞儀をします。


そんなメアリーの様子を見た大臣は、なんだか咎められてるような気がしました。メアリーを咎めた貴族に向かって、

「いや、もうよい。気にしておらぬゆえ…。」

大臣は形ばかりそう言って、制します。

そして、ナターリアに向かって、

「姉思いの妹君をお持ちですな、ナターリアさま。」


「恐れ入ります、大臣さま。妹は私を思ってのことゆえ、ご無礼は私が代わってお詫びいたします。どうぞお許し下さいませ。」

ナターリアはそう言って、大臣に向かってお辞儀をします。



それを見た大臣や取り巻きたちは、満足そうに微笑みました。


周りのいる貴族たちがざわつき始めたので、大臣が仕方なく、ナターリアを制しました。

「お止め下さいませ、ナターリアさま。私には何も気にしておりませんので。」




そんなときにオルティス公爵夫人が公爵を連れて戻ってきました。


その姿を見たオルティス公爵夫人は驚いて、

「まぁ、ナターリアさま!何をなさっておいでなのです?」



ナターリアは頭を上げると、何ともいえない表情で、

「いえ、妹が大臣さまに無礼をいたしましたので、代わりに謝罪をしていたところですの。」


「まあ、そのようなことが?大臣さま、側妃さまに頭を下げさせるなんて…。」

オルティス公爵夫人が眉をひそめて尋ねます。


隣にいたオルティス公爵も怪訝そうな表情で見つめます。


「いいえ、私が勝手にしたことでございますので。大臣さまは何もおっしゃってはおりませんわ。」

ナターリアは遠慮がちに答えます。


「そうなのですよ、オルティス公爵夫人。」

大臣が少しだけ申し訳なさそうに言います。


「そうですか…。メアリーどのと申されましたな?公爵夫人になられたのですから、あまり姉君にご苦労をおかけしないようになさいませ。」

オルティス公爵がメアリーに注意をします。


メアリーは、話しが大きくなり申し訳なさそうに、

「はい…。申し訳ございません。」

と言って頭を下げます。




大臣は微笑んで、

「さあ、もうよろしいでしょう、オルティス公爵?皆でお近づきのしるしに乾杯でもいたしましょう。」

そう言うと大臣は侍女に命じてグラスを配らせました。


そして、大臣、ナターリア、ロプーヒナ公爵夫妻、オルティス公爵夫妻で乾杯をしました。


少しやつれ気味のナターリアがグラスを傾けて飲み干そうとしたその時です。


ナターリアの手からワイングラスが落ちて、その場に倒れていきました。


「ナターリアさま!」


「お姉さま!」


「側妃さまが倒れられた!」


「誰か、医師を!」



メアリーが姉の側に寄り添い、泣きながら、

「だから私が申したのですわ、お姉さま!お飲みにならない方がよろしかったのに…。」



「それはどういうことだ…?」

騒ぎを聞きつけたアレクセイが暗い低い声で問い詰めます。


「陛下…!」


「陛下!」


アレクセイの登場にざわめきました。


「何をしてのです。すぐに側妃さまを部屋にお連れしなさい。ラウル卿をすぐ呼び、診察させるのです。」

後からついてきた女官長が指示をとばします。


ナターリアが部屋に移されて、その場にメアリーたちが残されました。





「して、どういうことなのだ?」

アレクセイが怒りに満ちた表情でメアリーに尋ねます。


「は、はい。大臣さまがお姉さまにワインをすすめられましたが、お姉さまがご気分が優れないようでしたので、私が代わりにと申し上げたのです。でも、でも…、お姉さまは私の代わりに謝罪なさってお飲みに…。ヒクッ…。」

メアリーは途切れ途切れに答えます。


それを聞いたアレクセイは怒りのあまり、顔色が変わり、

「大臣、しばらく王宮に留まるように。客室を用意させる。」

低い地を這うような声で言い捨てると奥へ引き上げていきました。


「陛下…!」


「お待ち下さい、陛下!私は何もしておりませんぞ。」

大臣が必死で言い募ります。



「どういうことだ?」


「訳が分からぬが、どうやら大臣さまが無理にワインをお勧めになられて、ナターリアさまがお倒れになられたらしいぞ。」


「まさか、大臣さまが…。」


「いや、有り得るぞ。ナターリアさまは第一王子のご生母だからな。いなくなれば…。」




その場にいたたまれなくなった大臣は呆然と立ち尽くしていました。


その大臣を侍女たちが客室に案内をしました。

侍女たちに客室に案内をさせたのは、王太后への配慮だったのかも知れません。



女官長が泣き崩れるメアリーに声をかけました。

「ロプーヒナ公爵夫人、さあ、お立ち下さいませ。ナターリアさまのもとに参りましょう。」


「え、私が側にいてもいいのですか?」

メアリーが戸惑いがちに答えます。


「もちろんでございますよ。ナターリアさまも妹君がお側にいれば心強いことでしょう。」

女官長が優しく微笑んで言います。


「はい、そうですわね。女官長、お姉さまのもとへお連れ下さいまし。」

メアリーはそう言って立ち上がりました。


それを聞くと女官長は、側にいたレオンとオルティス公爵夫妻たちにも声をかけました。

「恐れ入りますが、ロプーヒナ公爵さま、オルティス公爵ご夫妻にも本日は客室にお泊り願えますでしょうか?」


レオンは少し驚きつつ、

「私たちもですか?」


「ええ、申し訳ございませんが。公爵夫人は興奮しておられる様子にて、もう少しお話しを伺いたく思いますので、付き添いをお願いいたしたく存じます。」

女官長が申し訳なさそうに言います。


「はい。そういうことでしたら…。」

レオンとオルティス公爵夫妻もそう言うと、客室へ向かって行きました。





その日はそのまま夜会が行われましたが、大変なことになったと噂でもちきりで普段の夜会とは違ったものとなりました。

お読みいただき、ありがとうございます。


いよいよ佳境に入っていきます。

反撃というか、立場逆転?していく予定です。

よろしければ、またお読みいただければ嬉しいです。

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