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王太后と大臣の会話

「さ、さようでございますか…。よ、よく分かりました、王太后さま。」

ナターリアは驚きのあまり顔面蒼白になってしまいました。


そんなナターリアの姿を見ながら、王太后はゆっくりと紅茶を飲み始めました。


そして、飲み干したカップをテーブルにカチャリと置きました。


「ナターリアどの、お顔の色が良くないようですが…?」

王太后がいかにも心配そうに尋ねます。


「あ、いえ…。大丈夫でございます。申し訳ございませんが、本日はこれで失礼させていただきたく存じます。また、日を改めてお伺いさせて致しますので、お許し願いますでしょうか?」

ナターリアは震える声で王太后に尋ねます。


「ええ、お加減が良くなさそうですから、お大事になさいませ。侍女に送らせましょう、誰かおらぬか?」

王太后が眉をひそめて心配そうに言うと、侍女を呼びつけました。


ナターリアは椅子から立ち上がると、

「いえ、大丈夫でございますから。どうぞお気遣いなさいませんように。」


王太后はナターリアの体を支えながら、小声で囁きました。

「何を言われます。王妃になられるかも知れない大事なお体でございましょう?」


それを聞いたナターリアは、また顔色を失いながらも、言葉をふりしぼりました。

「あの、王太后さま。まだ、はっきり決まったわけではございますので…。」


「そうでしたわね。ナターリアどの、いいお返事を期待していますよ。」

ニヤリと王太后は笑って、ナターリアを侍女に託して見送りました。


傍から見ると体調の優れない側妃を気遣う優しい王太后の姿でした。



ナターリアは複雑そうな顔をして侍女に支えらながら、

「お気遣い恐れ入ります、王太后さま。また、よく考えましてお返事させていただきたく存じます。失礼いたします。」

そう言って深々とお辞儀をして去って行きました。




ナターリアが王太后の居室から去っていくのを見計らったように庭園の隣室からシャルロッテの父の大臣が現れました。

「失礼いたします。王太后さまにはご機嫌麗しくおめでとうございます。」


「ごきげんよう、大臣。いつからおいででしたの?」

王太后は振り向きざまに、にこやかに大臣に話しかけました。


「少し前にございます。それよりも水臭いですなぁ、王太后さま。何もナターリアさまに頼まれずとも、私にご命じいただければよろしゅうございますものを。」

大臣は微笑んで王太后に話しかけます。


「大臣、せっかくいらしたのです。紅茶を飲んでいかれませ。いま、したくさせましょう。」

王太后はそう言うと、侍女に命じて大臣をテーブルに案内させました。


「恐れ入ります、王太后さま。」

大臣が会釈をして、席につきました。





「それで、いつから聞いていたのですか?」

王太后が皮肉そうに笑って大臣に尋ねます。


「申し訳ございません、王太后さま。聞こえてしまいまして、一通りのことは…。」

大臣はいかにも申し訳なさそうな様子で答えます。


それを聞いた王太后はふっと笑い、


このタヌキが!

聞き耳をたてていたのでしょうに。

まあ、いいわ…。


「そうでしたか。壁が薄いのかしら。少し手を入れなくてはならないかしら?」

含み笑いをしながら王太后は大臣を試すように尋ねます。


大臣もそれを聞いて眉をひそめて、


まったく…。

食えないお方だ。


「いえ、私はあまりここに参りませんので何とも申し上げかねますな。」

大臣も素知らぬ様子で答えます。


「そう?ならそう思うことにしましょうか。ところで、大臣にはなぜこちらにおいでになりましたの?ただのご機嫌伺いとは思えませんが…。」

王太后はチクリと警告しながら、大臣に尋ねました。


「いえいえ、ご機嫌伺いにございますよ。至らぬ娘がお世話になっておりますからな…。」

大臣はそう言って王太后を窺います。


王太后は無言で大臣にふっと笑いかけます。


「…と申しても、信じていただけないようですな。王太后さまには、かないません。どうぞご容赦を願い上げます。」

大臣はそう言って頭をかきました。



王太后は、ぷっと笑い出しました。

「ほほほ…。大臣、私は鬼でも蛇でもありませんよ。ん、申してみなさい?」


大臣は心の中で、

蛇の方がかわいいがな…。

まったく勘の鋭い方だ!


「恐れ入ります。では申し上げます。実は、ナターリアさまが王妃になられるという噂を耳にしたものですから、気になりましてこちらに参った次第でございます。」

大臣はそう言うと王太后の様子を窺います。


王太后はそれを聞くと眉をひそめて、紅茶を飲んでいた手を止めて、カップをテーブルに置きました。

「そう、もうそんな噂があるのですか。」


「はい。しかし、噂の真偽を確かめるまでもなく、真実のようでございますな…。」

大臣はそう言うとため息をつきました。



王太后は少し困った顔をして、

「ええ、残念ながらそのようでございます。ナターリアどのが嘘をつくとも思えませんし、ね。」


「そうですか、困りましたな。しかし、それよりも王太后さま、さきほどのお言葉はご本心にございますか…?」


「さきほどの言葉とは…?」

王太后は気まずそうな顔で尋ねます。


大臣は皮肉そうに笑い、


分かっているくせに、このタヌキが…。


「恐れおおいことながら、どちらが王妃になってもかまわないというところでございますよ。そういうお気持ちであられるのでございますかな?」

大臣は真剣な表情で尋ねます。


さすがの王太后も少し怯んで、

「大臣、誤解なさらないで下さいね。ナターリアどのを王妃になどと考えているわけではありませんのよ。」


「ならば、あのようなことを仰せられたのでございます?」

大臣はさらに追及するように尋ねます。




「それは、考えがあったからです。大臣、私が反対したとしても陛下はナターリアどのを王妃にするでしょう。第一王子の母でもありますし…。」

王太后は苦々しい表情で答えます。



「それは、確かに…。しかし、どうなさるおつもりで?」

大臣も眉をひそめて尋ねます。





「しばし、ナターリアどのがどうするか、様子を見ましょう。テオドラのことも気になりますし…。」


「は、さようで…。しかし、テオドラ王女さまのことがご心配でしたら、私がかの者をなんとかいたしましょう。」

大臣が王太后にまた恩を売るつもりで提案します。



「いや、まだよい。ナターリアどのがダメだったときに頼みましょう。…あの者、何が不満なのか。陛下に愛され、第一王子の母でもあるのに…。」

王太后はそう言ったあと、何か思い出したように唇を噛み締めます。



なかなか話しが進まず、すみません。


そろそろ佳境に進んできました。

どうなっていくのか見ていていただけるとうれしいです。

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