王太后との会話①
更新が遅くなりまして、すみません。
王太后の居室にある庭園には、軽やかな風が吹いて、美しい花たちが咲き乱れていました。
ナターリアはずっと寝室に篭ってばかりでしたので、ついぼんやりと立ち止まり花を眺めてしまいました。
そのぼんやりとした様子を見た王太后は、
「綺麗でしょう?これは亡き人が好きだった花なのよ。」
その声を聞いたナターリアは、ハッと我に返り、
「あ、申し訳ございません。ぼんやりしてしまって…。あの、王太后さま、亡き人とはどなたのことでございますか?」
「それは、お茶でも飲みながら話しましょう?さあ、お座りなさい。」
王太后は微笑んで話しかけます。
ナターリアは恐縮しながら、席に座り、
「恐れ入ります、王太后さま。」
テーブルの上には香ばしい紅茶とアップルパイが用意されていました。
「美味しい…。」
ナターリアは紅茶を一口、口にすると微笑んで呟きました。
「気に入ってもらえて良かったわ。ああ、ところで王子は元気かしら…?」
王太后がにこやかに尋ねます。
ナターリアは、しまったという表情でバツが悪そうに、
そういえば王太后さまにしばらく王子を預かってもらっていたのだわ…。アレクセイさまの指示とはとはいえ…。
「あ、あの…。その節は大変お世話になりまして、ありがとうございました。お礼も申し上げずに失礼を致しました。おかげさまにて、王子も元気にしております。」
申し訳なさそうに深々とお辞儀をしながら答えます。
「気にしなくていいのよ。陛下の指示だったのでしょう?」
王太后は優しく微笑んで言います。
「あ、いえ、その…。申し訳ございません。王太后さま。」
ナターリアは冷や汗をかきながら、うつむいて答えます。
「気にしないでと、申しているでしょう?ナターリアどの。顔を上げてちょうだい。」
王太后が穏やかに話しかけます。
それを聞いたナターリアが恐る恐る顔を上げますと、王太后がにこやかに微笑んで話しかけてきました。
王太后が紅茶をゆっくり飲んでからカップを置きますと、そばに控えていた侍女に何か話しかけました。
侍女はそれを聞くと下がっていきました。
「ナターリアどの、さっきの話しの続きだけれど、あの亡き人と言うのは先帝陛下の寵妃で、テオドラの母君なの。」
王太后が懐かしそうに話し始めました。
「王女さまの母君でございましたか…。」
顔を上げたナターリアは記憶をたどりながらなんともいえない表情で答えます。
「ふふっ…。おかしいでしょう。寵妃、クララどのとはいわばライバル関係。そのライバルが生んだ子を先帝陛下に頼まれたからと言って育てるなんて…。」
王太后は笑いながら話し始めました。
「あ、いえ、そのようなことは…。王太后さまのおやさしい心遣いかと存じます。」
ナターリアが戸惑いながら答えます。
「お世辞はいいわよ。ナターリアどのには似合わないわ。私は、クララどのがテオドラを残して亡くなったとき、正直ホッとしたの。王妃とはいえ、先帝陛下の寵愛はクララどののもの。これで先帝陛下は私を見てくださると期待したの。だから、テオドラを育てて欲しいと頼まれたとき、一もなく飛びついたわ。ナターリアどのも公爵令嬢だから分かるでしょうけど、王子や王女は王宮で育つものと定められているけれど後ろ盾のないものほど惨めなものはないわ。侍女にも劣るわ。クララどののご実家はすでに王女の後ろ盾になれるほどの力はない存在だったもの。だから、先帝陛下はテオドラを王妃の養女にして安心したかったのでしょうね。愛する人との子供ですもの、ね。」
王太后は昔を懐かしむように話します。
「王太后さま…。ですけれど、王女さまと王太后さまは本当に仲の良い親子のように見えますわ。」
遠慮がちにナターリアが答えます。