オリガの処罰
そう言うと宰相は、手を差し出して来たのでメアリーは遠慮がちに握手をしました。
「お、恐れ入ります。宰相さま…。お恥ずかしゅうございます。」
メアリーは急に恥ずかしくなり、冷や汗が出てきて俯いてしまいました。
「おや、かわいらしいところもおありのようですね。」
宰相は微笑んで答えます。そして、陛下の方へ向き直り、
「ところで陛下、オリガさまのことはいかがなされるおつもりですか?側妃とはいえ、ここまでのことをなされたお方です。」
「それは、こうなっては仕方ですから…。女官長、オリガどのをナターリアを害した罪で拘束せよ。ただちにに行え。」
アレクセイは苦々しい表情で、躊躇しながらもそう命令を出しました。
「承りました、陛下。ただちに兵士を引き連れて拘束して参ります。では、これにて失礼いたします。」
女官長は、お辞儀をして命令を受けると、部屋を辞すると兵士を連れて後宮に向かいました。
続いて宰相も部屋を出てオリガの父のハリス伯爵を捕らえました。
そこに残されたメアリーは、アレクセイに向かい、
「さきほどはご無礼をいたしました、陛下。お詫び申し上げます。」
お辞儀をして謝罪しました。
「いや、気にしておらぬゆえ。それより、せっかく来たのだ。ナターリアを見舞ってくれ。しばらくは王宮も騒がしいだろうから…。」
アレクセイはため息をついて、遠い目をしながらメアリーに話しかけます。
メアリーは頭を上げると遠慮がちに、
「一つお聞きしてもよろしいですか、陛下?」
「何かな、メアリー嬢?」
アレクセイは微笑んで尋ねます。
「さきほど女官長に命令を出されるとき、躊躇されておられるようでしたが、なぜでございますか?」
メアリーはアレクセイの目を見据えて尋ねます。
「それは、このような不祥事は表にしたくなかったからだ。まして、オリガどのは、私が即位するにあたって協力したくれた数少ない王族だからな。」
アレクセイは苦々しそうに答えます。
「たとえ、お姉さまやお父さまの命を危うくすることをされてですか…?」
メアリーは眉をひそめて尋ねます。
「それは、さすがに許しておけぬことゆえ、命令を出したのだ。わかってくれ、メアリー嬢。私には、国王としての立場がある。けれど、ナターリアを大切に思う気持ちは嘘ではない…。」
アレクセイは困った顔をしながら答えます。
「そんなことは、私には分かりません。私はお姉さまのために婿養子のことを了承したのですよ。それなのに、陛下がこのさき、お姉さまを不幸にすることは許しません…。」
メアリーは最後には涙ぐみながら陛下に訴えます。
これにはアレクセイも驚き、
「分かった。約束するから、安心してくれ。」そう言うと、メアリーの肩をポンと叩きました。
「本当でございますよ。お姉さまを幸せにして下さいませ。お願い申し上げます。」
メアリーは涙を拭いながら、そう言うとお辞儀をしました。
メアリーも部屋から去っていき、アレクセイは私室で一人になりました。
「幸せに、か。肝心のナターリアは私を愛しているのか分からぬのにな…。」
アレクセイは寂しそうに呟きました。
後日、拘束されたハリス伯爵一家は罪を問われて爵位を失いました。
オリガも側妃の位を剥奪されました。
ただ、王族ゆえ命は助けられ、遠く監獄に送られることになりました。
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これから妹のメアリーも活躍します。
早くハッピーエンドにしたいです!