表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/74

ラウル卿もどる

お待たせしました。

公爵の寝室で衝撃の事実を知ったカールと公爵夫人エレナは驚きのあまり声も出ませんでした。


「それはどういうことで…。側妃さま、いえナターリアさまの御身に何があったのでございます?」

公爵の枕元に立っていたエレナが震える声でラウル卿に尋ねます。


「それは、その…。これは内密のお話しなので申し上げてよいものか…。」

ラウル卿は、しまったという顔で答えます。


カールは、震えるエレナを支えながら、

「ラウル卿さま、恐れながら公爵夫人には聞く権利がございます。内密のことゆえ、口外はいたしませぬゆえ、どうかお話しいただきたく存じます。」


ラウル卿は仕方なく困惑しながらも話し始めました。


ナターリアが銀の毒によって体を病んでいることを。




「そんな、ナターリアまでそんなことになってしまっていたなんて…。」

エレナは絶句すると、ショックのあまり気を失ってしまいました。


「公爵夫人!」


「奥さま!」


エレナは隣室に運ばれました。


その一部始終を見ていたナターリアの妹のメアリーは憤慨するように尋ねます。

「どうしてなのですか?お父さまだけでなく、お姉さままで…。」


「確か、メアリー嬢でございましたな。申し上げにくいことながら、後宮においてはこのたびのことは行き過ぎではございますが、国王陛下の寵愛をめぐって争いごとは起きるのはよくあることなのでございます。」

ラウル卿は言いにくそうに答えます。


「それは私にも分かりますけど、毒殺なんて…。お姉さまは我が家を立て直すために後宮に入っただけで、陛下のご寵愛なんて望んでもおりません。」

メアリーは興奮して尋ねます。


ラウル卿はため息をつきながら、

「ご事情はお察しいたしますが、姉君のナターリアさまは陛下のご寵愛を独占されて第一王子をお産みになられました。その存在自体、他のお妃にとっては脅威にございます。」


メアリーは怒りに震えながら、

「だからお姉さまのために私が宰相さまのご次男を婿養子に迎える決心をしましたの。陛下はお姉さまのために何もして下さらないのですか?カールどのの方がよっぽど…」


遠慮して部屋の片隅にいたカールがおもむろにメアリーに近づいて、

「メアリーさま、それは国王陛下にもお立場がございますゆえ、致し方ないこともございます。」


「分かっているわ、そんなこと…。」

メアリーは唇を噛み締めてつぶやきます。


「でも、ラウル卿、この解毒剤があればお姉さまは助かるんでしょう?」


「もちろんでございます。早速、王宮に戻りましてナターリアさまに捧げなくてはなりません。カールどの、恐れいりますがこのこと陛下にご報告する必要上、一緒においでいただけますかな?」

ラウル卿は立ち上がって、カールに頼みます。


カールは緊張しながらも、

「はい。罰は覚悟しておりますゆえ、どうぞお連れ下さい。」


メアリーはそれを聞いて、

「それなら私も行きます。ラウル卿、カールどのに罪はありませんわ。すべては我が家のためにしたことです。」


ラウル卿はやれやれという顔をしながら、

「その心配はご無用にございますよ。公爵さま、皇妃さまをお救いするためですから、たいした罪にはなりますまい。私からも陛下にとりかなしましょう。メアリー嬢、ご心配なさいませんように。」


「そうですか。でも、お姉さまのお見舞いに伺いたいし、私もお連れ下さいまし。」

メアリーはなおもラウル卿に頼み込みます。


「仕方ありませんな。ご一緒に参りましょう。ただ、公爵さまのことが気がかりですから私の助手を残させていただきます。よろしいですかな?」

ラウル卿は微笑んで提案します。


「ありがとうございます。ラウル卿、お父さまにもお気遣いいただき感謝いたします。」

メアリーはそう言うと淑女の礼をラウル卿に捧げました。


「おやおや、さきほどまで憤慨しておられたのに現金なお方ですな。さあ、参りましょう。」

ラウル卿は笑って答えます。


「ラウル卿、そんないじわるおっしゃらないで下さいまし。」

メアリーは少し拗ねたように言います。


「冗談でございますよ。失礼をいたしました。」

ラウル卿はお辞儀をして答えました。


こうして公爵家を辞して、ラウル卿や女官アンナたちは王宮へと戻りました。

大変なお土産とともに…。





王宮にもどるとアレクセイはナターリアのもとにいました。


女官アンナとラウル卿はナターリアの部屋に向かいました。


「ただいまもどりました。陛下、ナターリアさま。」

アンナが代表して挨拶をしました。


「もどったか?ご苦労であった。して、公爵のご様子はいかがであった?」

アレクセイはラウル卿に尋ねます。


そばにいたナターリアは具合が悪いのか、顔色が悪く、横になったまま心配そうにしています。


「恐れながらお答え申し上げます。ご心配には及びません、陛下、ナターリアさま。公爵さまのおかげんは快方に向かっておられます。念のため、助手を残してまいりましたが。」

ラウル卿は少し緊張しながら答えます。


「それは何よりだ。よかったな、ナターリア。」

アレクセイはナターリアの髪を撫でながら答えます。


ナターリアはそれを聞いて微笑んで弱々しい声で、

「はい、陛下。安心しました。ありがとう、ラウル卿。」


「恐れ入ります。ところで、ナターリアさまのお体に良いお薬を手に入れました。どうぞお試し下さいますよう。」

ラウル卿はそう言ってあの解毒剤をナターリアに捧げました。


アレクセイはナターリアのためになるならと、その薬を飲ませますと、公爵のときと同じようにみるみるうちに顔色が良くなっていきました。


アレクセイもこれには驚き、

「これは、なんという…。」


「効いたようでございますな。ナターリアさま、どうぞごゆっくりおやすみなさいませ。」

ラウル卿は微笑んでナターリアに話しかけます。


「ありがとう、効いたみたいだわ。」

ナターリアはそう言うと寝息をたてて眠りはじめました。


「陛下、内密で逢っていただきたい方がございます。お時間をいただけませんでしょうか?」

ラウル卿は真剣な表情でアレクセイに頼み込みます。

次はオリガの真実が明らかになるかも知れません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ