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王女のお茶会②

「あら、アップルケーキがないわ…。」

王太后がテーブルの上の菓子箱の中を探しますが、見当たりません。


「お母さま、私がいま食べてるから。」

そう言って、テオドラ王女が美味そうに最後の一つをたいらげました。


それを聞いたアレクセイが、不機嫌そうに、

「なんで食べたんだ、テオドラ!」


「だって、お兄さまがもう来ないと思ったんですもの…。」

テオドラ王女が不満げに答えます。


ナターリアが助け舟を出すように、遠慮がちに、

「あの、こんなものでよろしければまた作って参りますから …。」


「本当?今度は僕だけのために作ってよ~」

アレクセイが甘えるようにナターリアに話しかけました。


「はい。お気に入るかどうかわかりませんが…。」

ナターリアがちょっと笑って答えます。


「ううん。ナターリアの作るものなら何でも気に入るから、作ってね。」

アレクセイがナターリアの手を握って頼んできました。


「はい…。」

ナターリアが周りの目を気にしてか、恥ずかしそうに答えます。


「ゴホン、ゴホン…。」

王太后がわざとらしく咳をしました。


それに気づいたアレクセイが、

「母君、どうされました?」


王太后が苦々しく、

「どうされたじゃありませんよ。アレクセイ、未婚のテオドラの前ですよ。少し、慎みなさい。」


アレクセイは

いいところだったのに、と不満げに妹を見て、

「テオドラ、いたのか?」


「さっきからいるじゃない、お兄さま。」

膨れっ面でテオドラが答えます。


「そうだったか。悪い悪い…。」

頭をかきながら、アレクセイがばつがわるそうに答えます。


「悪いじゃありませんわ、お兄さま。乙女の目の毒なことはなさらないで下さいませね。」

テオドラがアレクセイにたたみかけます。


「乙女って…。だいたい、テオドラがケーキを食べ過ぎるのが原因じゃないか。」

アレクセイが負けずにテオドラに言い返します。


見かねた王太后が

「もういい加減になさい、二人とも。ナターリアどのが不安そうにしているじゃありませんか!」


二人がナターリアを見ると、不安そうな顔で俯いています。


「ナターリア、大丈夫だよ。君のせいじゃないから。」

アレクセイがやさしくナターリアに話しかけます。


「ナターリアどの、ごめんなさい。あんまり美味しかったから。」

テオドラも悪いと思って謝りました。



その時でした。

宰相が息を切らしてやって来ました。


「王太后さま、突然失礼いたします。もしや、こちらに陛下がおいでではございませんか…。」


「お兄さま、いかがなされました?アレクセイならこちらにおりますよ。」

王太后がゆったりと答えます。


宰相の姿を見たアレクセイはまずいと思いながら、気まずそうに、

「宰相、よくここが分かったな…。」


「陛下、お捜ししましたぞ!執務を放り出して、どちらにおいでかと思えば…。」

陛下を睨みつけるように宰相が言い放ちます。


「ちょっと息抜きにお茶を飲みに来ただけだ。許せ。」

いたずらっぽく陛下が宰相に許しを請うように言います。


「陛下、執務を放り出して来られたのですか!まあ、なんてことでしょう。」

王太后がきつい口調にアレクセイを問い詰めます。


「母君、ちょっと抜け出しただけですよ。お許しを…。」

気まずそうにアレクセイが答えます。


王太后がため息をついて、

「ナターリアどののことが心配だったのでしょう。まったく、この子は…。いじめるとでも思ったの?」


アレクセイは頭をかきながら、

「いや、そういうわけではありませんが。ちょっと心配だったもので…。」


王太后は仕方なさそうに、

「この子はまったく…。ナターリアどのの立場も考えなさい。お兄さまいえ、宰相どの、連れていってちょうだい。」


宰相はそれを聞いて、やれやれと思いながら、

「ありがとうございます、王太后さま。では、陛下参りましょう。」


アレクセイは、

「もう少しだけ…。だめか?」


「ダメです。執務は目白押しでございますぞ、陛下。王太后さまが仰せられたでしょう?ナターリアさまのお立場もお考えなさいませ。」

宰相は陛下を追い詰めるように話しかけます。


アレクセイはがっくりと肩を落として、

「ナターリア、またね…。」

そう言って、宰相に連れられて部屋を去って行きました。




二人が去った後、ナターリアがポツリと王太后に話しかけました。

「あの、本日は、申し訳ないことでございました…。」


「ナターリアどののせいではないですよ。でも、もう少し慎重に行動なさい。ここはそういうところですからね。」

王太后はしんみりと話しかけます。


「はい、王太后さま。ご教授感謝いたします。」

しみじみとナターリアは答えます。


「お兄さま、よっぽどナターリアどののことがお好きなんですね。なんか、寂しいですわ、お母さま。」

テオドラが王太后にポツリと話しかけます。


「そのうちテオドラにも分かるときが来るから。好きな人が出来たらね。」

王太后がテオドラを慰めるように言います。


「来るのかなぁ、そういう時が…。」

分かったようなわからないような顔つきでテオドラが答えます。


「来るわよ、きっと。ナターリアどの、今日はありがとう。

また、おいでなさい。何も持って来なくてもいいですからね。」

王太后がにっこり笑ってナターリアに言います。


ナターリアはちょっと緊張気味に、

「ありがとうございます。また、伺います。」


「ナターリアどの、またね。」

テオドラは笑って手を振って挨拶をしてきました。


「王女さま、楽しゅうございました。これで、失礼いたします。」

そう言ってナターリアは王太后の居室を出て、自分の部屋に帰って行きました。





数日後、その噂を聞き付けたシャルロッテが王太后のもとを訪れていました。

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