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王女のお茶会①

ナターリアは困惑していました。

いきなり王太后のお茶会に招待されたからです。


正直、あまり好かれてないとは感じていたので尚更です。


「ねぇ、アリス。王太后さまはどうして私をお茶会に誘って下さったのかしら?」

側に控えていた侍女のアリスに尋ねます。


「私などには分かりかねます。でも、昨日、恐れおおくも陛下を帰されたことを感謝されておられるのではと思いますが。」

おずおずとアリスが答えます。


「そうかしら。はぁ…。なんだか気が重いわ。」

ナターリアがため息をつきながら言います。


「ナターリアさま、そろそろお時間ですわ。参りませんと。」

マリアが急かすように言います。


「もう、そんな時間なの?じゃあ、行きましょうか。」

そう言うとナターリアは立ち上がり、アリスとともに王太后の居室へ向かいました。




そのころ、王太后のもとではテオドラ王女がナターリアがいつ来るかいまかいままかと待っていました。


「申し上げます。側妃ナターリアさま、お越しでございます。」

そのとき、侍女がナターリアの訪れを告げました。


「ナターリアどの」

陛下に良く似たかわいらしい少女が王太后の居室に入ってきたナターリアの前に現れました。


ナターリアは突然現れた少女に少し驚いたものの、

「あの、ごきげんよう。どうして、私の名前をご存知なの?」

ナターリアは突然現れた少女に尋ねます。


そこへ王太后が現れて、

「テオドラ、おてんばが過ぎますよ。」

と王女をたしなめます。


「お母さま、ごめんなさい。」

テオドラ王女が恥ずかしそうに言います。


「ごきげんよう、ナターリアどの。ごめんなさいね、しつけがなってなくて…。私のかわいい娘の王女のテオドラです。さあ、ご挨拶なさい。」

王太后はすまなそうにナターリアに話しかけます。


「いえ、そのようなことは…。あの、王太后さま、ご機嫌麗しく存じます。本日はお茶会にご招待ありがとうございます。」

王女と聞いてびっくりしながらも、あわてて、ナターリアが挨拶をします。


「はじめまして、ナターリアどの。テオドラです。よろしくね。」

にっこり笑ってテオドラ王女は挨拶をしました。


「はじめまして、王女さま。お目にかかれてうれしゅうございます。」

ドキマギしながらナターリアも挨拶します。

どおりで陛下に似てると思ったわ。びっくりした…。


「ナターリアどの、私、お兄さまが夢中になってる方だと聞いてお逢いしたくてお母さまにお願いしましたのよ。」

笑ってテオドラ王女は話しかけてきました。


王太后は苦笑しながら、

「そうなのよ、ナターリアどの。突然でごめんなさいね。王女が逢いたいと言うものだから、お茶会にお誘いしましたの。さあ、こちらにおいでなさい。お茶会をはじめましょう。」

そう言うと、王太后はナターリアと王女を庭園に準備されているテーブルに案内しました。




そこには美味しい紅茶と焼き菓子が用意されていました。


少し緊張気味にナターリアが席に着くとおずおずと、

「あの、私が作りましたアップルパイを持ってまいりました。よろしければ、お召し上がり下さいませ。」

言って、お菓子の入った箱を差し出しました。


それを見た王太后は、

シャルロッテどのは持ってきたことがなかったけど気が利くわね。

「まあ、ありがとう。これをナターリアどのが作られたの?」


「はい。実家でよく作っておりましたので…。」

恥ずかしそうにナターリアが答えます。


「陛下が来たらきっと喜びますわね。」

王太后は微笑んで答えます。


「陛下もおいでになられますの?」

ちょっと驚いたナターリアが王太后に尋ねます。


「ええ、来ると言ってたわ。」


「ナターリアどのは、綺麗なだけじゃなくてこんな美味しいものも作れるんですね。すごいです。早速いただきましょうよ、お母さま?」

テオドラ王女は感心しながら、話しかけます。


王太后は仕方ないなと思い、

「じゃあナターリアどの、王女もこう言ってることですし、早速いただいてもいいかしら?」


「もちろんでございます。どうぞお召し上がり下さいませ。」

ナターリアは、

喜んでいただいて良かったわ。

と思い、安心したように答えます。


それを聞いたテオドラ王女は喜んで、

「いただきます。う~ん、美味しいです。」

早速食べはじめました。


その姿を見たナターリアは実家にいる妹のことを思い出しました。

いま、どうしているかしら…。



「…どの、ナターリアどの?」


王太后に話しかけられていることに気づいたナターリアは、ハッとして、

「失礼しました。何でございますか、王太后さま?」


「昨日、私の言ったこと分かって下さったのね。ナターリアどの、ありがとう。」

王太后は遠慮がちに話しかけます。


ナターリアはどう返事していいか困って、

「いえ、その、私、昨日は疲れておりましたもので…。」


その様子を見た王太后は微笑んで、

「やさしい方ね、ナターリアどのは…。一人の妃に寵愛が集中してしまうと後宮の秩序は保てないの。それぞれ後ろ盾もありますからね。理解してくれて有り難いわ。」


ナターリアはそれを聞いて、

「恐れいります。気をつけます。」


「さあ、いただきましょう。せっかく作っていただいたんですからね。」

王太后はそう言うとナターリアの作ったアップルパイを食べはじめました。


そして女三人での楽しいお茶の時間を過ごしました。

王太后も最初のお茶会と違って、王女がいるせいかリラックスしているようでした。


そしてお茶会も終わりに近づいた頃、アレクセイがあわてて飛び込んできました。


「ナターリアはいるのか?」

庭園に飛び込んで来るなり開口一番、アレクセイが叫びました。


その声に驚いたナターリアが思わず振り向いて、

「陛下…。」


その息子の様子を見た王太后は苦笑しながら、

「陛下、ここは私の部屋ですよ。私に挨拶はないんですの?」


母の存在に気づいたアレクセイが気まずそうに、

「あ、すみません。母君、いま来ました。間に合ったようですね。」


「ぎりぎり間に合いましたよ。ナターリアどのがアップルパイを作ってきてくれましたね。」

王太后はそう言うと、アレクセイのために紅茶を用意させました。


アレクセイはナターリア手作りのアップルパイが食べれると聞いて嬉しそうに待っていました。


しかし、時すでに遅し、テオドラ王女が最後の一つを食べてしまった後でした。


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