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女官長の帰り

サブタイトルを分かりやすく名前をつけました。読みやすくなったかと思います。

はぁ…


女官長は困っていました。陛下の使者として、せっかく公爵家まで来たというのに側妃ナターリアを連れて帰ることが出来ないのでした。

ここ応接間で出された公爵夫人手作りのアップルパイも紅茶も味がまるでしないのでした。


それに気づいた公爵夫人も、気の毒に思いましたが、このままナターリアを帰すことも出来ないのでした。


そんな雰囲気の中、カールがやってきました。



「失礼します。公爵さまの手紙をお持ちいたしました。」

カールはそう言って、応接間に入って来ました。


カールの姿に驚いた公爵夫人は、

「まあ、カールどの。どうしてあなたが公爵さまの手紙を…。」


「公爵さまのお見舞いに伺いましたら、こちらに手紙をお持ちするようにとのことでございましたので。」

遠慮がちにカールが公爵夫人に答えます。


「まあ、だんなさまはカールどのに小間使いのようなことをさせて…。ありがとうございます。お手をわずわらせて申し訳ありません。」

手紙を受け取りながら公爵夫人はすまなそうにカールに詫びます。


「いえ、どうぞお気になさいませんように。」

カールは微笑んで公爵夫人に答えます。


そのやり取りを眺めていた女官長は、怪訝そうに、

「あの、公爵夫人、こちらの方はどちらの…?」


「失礼致しました、女官長さま。こちらはフレデリカ男爵家のカールどのです。公爵さまが息子のように思っておられる方ですの。今日もお見舞いに来て下さいましたのよ。」

にこやかに公爵夫人は言って、カールを女官長に紹介します。


それを聞いた女官長は、

「そうでしたか。フレデリカ男爵家の…。初めまして、カールどの。」

と言ってカールに挨拶をします。


「カールどの、こちらは王宮の女官長さまであられます。」

公爵夫人はカールに女官長を紹介します。


カールは少し緊張気味に挨拶を交わします。

「初めまして、女官長さま。カール・フレデリカでございます。お逢い出来て光栄でございます。」


「こちらこそ、公爵さまの息子同様の方にお逢い出来るなんて光栄ですわ。」


「いえ、この身には過ぎたことです。」

遠慮がちにカールは答えます。


公爵夫人はため息をついて、

「カールどの、またそんなことを…。遠慮はいらないと申しているでしょう?」


そう言われてカールは困った顔をしながら、

「申し訳ありません、公爵夫人。なかなか慣れないものですから…。あの、それでは私はこれにて失礼させていただきます。」

そう言ってカールは帰って行きました。




カールが帰った後、女官長は公爵夫人に尋ねました。

「なかなかの好青年のですね、カールどのは。ナターリアさまとも面識がおありなのですか?」


「いい青年でしょう。私も気に入っておりますの。ナターリアさまとも幼い頃、兄弟のように仲良くしておりましたのよ。」

公爵夫人はカールのことを褒められて嬉しいのか、機嫌良く答えます。


「そうでしたか。さて、それでは私も、長く王宮を離れてはいられませんからそろそろ失礼いたします。」

女官長はそう言って立ち上がりました。


公爵夫人はあわてて手紙を女官長に渡して、

「これは長居をおさせ致しまして、申し訳ございません。くれぐれも陛下によしなにお伝え下さいますようお願い申し上げします。」

そう言って帰って行く女官長を見送りました。





そのころ、王宮の執務室では陛下が執務も上の空でそわそわとしながらナターリアの帰りを待ちわびていました。


そして、迎えに行った女官長が帰ってきたと聞くと、うれしそうにここに女官長を連れてくるように指示をしました。



そして、報告に現れた女官長からナターリアを連れて帰れなかったと聞くと、陛下の顔は笑顔からあっという間に悲しいひきつった顔になりました。


「どうしてなんだ…」

今にも泣きそうな顔で陛下が尋ねます。


「申し訳ございません、陛下。ただ、ロプーヒナ公爵さまより陛下にお手紙をことづかって参りました。」

そう言って女官長は公爵からの手紙を陛下に手渡しました。


いつナターリアは戻ってくるのかこうご期待です。


う~、腕が震える。後宮らしい展開が始まるぞ!

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