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迎えの使者

「お久しぶりでございます。公爵さま。お加減はいかがでいらっしゃっいますか?」

迎えの使者が公爵に挨拶をしました。


その姿を見た公爵があっと思いました。

使者は何と女官長でした。


「これは女官長さま…!お久しぶりでございます。まさか女官長さまみずからがおいでとは、恐れ入ります。おかげさまにて少し加減が良いようでございます。」

公爵は驚きながらもお辞儀をして挨拶をしました。


公爵のそばに控えていた公爵夫人も驚いた様子でしたが、

「女官長さま、ようこそおいで下さいました。」

と言って会釈をしました。



あろうことか、自分より身分の高い公爵にさま付けをされた女官長は戸惑いましたが、遠慮がちに受け答えしました。

「それはよろしゅうございました。公爵夫人のご看病やこのたびの側妃さまのお見舞いの賜物でございましょう。」



「どうやらそのようにございます。突然の側妃さまのお見舞いにはいささか驚きましたが…。」

公爵は少し皮肉るように答えました。


「このたびのことは私の不手際にて、申し訳ないことでございます。」

女官長は少し困りながらも、公爵にはごまかしはきかないなと思い、謝罪しました。


「いえ、女官長さまのせいではございますまい。王太后さまのご意向のように伺いました。女官長さまもご苦労の多いことで…。」

女官長を気遣うように公爵が言います。


「恐れ入ります、公爵さま。あの、ところで側妃さまはいずれにおいででございますか?」

言いにくそうに女官長がそばにいないナターリアのことを公爵に尋ねます。


「側妃さまは別室においででございます。女官長さまに迎えに来ていただいたのに申し訳ないが、父として今日のところは側妃さまに王宮にお戻りいただくことは賛成出来かねます。」


俯き加減で話しをしていた女官長がはっと顔を上げて、

「それでは公爵さまには、側妃さまをこのままお手元に置かれるおつもりでございますか…!」


「女官長さま、勘違いされますな。今日のところはと申しましたでしょう。いま困惑しておられるナターリアさまのお気持ちが落ち着くまでのことです。このたびのことは、恐れながら陛下のご寵愛が側妃さまばかりに過ぎたことが原因のように思いますが、いかが思われる?」

はっきりと女官長を顔を見て、きっぱりと公爵は言います。


「それは…、否定は致しませんが、あまり長くこちらにおいでになりますと側妃さまが王宮に戻りにくくなろうかと存じます。」

困惑しながらも女官長も言い返します。


「それはそうだが、このままお戻りいただいては同じことの繰り返しになりましょう。違いますかな?」

女官長を窺うように公爵が尋ねます。


「ごもっともにございます。」

女官長は痛いところをつかれて返す言葉もないようでした。


「女官長さま、私も急なお話しだったとはいえ後宮のことを娘にあまり教えられず送り出したことを悔いております。こちらにおいでの間にそのことを教えたく思います。他の妃への気遣いも出来るように致しますゆえ、二、三日こちらでお預かり致したく存じます。よろしいか?」

公爵は女官長に尋ねる形をとっていますが、有無を言わさぬ口調でした。


「公爵さまのお気持ちはお察し致しますが、今日というわけには参りませんでしょうか?」

女官長は陛下に頼まれてここまで来た手前、手ぶらでは帰れませんので必死で言い募ります。


公爵は女官長の立場も察しながらも、

「申し訳ないが、それは出来かねます。陛下に私から手紙を書きますゆえ、それでお許しをいただきたく存じます。」


「かしこまりました。よろしくお願いします。」

女官長はがっくりと肩を落として答えました。


「エレナ、すまないが女官長さまを応接間にご案内して、お茶をお出ししておくれ。女官長さま、おくつろぎの間に手紙をお書き致しますので。」

公爵はそう言うと、そばで手紙を書き始めました。


公爵夫人は

「では女官長さま、ご案内致しますのでこちらへどうぞ。」

と女官長を促します。


女官長は公爵夫人の案内で部屋を出て、応接間に向かいました。





二人が部屋を出て公爵一人だけになったときでした。

公爵が隣の部屋に向かって声をかけました。


「カール、もうよいぞ。こちらに来なさい。」


隣の部屋から現れたのはナターリアの初恋の人カールでした。


「公爵さま、失礼致します。」


カールは公爵のお見舞いにきていたのですが、ナターリアが突然見舞いに戻ってきたので遠慮して別室に控えていたのでした。


「カール、幼なじみなのだから遠慮することなくナターリアさまにお逢いすればよかったのに…。」


「いえ、公爵さま。私は男爵家の跡継ぎに過ぎない身にございます。側妃さまにお逢いすることなど恐れ多いことでございます。」

遠慮がちにカールが答えます。


公爵はため息をついて、

「そんなに遠慮することはないのに。私はそなたを息子のように思っているのだから…。」


「ありがたきお言葉でございます。しかし、身分違いでございますゆえ…。」

俯き加減でカールは公爵に答えます。


「すまないな、カール。私の本当の息子にしたいと思っていたのだが…。」

申し訳なさそうに公爵がカールに言います。


「いいえ、公爵さま。もう終わったお話しにございます。もともと私には過ぎたお話しでしたから。」顔を上げて、公爵にきっぱりとカールは言います。


「そう遠慮ばかりするな。そなたの悪い癖だぞ。さて、手紙が書き終わった。すまないがカール、これを応接間まで届けてきてくれまいか?」

そう言って公爵はカールに手紙をことづけます。


「私でよろしいのですか?」

ここでもカールは遠慮します。


「カール、いまここにはそなたしかおらぬではないか。頼みを聞いてはくれまいか?」

公爵はカールの手をとって頼みます。


「かしこまりました。では、お届けして参ります。」

仕方なくカールは部屋を出て、応接間に向かいました。

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