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王太后の驚き

ここは後宮でも奥まったところにある王太后の居室で、広い庭園のある場所でございます。

数時間前、強引に側妃ナターリアを実家に帰した後、王太后は陛下はいつやって来るかなと思いながら、今日はシャルロッテをお茶に誘うことなく、一人優雅に午後のお茶を楽しんでおりました。


「王太后さま、陛下のお越しでございます。」

侍女が陛下の訪れを告げます。


王太后は

案外来るのが早いわね。

と思いながら、陛下を迎えました。


「母君!どういうことですか…!」

血相を変えた陛下が女官長とともに王太后の部屋に飛び込んできました。


「ごきげんよう、陛下。それに女官長も。突然、何事でございますか?」

王太后はとぼけて、微笑んで二人を迎えます。


「王太后さま、突然失礼いたします。至急お伺いしたいことがございまして、陛下と参った次第でございます。」

女官長は、

全くこの古狸が…。

と思いながら王太后に挨拶をします。


「至急とはどのようなことですか?ちょうどよいところへ来ましたね。いまお茶を飲んでいたところですから、一緒に飲みながら話しをしましょう。」

さらに王太后はとぼけます。


その様子を見た陛下はイライラして、叫びます。

「母君、とぼけるのもいい加減にして下さい!ナターリアを実家に帰したでしょう。」


「ああ、そのことですか。ナターリアどのは父君のお見舞いに帰られたのですよ。」

突然叫んだ息子の様子に少し驚きながら王太后が答えます。


「帰したのは母君でしょう!私に何の断りもなくっ!」

語気強く陛下が王太后に迫ります。


「王太后さま、恐れながら、後宮におられるお妃が外出されるにはどのような用件であろうとも事前に私を通して陛下の許可が必要でございます。」

穏やかに女官長は陛下に続いて王太后に迫ります。


「何ですか、二人とも…。ただ、私は、父が病気のナターリアどのを気の毒に思って見舞いに実家に帰して上げただけではありませんか!」

わなわなとふるえながら王太后は言い返します。


「母君、本当にそれだけですか…。」

疑わしそうに陛下が王太后に尋ねます。


「それだけとは、この母の言うことが信じられぬと申すのか…!」

王太后は痛いところをつかれて、動揺しながらも言い返します。


「それならばそれでよろしいですが、側妃が後宮を出るにはそれなりの手続きが必要でしょう。長く後宮にお暮らしの母君ならおわかりのはず。」

冷ややかに陛下が王太后を諭します。


王太后はこれまで何でも言うことを聞いてくれていた息子にこんなことを言われるとは思わなかったので、呆然としてしまいました。


「アレクセイ、どうしてなのです…」

すっかり意気消沈した表情で王太后は陛下に尋ねます。


「どうしてとは?」ショックを受けている王太后に少し言い過ぎたかなと思いながら陛下が尋ねます。


「どうして母にそのようなことを言うのですか…。父君が早く亡くなってから頑張ってそなたを育ててきたというのに…。」

震える声で王太后は陛下に尋ねます。


「そのことには感謝しておりますが、このことはまた別のことにございます。」


「別だと申すのか…」


「そうです。今回、母君は国王である私が許可を出すべきものを勝手にしておしまいになったのです。後宮を仕切るはずの女官長の立場もありますまい。」

夫を早くに亡くして頑張ってきた母を少し哀れに思いながら言わねばならないことだからと勇気を振り絞って陛下は言います。


王太后は消え入るような声で、

「母にどうしろと申すのかじゃ。そなたのためによかれと思ってしてきたと言うのに…。」


その様子を見た陛下が母のことがかわいそうになり、

「母君、今回のことは見逃しますが、次はこのようなことのないようにして下さい。」


そう言うと陛下は女官長に向かって、

「では女官長、早速にもロプーヒナ公爵家にナターリアを迎える使者を手配してくれ。」


「かしこまりました、陛下。」

王太后を気遣いながら女官長は答えます。


「それから母君、女官長の顔も潰さぬように今後はご配慮下さい。今日のところはこれで失礼いたします。では、女官長、参ろうか。」

陛下は王太后に挨拶をした後、女官長ととに帰りを促します。


呆然とする王太后に女官長は何と言っていいかわかりませんでしたが、言わねばならないことだからと思い、王太后に告げました。

「王太后さま、今後はよろしくお願いいたします。御前、失礼いたします。」


こうして二人は呆然と立ちつくす王太后を置いて去って行きました。


残された王太后は、なぜ可愛がってきた息子があんなに変わってしまったのか理解することが出来ませんでした。

ただ、変わってしまったのがナターリアのせいだと思うしかなかったのです。

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