陛下の訪れ
陛下とナターリアの後宮での初対面です。
昼下がりの後宮の一室、ナターリアの部屋に陛下が訪れていました。
「陛下、ようこそおいで下さいました。」
ナターリアは初めての陛下の訪問に少し緊張気味に迎えました。
陛下は少し微笑んで
「ナターリアどの、後宮に入られたとき以来ですね。これを…」
陛下が差し出したのは綺麗な菜の花の花束でした。
それを見たナターリアは少し緊張が緩み、笑顔で受け取り、
「まあ、綺麗な菜の花…。陛下、これを私に下さいますの?」
陛下は少し頬を赤くして、
「そなたのために持ってきたのだ。受け取ってくれ。」
ナターリアは嬉しくなって満面の笑顔でお礼を言いました。
「ありがとうございます、陛下。菜の花は私の大好きなお花でございます。お礼申しあげます。恐れながら陛下、お茶の用意が出来ておりますからこちらへ…」
陛下は席に着いたあと、少し照れながら、
「そんなに喜んでくれるとは思わなかった。もしかしたら、私のことを思い出してくれるかなと…」
ナターリアは何のことか分からずに、
「あの、思い出すとは…。私、以前に陛下にお目にかかったことがございましたでしょうか?」
「わからないですか?私はあの菜の花畑で出逢ったアレクセイですよ。」
陛下はニッコリ笑って答えます。
ナターリアはあっという顔をして、
「まあ!あのとき泣いていたアレクセイが陛下なんですの…」
陛下はいたずらっ子のような顔をして、
「泣いていたとはご挨拶だなぁ、ナターリアどの」
ナターリアは急に恥ずかしそうに、
「あ、あの、その節は知らぬこととは申せ、失礼の数々お許し下さいませ。誠に申し訳ございません。」
陛下はクックッと笑いながら、
「いいよ。気にしてないから。余いやナターリアどのの前では僕でいいか。僕も言ってなかったしね。」
ナターリアは安心して、
「ありがとうございます。陛下の広いお心に感謝いたしますわ。」
「こうしてナターリアどのに逢えてうれしいよ。もう後宮は慣れたかい?ここは窮屈だろう?」
ゆったり笑って陛下が話しかけます。
「はい。いいえ、窮屈だなんて…。少しずつ慣れて来ております。」
戸惑いがちにナターリアが答えます。
「本当のことだよ。だから時々、逃げ出したくなるんだ。おっと、これは母君には内緒だよ。監視が厳しくなるからね。」
いたずらを見つけられたような少年のような笑顔で陛下が言います。
「はい、陛下。王太后さまには内緒でございますね。」
笑顔でナターリアが答えます。
「ありがとう。ナターリアどのなら、そう言ってくれると思ったよ。だからね、逃げ出したくなったとき、ここに来てもいいかな?ここなら安心出来そうだ。ね?」
陛下はいたずらっぽい表情でウインクしながらナターリアに言います。
「もちろんでございますわ。いつでもおいで下さいませ。私も安心しましたの。
陛下がどのような方か分からずに不安になっておりましたの。」
「僕の名前でわからなかったの?」
陛下がおどけて話しかけます。
「急なお話しでしたので…」
恥ずかしそうにナターリアが答えます。
「まあ、いいや。これから仲良くしていこうよ。」
そう言って陛下がナターリアの手を握ってきました。
ナターリアは少し顔を赤くしながら、
「はい、陛下。私も仲良くしていけそうな気がします。」
それから二人は女官長が迎えに来るまで、思い出話などで楽しい時間を過ごしました。
他の方に比べて話しが短くてすみません。
頑張ってはいるのですが…。
素人が書くものなので多少のことはお許しを。