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第5話 明日への燈

小さな少女が背中の剣を静かに収めた瞬間、

魔物は糸が切れたように崩れ落ちた。


「また、借金がぁぁ!!」


ルアが地面に膝をつき、空を仰いで嘆く。

すぐ横では吹き飛ばされたアッシュとマリーがダウンし、

ソフィアが慌てて治療を施していた。


一向は王都を出て、再びウェトス半島へ向かって歩き出した。


そして、道中の魔物との遭遇は初陣と同じ結果。


勝利はした。

だが、ルアの財布は確実に敗北していた。


日が落ち、次の村までは距離がある。

この日は道の脇の草原で野宿をすることになった。


火のはぜる音が、静かな森にこだまする。


ルアは、バルトからもらった言葉で気持ちを立て直してはいたが、さすがに現状は放置できない。


ここで一度、仲間たちの実力を整理する必要がある

そう判断し、ひとりずつ話を聞き始めた。


「ソフィアの回復魔法ってどれくらいまで回復するの?」


ソフィアは申し訳なさそうに目を伏せた。


「ごめんなさい、やっぱり役に立たないですよね」


「いや、そういうことじゃない。

このパーティの回復の要なんだから、把握しときたいんだ」


少し驚いた顔をしたソフィアは、控えめに説明を始める。


「え、えっと…回復力は低いですけど、

その分燃費はいいと思ってます。

時間は結構かかりますし、受けたダメージにもよりますが、

大体は全回復できると思います」


(戦闘中に時間をかけて回復してる暇なんてない。

でも、時間さえかければ大ダメージも治せる…)


「ありがとう、ソフィア。

時間はかかるけど、どんなダメージも全回復。

すごいじゃん、安心して突撃できるよ!」


「す、すごいだなんて、そんな…。

で、でも危ないことはやめて下さいね!

死んだら治せませんから!」


褒められ慣れていないのか、ソフィアは嬉しそうにしながらも落ち着かない様子だ。



「アッシュは…ガッツがあるよな!

やられると分かってて、普通あんなに突っ込めないぜ?」


「でもよぉ、やっぱり負けると辛いじゃん。

俺だって勝ちてぇよ…」


(敵を恐れず突っ込める勇気。

そして俺たちはアッシュがやられることは分かってる。

つまり、分かってるからこそ使える…)


「アッシュ、お前の負けが

俺たちの勝ちに繋がるかもしれない」


「どういうことだ?」


「俺はお前が敵に突っ込んでってやられるのを知ってる。

けど、それが分かってるから冷静に見ていられる。

特に敵の動きをな。

お前がやられてる隙を誰かが突く。

要するに囮だ。アッシュ、これはお前にしかできない!」


「俺にしかできない、俺たちの勝利…」


アッシュの目に、ほんの少し火が灯る。


「でもアッシュ、突っ込むなら勝つつもりで突っ込めよ?

なんならそのまま勝ってくれ」


「お、おう!

なんかやる気出てきたぜぇ!!」


アッシュは負け慣れしている。

だがその負けが誰かの勝ちに繋がると知った瞬間、

胸の奥で何かが変わった。



「マリー、聞きたかったんだけどさ、お前魔導士だろ?

普通は遠くから魔法で攻撃するよな?

何で敵に特攻するんだよ?」


「それ、聴いちゃう?」


「聴いちゃう」


マリーは肩を竦めて笑った。


「しゃあないなぁ。

あたし、魔法は独学なんだよねぇ。

だから、魔力のコントロールっていうの?

そんなんが苦手なわけ」


「要するに?」


「なんかさぁ、出した魔法が飛んでかないのよ、

ウケるっしょ?」


「そりゃウケるわ。

だから敵に特攻する訳か。

で、威力は?攻撃魔法専門?」


「まあ、攻撃魔法の威力だったら

普通の魔導士くらいはあるんじゃない?

攻撃魔法以外ならちょっとしたバリアを張れるくらい?」


(攻撃魔法の射程はゼロ。

でも、威力は普通の魔導士並み……

それなら俺の攻撃よりよほどダメージは期待できる)


「それを聴いて安心した。

パーティの主砲だな。頼りにしてるぜ」


「当たらなかったら意味ないけどねー」


そう口では言うが、マリーは頬を指でいじりながら照れていた。



最後にルアはユノへ視線を向けた。


「ユノ、何でお前はそんなに強いんだ?」


「…剣術、『おじいちゃん』に教わった」


「へー、ずいぶん強い爺ちゃんなんだな!

あと、何でそんなに金が必要なんだ?」


「…おじいちゃん、病気」


「なるほどな。薬とか、色々必要だもんな。

もしかして、パーティを潰したから追放されたってのは、

金を払ってもらえなかったからか?」


「…うん、3つ」


「え、3つもパーティ潰したのか?」


「…うん」


「…でもさ、そんなに強いんだし

一人でギルドの依頼で稼ぐとかもできたんじゃないのか?

ソロの冒険者なんていくらでもいるだろ?」


「…門前払い、子供には無理って」


「まあ、そりゃそうか。

俺だって、こんなちっちゃい子が一人で来て、

"魔物討伐依頼を受けたい"

なんて言われても許可しないと思う」


(でも、実際にあの強さを見た後なら、

パーティを潰したってのも嘘じゃないと分かる。

ただ……扱いは難しい。財布が持たない。

切り札中の切り札だ。)


「爺ちゃん、良くなるといいな」


「…うん」


ユノは表情こそ変わらないが、おじいちゃんと呼ばれる人物の身を案じてもらえたことが嬉しかったのか、その声はわずかに温かかった。



火が小さく揺れる。


ルアはみんなを見渡し、言った。


「明日は野宿しなくて済むように、

この先のベレットって村を目指す。

みんな、しっかり休んどけよー」


一人、またひとりと寝息を立て始める。


ルアはひとり焚き火の前で、今の会話を一つずつ頭の中で整理していった。

そして、自分たちなりの戦い方を模索する。


火の粉が夜空へ昇っていく。


深い森の暗闇の中、焚き火だけが赤い光で彼らの未来を照らしていた。

reunionを読んでいただきありがとうございます。

楽しんでいただけたなら、続きも読んでいただけると嬉しいです。

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