第3話 初陣
ルアたちはウェトス半島を目指し、王都の東門を出発した。
「ああ、ワクワクするなぁ。
この先、俺たちを何が待ち受けてるんだろなぁ」
朝の空気は澄んでいて、胸の奥が自然と高揚してくる。
「よし、いっちょ掛け声やっとくか!
いいか、みんな。俺たちは、絶対魔王を倒すぞー!」
「おー!」「はい!」「しゃあぁ!」「うぇ〜い」「…」
バラバラの掛け声が青空に消えていく。
期待と不安が半々。
だが、いまのルアには希望の方が大きかった。
そんな遠足気分でしばらく進むと、
小さな森の入口に差し掛かる。
一向は足早に森を抜けようしていたそのときだった。
ガサガサッ
茂みが大きく揺れ、三体の魔物が姿を現した。
手前に弱そうなスライムが二体。
その後ろに、棍棒を構えた少し強そうな獣人型の魔物。
「魔物だな…。
よし、初陣だ!
まずは俺に任せろ!」
気合十分に剣を抜いたルアが、スライムへ距離を一気に詰める。
「おりゃ!」
斬撃は動きの遅いスライムには的確で、二体はあっさりと崩れ落ちた。
「流石にスライムぐらいなら余裕だな。
次はあいつか…」
ルアと獣人型は睨み合う。
動いたのはルアが先だった。
連続で斬撃を繰り出すが、それらはすべて棍棒で弾かれる。
獣人型の反撃。
あわてて後方へ跳び退き、なんとか避けた。
「あぶねぇ…」
じわじわ後退しながらパーティのもとへ戻る。
「よし、行け、アッシュ!」
「しゃあ! 行くぜー!!
うおぉぉぉ!!」
アッシュが熱血丸出しで飛び出した。
だが獣人型の重い棍棒の攻撃を受け、
弾かれるようにこちらへ飛んでくる。
「ぐはっ!」
「大丈夫ですか!?
アッシュさん、今助けます!」
ソフィアが駆け寄り、回復魔法をかける……が。
「ありがとう…ソフィア…助かるぜ。
…でも、痛みが引かないんだけど…?」
「す、すみません!
これ、全力なんです!」
アッシュのダメージはほとんど回復していなかった。
「つ、次、マリー!
お前の攻撃魔法をかましてやれ!」
「おっけー」
そう返事をして、なぜか敵に向かって猛ダッシュするマリー。
「お、おい、マリー!?
何やってんだ、お前魔導士だろ!?
なんで敵に突っ込んで行くんだよ!?」
マリーは走りながら魔力を集中させている……が、
獣人型の棍棒が先に入り、吹き飛ばされて戻ってくる。
「ま、マジやばいんですけど…」
「マリーさん、今治療します!」
ソフィアはダメージの残るアッシュの回復を中断して
マリーの治療へ。
「サンキュー助かるわー。
でも、時間かかりそうじゃない?これ」
「もう一度言います、これ、全力です!」
「何やってんだよお前らぁ!?
こっちにはもう…」
その瞬間だった。
風が走ったような気配とともに、小さな影がルアの横をすり抜ける。
ユノだ。
彼女は一気に間合いを詰め、一太刀。
ルアが振り返るころには獣人型が崩れ落ちていた。
「す、すげぇ…」
呆然とする一同。
そしてユノはゆっくりとルアの前に立ち、
掌を上に向けて突き出した。
「お、ハイタッチか?」
パシッと合わせようとしたルアの手は、空を切る。
ユノはもう一度、掌を前へ。
「…10万」
「…10万って、10万グラン?
もしかして、お金請求してる?」
ユノはこくりと頷く。
「俺がはらうの?」
こくり。
「いやいやいや、
なんでここで金銭のやり取りが発生するんだよ!?
スッ——
次の瞬間、ルアの喉元にユノの剣がピタリと添えられた。
「…10万」
「つ、つけで…」
こうして、この寄せ集めパーティの初陣は勝利を収めた。
しかし、ルアの思惑とは全く違う形の勝利であった。
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