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第23話 木漏れ日の凱旋

王都グランベイル。

目的の依頼を達成した一行は、始まりの地へと帰ってきていた。


相変わらず賑やかな王都の通り。

幾度も難関を切り抜けてきた今となっては、その街並みすらどこか懐かしく感じられる。


ギルドへ向かい、依頼達成の報告を済ませる。


「依頼達成、お疲れ様でした」


「次の依頼は?」


「そのことですが、まだ準備ができていないので、

正式な任務依頼はまだ開始していません」


「どういうこと?」


「南の地、タキエという地方には、

すでに魔王軍の拠点が出来てしまっています。

なので、そこへ総攻撃を仕掛けるためら

王国軍は準備を進めています」


「結構大事になりそうだな」


「はい。大きな戦いになることが予想されます。

ですので、国王軍の準備が整い次第、

冒険者を募り一斉に拠点を制圧する作戦です」


話を聞き終え、一行はギルドを後にした。


「おお、ルアじゃねぇか!」


懐かしい声に呼び止められる。

振り返ると、そこにいたのはバルトだった。


「バルト、久しぶり!」


「久しぶりって、そんな経ってないだろ?

まあ、毎日一緒にいたからそうも感じるか」


バルトはルアの背後に立つ仲間たちを見て、表情を改める。


「紹介が遅れた、俺は王国騎士団で部隊長やってるバルトだ。

こいつの…まあ、父親みたいなもんだ。

いつも、こいつがお世話になってます」


そう言って、深々と頭を下げた。


仲間たちも慌てて同じように頭を下げる。


「バルトもタキエに行くのか?」


「いや、俺の部隊は王都の警備だ。

こっちを守る戦力も残しとかないといけないからな。

足りない分はお前ら冒険者様の力を借りるってわけだ」


「お、認めてくれるの?

俺が冒険者だって」


「まあ、思ってたよりは頑張れてるみたいだな」


「みんなのおかげだよ」


ルアは少し誇らしげに言う。

仲間たちの表情も、どこか満更ではなさそうだった。


「いい仲間ができたな」


「そうだ、ちゃんと紹介を含めて飯でもいかないか?」


「いや、悪いが俺は仕事があってな」


その言葉に、バルトの表情がわずかに曇る。


「どうかしたのか?」


「…実はな、ラドックが最近活動を始めてるらしい」


「…あいつが!?」


「ああ、俺は今そいつの捜査もしている。

言うか迷ったが…

やっぱりお前にはちゃんと言っといた方がいいと思ってな」


「だったら俺も一緒に!」


「待て待て、お前には別の役割があるだろうが」


ルアは悔しさを噛み締めるように俯く。

仲間たちも、状況が飲み込めず言葉を失っていた。


バルトは小さくため息をつく。


「とりあえず、今はやつのアジトとか探ってる段階だ。

準備が整ったらお前にも手伝ってもらうかもな」


「絶対だぞ!」


「分かった分かった、じゃあ俺は仕事に戻るわ」


去り際、バルトはもう一度仲間たちに視線を向ける。


「これからも、こいつをよろしく頼む」


そう言い残し、彼は人混みの中へ消えていった。


「ルアさん…」


険しい表情を浮かべたままのルアを、ソフィアが気遣う。

他の仲間たちも同じ思いだった。


ルアは一度、大きく息を吐く。


「…悪い、みんなにも説明しないとな。

ちょっと飯にしよっか」


酒場。

周囲の喧騒とは対照的に、彼らのテーブルにはどこか気まずい沈黙が流れていた。


「そういえば、俺のことって全然話してなかったよな」


「そうだぜ、俺らのことばっかり聞いといてよ」


「そうだそうだー」


マリーが酒を片手に便乗する。


「…マリーの話もあんまり聴いてないけど?」


「あれ、そうだっけ?

ま、今はあんたの話だしぃ」


軽口に救われつつ、ルアは語り始めた。


「俺、昔盗賊団に入ってたんだ」


「盗賊!?」


一同が息を呑む。

普段の彼からは想像しにくい過去だった。


「盗賊に拾われて育てられたって言うべきかな。

物心ついた時はあいつらと生活してた。

だから、親の顔も知らないし、

どこで捨てられたかも知らない。

一つ言っとくけど、本当にちっさい頃だったし、

俺自身は人を傷つけるようなことはしてないぞ」


「…ほんと?」


ユノがじっと疑いの目を向ける。


「いや、その…ちょっと泥棒はした…」


「仕方ないかもしれませんね。

小さな子供が生きるためですから」


「ソフィア…」


「もうダメですよ?」


「いや、しないって」


ルアは苦笑し、話を続けた。


「で、その盗賊団のリーダーがラドックって奴なんだけど。

ある日突然そいつが仲間全員を裏切ったんだ。

今思えば、最初からそのつもりだったのかもしれない。

俺以外は全員死んだ」


「よく生きてたな…」


ルアは天井を見上げる。


「相棒って言えるやつがいてな。

フィンって言うんだけど、

俺と同じ境遇で歳は俺よりちょっと上くらいだった。

そいつに庇われて助かった」


「ひどい話ね」


「で、その後バルトに拾われて今に至るってわけだ」


「じゃあそのラドックって野郎の居所が分かったら、

復讐でもしに行くのかよ?」


「さっきは久しぶりにラドックの名前が出て、

冷静になれなかったけど、今は違う。

俺にとって大事なのはこの旅だ。

まあ、この旅が終わってもバルトがもたもたやってたら、

手伝ってやってもいいかなぁ、くらいに思っとくよ」


軽く言ってみせたものの、空気の重さは完全には消えなかった。


「なんか、ごめん。

変な空気になっちゃったな」


「いえ、ちゃんと話が聞けて良かったです」


「そうだぜ、リーダーさんよ?」


「そうだそうだぁー!」


「…酔っ払い」


「よし、この話は終わり!

明日からも頑張って行こうぜ!」


「つっても、しばらくやることねぇんじゃねぇの?」


「確かにそうだな…」


「あの…ユノちゃんのおじいさんの、

お見舞いに行くのはどうでしょうか?」


「…行きたい」


一同に異論はなかった。



食事を終え、酒場を出る。

王都の夜風が、少しだけ火照った身体を冷ましてくれた。


ルアは歩きながら、ふと空を見上げる。


次の戦い。

そして過去から伸びてくる因縁。


まだ形になっていない不安が、胸の奥で静かに燻っていた。


reunionを読んでいただきありがとうございます。

楽しんでいただけたなら、続きも読んでいただけると嬉しいです。

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