第22話 霧裂く爆風
作戦決行当日。
「みんな、準備はいいか?」
確認に、全員が無言で頷いた。
「よし、じゃあアッシュ。
頼んだぞ!」
「任せろ!」
アッシュは立ち上がり、勢いよく魔物たちの前へ姿を現す。
「おいお前ら!
掛かってこいやー!」
その声に反応し、魔物たちが一斉に振り向いた。
ざわめきが走り、次々と戦闘体勢へ移行する。
だが、その瞬間だった。
魔物の群れを押し分けるように、黒い鎧を纏った存在が、ゆっくりと前へ出てくる。
「構うな、お前たちは作業を続けろ」
低く響く声。
背中の槍に手をかけ、アッシュを真っ直ぐに見据える。
「なんか、やばい展開じゃない?」
「予定ではアッシュさんが魔物を引き連れて
逃げ回る手はずでしたが…」
次の瞬間、ボスは地を蹴った。
一直線に、アッシュへ。
「ちょ、ちょっと待て!
話が違うじゃねぇかよぉー!?」
槍が貫こうとした刹那、鋭い金属音が響いた。
「…」
ユノだった。
振り下ろされた槍を、剣で弾き返している。
「ほう…」
ボスは数歩、距離を取る。
「ユノ、助かったぜ!
それじゃあ俺はこれで!」
そう言い残し、アッシュは即座に踵を返し走り出す。
「お前達はあの男を追え!
俺はこの娘の相手をする」
命令に従い、魔物の群れは一斉にアッシュを追って森の奥へ消えていった。
「俺はギムド。
魔王様よりこの拠点の指揮を任されている。
娘、見た目の割に中々やるようだな。
だが、俺に勝てるかな?」
「…適当に相手しとけって。
…それだけ」
「ふん、舐められたものだ」
ギムドの槍が唸りを上げる。
ユノはそれを淡々と受け流していく。
一方その頃、残る三人は転送装置へと静かに近づいていた。
「ボスがいきなり出てくるのは予想外だったけど、
順番が変わっただけだ。予定通り行こう!」
結界を間近で観察する。
「やっぱり闇の魔力って感じの結界ね」
「では、私が中和ですね」
ソフィアは聖なる魔力を込め、結界に手を伸ばす。
相反する力がぶつかり合い、光が弾ける。
薄くもやがかった壁に、小さな穴が穿たれた。
「行けそうか?」
「人が通れるぐらいとなると、
少し時間がかかるかもしれません」
ルアは、ユノの戦いへ一瞬視線を向けた。
「どうした娘?
生意気を言った割に防御で手一杯か?」
ギムドの猛攻。
ユノは攻めることなく、ただ凌ぎ続けている。
一見、押されているように見える。
だが、ルアの目には違って映っていた。
「あっちは大丈夫そうだな。
あとはアッシュが無事なら…」
その頃、アッシュは森の中を駆け続けていた。
木々を縫い、速度を落とさず、距離を保つ。
「おーい、お前ら遅せぇなー!!
そんなんじゃボスに怒られちまうぜぇー!?」
離れすぎれば諦められる。
近づきすぎれば捕まる。
絶妙な距離を保ちながら、挑発を交え、走る。
魔物達を仲間の元に戻らせないように。
ソフィアの前で、結界の穴は人一人が通れそうな大きさまで広がっていた。
「マリー、そろそろ頼む」
「おっけー」
マリーは魔力式爆弾を両手で抱え、魔力を込め始める。
爆弾のメーターが、ゆっくりと上昇していく。
その最中、ギムドの中に違和感が芽生えていた。
(この娘、確かに手練れではある。
しかし、さっきから攻めてこない)
一度距離を取る。
(それに、あの逃げた男は雑魚。
目的はおそらくここの破壊。
だが、たった2人で…?)
視線を転送装置へ向ける。
気付けば装置までの距離がかなり離されていた。
そこには、ルア達の姿があった。
「やはり他に仲間がいたか!」
少女の役割は自分を転送装置から引き離し足止めすること。
そう理解したギムドは、装置へ向かおうとする。
だが——
「…行かせない」
一瞬で空気が変わる。
先ほどは感じられなかった殺気。
ギムドの足が止まった。
転送装置が遥か遠くに感じる。
「ルアさん、これぐらいでどうですか?」
「十分だ。
ソフィアはしばらくそれを維持しといてくれ!」
「こっちも完了!」
準備は整った。
ルアは爆弾を受け取り、結界の内側へ踏み込む。
「吹っ飛べぇ!!」
ルアは爆弾を投げるとすぐに引き返し、
マリーを抱えてソフィアと共に走る。
放たれた爆弾は、放物線を描き——
硬い台座に触れた。
閃光。
爆音。
衝撃が、大地を揺らす。
その音を、遠くでアッシュが聞く。
「お、そろそろか!?」
方向を変え、魔物を引き連れルア達の元へ向かう。
爆煙が晴れると、そこには抉れた地面だけが残っていた。
転送装置の姿は跡形もない。
「やった…みたいだな」
呆然とするギムド。
だが、怒りがすぐにそれを塗り潰す。
「貴様らぁぁ!!」
槍を振りかざしユノを狙う。
確かに目の前の少女に狙いを定めていたはず。
しかし、そこに少女の姿はなく、
視界が歪んでいくことに遅れて気がつく。
一閃。
ユノの剣が、黒い鎧ごとギムドを切り裂いた。
「…10万グラン」
ちょうどアッシュが魔物を引き連れ戻ってきた。
魔物たちは目の前の光景に立ち尽くす。
ボスの死と、消え去った拠点。
戦意は霧散し、彼らは散り散りに逃げていった。
ウェトス半島拠点、破壊完了。
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