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第21話 霧に伸びる導火線

薬屋。

独特の匂いが立ちこめるその空間に、

ソフィアとユノは並んでいた。

二人はゲイルのための薬を選んでいるところだった。


「ゲイルさんは、何の病気なの?」


「…分からない…咳してる」


「じゃあ、咳止めが必要かな」


「…あと、腰痛」


「んー、病気とは関係ないかもしれないけど、

痛み止めも買っとこっか」


パーティの中で医療知識があるのはソフィアだ。

ユノから聞き取った症状をもとに、咳止めや痛み止め、滋養に効く薬草などを選び、次々と籠に入れていく。


一方その頃、ルア、アッシュ、マリーは別行動で食料の調達をしていた。

干し肉をはじめとした保存の利く食料を大量に購入し、

ゲイルの元へ送る準備を進める。


幸い、ベリアスの街は規模が大きく、流通も発達している。

輸送業者に依頼すれば、遠方への物資輸送も問題なく行える。


ルアたちは、ゲイルが暮らしているというハベル山宛てに、

薬と食料の輸送を手配した。


ユノの手元には、これまでの依頼報酬とルアからの借金返済分があり、かなりの額になっていたが、

高級な薬や食料、そして輸送費を含めると半分以上の費用となった。


「これでしばらくは安心だな」


「…うん」


「よし、じゃあ行くか!」


一行は次の目的地――ウェトス半島を目指して出発した。

ベリアスからの距離は、半日もかからない。


「依頼は魔物が拠点を作ろうとしてるのを阻止する。

 でしたよね?」


「どんな感じだろうな?

やっぱ魔物もうじゃうじゃいるんじゃねぇか?」


「普通に五人で何とかなるもんなの?」


「…」


それぞれが思い思いに任務内容を想像しながら進む。


やがて、一行は小高い丘に到着した。

そこからはウェトス半島を一望でき、奥には海が広がっている。


半島自体はそれほど大きくはないが、一面が木々に覆われ、深い森を形成していた。

上から見ただけでは、拠点の場所は分からない。


「おい、あれ!」


アッシュが指差した先を見ると、十数匹の魔物が列を成し、

森の中へと入っていくところだった。


「色んな種族が団体行動してるってことは、

そういうことじゃない?」


「行ってみるか」


気配を抑えながら後を追い、森へと足を踏み入れる。


しばらく進んだ先で、視界が開けた。

高い木々に囲まれた空間の中央には、木の柵で囲われた広い作業場があり、魔物たちが忙しなく動いている。


そして、その中央には石造りの祭壇のようなものが

設置されていた。

祭壇は四方を黒い靄のような、半透明の壁に囲まれている。


「結界ですね」


「ってことは、あの祭壇はかなり重要な感じ?」


様子をうかがっていると、祭壇の中心が怪しく光り、

やがてその光が収まる。

次の瞬間、数体の魔物が姿を現した。


「なるほどね。多分アレ、転送装置的なやつね」


「あれで魔物を送り込んでるってわけか。

なら、あれを壊せば拠点として機能しなくなるな……」


「…あれ」


ユノが指差した先をみる。

そこには全身を黒い鎧で覆い、

背中に大きな槍を背負った魔物の姿があった。


他の魔物に指示を出しており、

明らかに別格の存在感を放っている。


「アイツがここのボスか……強そうだな」


「どうしますか、ルアさん?

敵の数も多いし、転送装置には結界。

それにボスも強そうです」


「転送装置を壊せればいいが……道具が必要だな。

一旦ベリアスに戻るしかないか」


一行は引き返し、ベリアスの道具屋を訪れた。


「あの装置を壊すとなると……爆弾か?」


「でもよぉ、あれ結構デカかったぞ? 

相当な威力が要るんじゃねぇか?」


「この店で一番強力そうなのは……」


全員の視線が、一つの爆弾に集まった。

人の頭より少し大きなそれは、

ずっしりとした存在感を放っている。


ルアが持ち上げてみる。


「……結構重いな」


「でも、一個じゃ不安じゃない?

それをあと2、3個複ってなると

持ち運びも無理っぼくない?」


「あっ、あれなんかどうです?」


ソフィアが指したのは、拳ほどの大きさの品物だった。


「魔力式爆弾?」


値札には、10万グランと書かれている。


「…高い」


近くにいた店員に声をかける。


「すみません、これの使い方と威力を教えてもらえますか?」


「魔力式爆弾ですね。

魔力を込めてから衝撃を与えると爆発する仕組みです。

最大まで魔力を込めれば、

あの一番大きい爆弾の五つ分くらいの威力は出ますよ」


「そんなに!?」


「魔力を増幅する構造になってまして。

ただし、魔力はすぐ抜けてしまうので、

魔力を込めたらすぐ使わないといけません」


「へぇ〜」


「正直、高い割に扱いは難しいので、

あまりおすすめはしませんが」


マリーがおもむろに爆弾に触れる。


「ちょっと試してみていい?」


「や、やめて下さい!

買ってから、人のいない場所でお願いします!」


「テヘッ、怒られちゃった」


「当たり前だ」


結局、他に有効そうな手段もなく、

魔力式爆弾を購入することになった。


街の外、人気のない荒野に移動する。


「絶対落とすなよー!」


「なんでそんな離れてんのよー!」


「爆発したら危ねぇだろー!」


「じゃあ、あたしはどうなんのさー!」


「マリーさーん! 気をつけて下さいねー!」


「気をつけようがなくなーい!?」


「…物騒」


魔力式爆弾に魔力を込めるテスト。

パーティの中で魔力を扱えるのはソフィアとマリーだけ。

そして魔力量はマリーの方が上。

必然的に役割は決定していた。


距離を取る仲間たち。


「マジ薄情…」


マリーは不満を漏らしながらも爆弾に魔力を込め始める。


爆弾には魔力量を示すメーターがあり、それが徐々に上昇していった。


約一分後、メーターは最大に達する。


その瞬間、マリーは爆弾を両手で抱えたまま、

ゆっくりと地面に座り込んだ。


「マリー、どうした!」


駆け寄るルアたち。


「これ……めちゃしんどい……

多分、一日分の魔力全部持ってかれた……」


メーターは、ゆっくりと下降していく。

店員の言ったように魔力はすぐに抜けていくようだ。


「このメーターが満タンでいられたの、三十秒くらいかも」


「……確かに、扱いづらいな。

でも、最大威力は出せそうだな。

とりあえず街に戻ろう。作戦会議だ」


必要な物はひとまず揃った。

だが、それらはまだバラバラでまとまりがない。

導火線の先はどこへ繋がるのか。それはまだ見えない。

reunionを読んでいただきありがとうございます。

楽しんでいただけたなら、続きも読んでいただけると嬉しいです。

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