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第14話 飾檻の中のエチュード

一行は次の目的地へ向け、ミルドの町を出ようとしていた。


町の出口が見え始めたその時、ある光景を目撃してしまう。


「へへへ、金を置いてきな!」

「下手な真似したらどうなるか分かってるよな?

俺たちは盗賊だぜ?」


二人組の男が、ナイフをちらつかせながら誰かを脅しているようだ。


「なんだ貴様らは!?」

「お父さん、怖い!」


脅されているのは中年の男性と若い娘。

どうやら親娘のようだ。


当然見過ごせるわけもなく、割って入る一同。


「やめろ!俺たちが相手だ!」


その声に驚く二人組。


「……え、誰?」

「おい、どうなってんだよ!?」


明らかに動揺している。

更に先ほどまでの威勢も消えている。


「え、いや……今その人達を襲おうとしてただろ?」


ルア自身も、相手の反応に拍子抜けしてしまう。


「こ、これは……その……」

「くそ、撤退だ撤退!」


何故か二人組はそそくさと去っていく。


「何だったんだ、あいつら?」


呆然とする一同の前に、中年の男性が深く頭を下げてきた。


「助けてくださり、ありがとうございました!

あなた方は……」


「えっと……冒険者だけど」


「そうでしたか!

私はこの町で商人をやっているポールと申します。

こちらは娘のフルラです」


フルラも丁寧にお辞儀をする。


「ぜひお礼をさせていただきたい!」


「だ、大丈夫。何もしてもらわなくても!

あいつら勝手にどっか行っちゃったし、

本当に何もしてないし……」


「きっと、あなた方のオーラに圧倒されたのでしょう。

私は急いで家に帰って準備をしておきます。

フルラ、その人達を案内して差し上げなさい」


そう言い残し、ポールは足早に去っていった。


「あの……本当に大丈夫だし、

お父さんにはもう旅に出たとか、

適当に伝えといてもらえないかな?」


ルアがそう伝えた、その時だった。


「何てことしてくれたんですかー!」


声と共に、青年がこちらへ駆け寄ってくる。

どういう訳か。その背後には先ほどフルラ達を脅していた二人組の姿もあった。


「え、どういうこと?」


「ダン……」


フルラが気まずそうに呟く。


「ごめんなさい、説明しますね……」


困惑する一同をよそに、フルラはそう告げ、酒場へと場所を移すことになった。



「私たち、恋人同士なんです。

結婚も考えてる仲なんですが……

お父さんが許してくれなくて……」


「それで、たまたまこの町に立ち寄っていた

冒険者のこのお二人に僕からお願いしたんです。

“ポールさんの前でフルラを助ける"ところを見せれば

認めてもらえるんじゃないかって」


「で、ベタな一芝居打ってたのを俺が邪魔したと」


ルアの言葉に、冒険者二人組は頷いた。


「まさか、こんな依頼を受けるとは思いませんでしたよ」

「でも、なかなかいい盗賊の演技だっただろ?」


「いや、町の近くで人を襲う盗賊なんていないだろ」


「ルア、気付いてたのかよ?」


「盗賊じゃないなとは思ってた。

でも襲われてるのは本当だと思ったよ」


「てかさぁ」


マリーが腕を組み、ダンをじっと見据える。


「なんであんたはフルラのお父さんに

認めてもらえないわけ?」


ダンは苦い表情を浮かべた。


「ポールさんはやり手の商人でこの町一番の資産家です。

つまり、フルラはお嬢様で……

僕じゃ釣り合わないと思われてます」


「釣り合わないって。

じゃあ、あんたは今何してんの?」


「……恥ずかしながら、無職です。

僕は何をやってもダメで…色々就職してるんですが

どこもクビになって……」


その言葉に、パーティの面々は微妙に胸が痛んだ。

しかしマリーだけは、妙に食いつく。


「いや、そりゃ釣り合わないっしょ。

フルラは、どこがダンのどこがいいのよ?」


「え……その……この人、仕事はダメかもしれませんが、

すごく優しくて、思いやりがあって……」


頬を赤らめるフルラ。


「わぁ〜、素敵ですねぇ〜!!」


ソフィアの目が輝く。


「ダンさんは、フルラさんのどこが好きなんですか!?」


「え、えっと……

優しくて……思いやりがあって……可愛いところ……」


「きゃぁ〜♡」


ソフィアは声を弾ませると隣のユノの肩を掴み揺らす。


「ユノちゃんも、こういう話好きだよね!?」


「…別に」


ユノは揺られながら迷惑そうにしている。


「はいはい、女子会はそこまで」


マリーは容赦なく話を戻す。


「でもさぁ、あんな芝居に頼るような男だけど?」


空気が一気に重くなる。


「……どうせ、僕は何をやってもダメなんです。

だから、あれぐらいしか出来なくて……」


「そういうトコなんじゃない?」


マリーの声は淡々としていた。


「自分には何も出来ないって決めつけてるトコ。

それに、芝居が上手くいったとしても、

後でボロが出ると思うけど?」


完全に言葉を失う二人。


「マ、マリー……ちょっと言い過ぎじゃ……」


「別に。本当のこと言っただけだし」


空気は確実に気まずくなっていた。


「……あの、お二人のお手伝いをするのはどうでしょうか?」


ソフィアがそっと口を挟む。


「まあ、元はといえばルアが芝居に割って入ったせいだしな」


「俺のせいかよ!?」


「マリーさんは……」


「……まあ、いいけどさ」


「本当ですか!?」


「責任がないとは言い切れないし。

とりあえず、明日までに何か考えておくよ」


ダンとフルラは、何度も頭を下げて去っていった。


すっかり存在を忘れていたが、

芝居に協力していた冒険者二人組も続く。


「では、私達もこのへんで失礼します」

「俺たちはもう少しこの町にいるから、また会うこともあるかもな」


静かになった酒場で、ルアがマリーを見る。


「……マリー、妙に噛みついてたけど?」


「ごめん。

なんかさぁ、あたしも最初は応援したかったんだけど、

途中からムカついちゃって」


「言ってることは正論だったけどな」


「……多分、自分と似てたのかもね」


「似てたって……もしかして、お前お嬢様なのか?」


アッシュは完全に冗談でいったつもりだった。


「まあ、それもあるけど……

それより、“逃げてる”ってところかなぁ」


「え?それもあるって…」


次の瞬間。


「お前、お嬢様だったのか!?」

「そんなチャラチャラした格好なのに!?」

「でも、確かにどことなく気品のようなものは

 感じてました……」

「……お金持ち」


一斉に飛ぶ声。


「ウケるっしょ?

てか、そんな話より明日の作戦考えた方がよくない?」


「あ、ああ……そうだな」


一同はマリーがお嬢様であるということが気になって仕方なかったが、話を変えられたことで聞きにくくなってしまった。


そして彼らの意識は、“お嬢様”という言葉に引きずられ、

マリーが口にした“逃げている”という言葉の意味は、

心に深く残らなかったのであった。


reunionを読んでいただきありがとうございます。

楽しんでいただけたなら、続きも読んでいただけると嬉しいです。

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