森がざわめく時
風太は鼻の下を指でこすり、
「この勝負、お預けだな!」
と得意げに言うと、空が差し出した手を握った。
座敷童子も「ふんっ」とあかんべをして、
反対側の空の手を掴む。
三人は手を繋いだまま、仲良く森の小径を歩き出した。
「それにしても、何をそんなに興奮してたの?」
と、空が穏やかに尋ねると
「あっ、そうだった! 大変なんだよ!」
風太が目を丸くして叫んだ。
「人間が──人間がこの森に迷い込んでるんだ!」
「なんですって!?」
空の表情が一変する。
「なんでそんな大事なことを先に言わないの!」
その言葉に、二人は手を放して両手で空を指差した。
「オイラたちはずっと話してたよ!」
「そうだよ! ちゃんと言ったもん!」
それぞれそう叫ぶと
「話を聞かなかったのは空じゃないか!」
二人の息ぴったりの抗議に、空は思わず苦笑する。
「……そういう時だけ息ぴったりなのね」
空はため息をつくと、二人の肩に手を置いた。
「お願いがあるの。
迷い込んだ人間を見つけてくれる?
早く森から出さないと──大変なことになるわ」
風太と座敷童子は顔を見合わせ、力強く頷いた。
「空、任せとけ! 森はオイラの友達だ!
人間の居場所なんか、すぐに分かる!」
そう叫んで風太は駆け出す。
座敷童子は残って空の手をぎゅっと掴み、
「人間……大丈夫?」
と不安そうに尋ねた。
空は優しく微笑み、その小さな手を包み込む。
「大丈夫よ。ありがとう、座敷童子」
そのとき、風太が慌てて戻ってきた。
「座敷童子! 何してるんだよ! 置いてくぞ!」
「い、今行く!」
座敷童子は慌てて駆け出し、もう一度だけ空を振り返る。
空は微笑みながら頷いた。
「大丈夫だから。行ってらっしゃい」
座敷童子は小さく頷き、風太の後を追って森の奥へ消えていった。
空はその背を見送りながら、
遠くで鳴る雷の音に目を細める。
「……嵐が来そうですね」
空の声が、静かな森に溶けていった。
さて今回は、空と座敷童子が、少し不穏な空気を漂わせていますね。
一体、空と人間のあいだに何があったのか──?
次回更新は【20時】
楽しみにしていただけたら嬉しいです




