再び動き出す時間(とき)
四人が席を外した部屋の中で、
恭介と空はそっと出ていった四人に気付き、バツの悪い顔をした。
空が恭介の手を離そうとすると、
「どうして逃げる? もう逃げる必要なんてないだろう」
と、低く穏やかな声が落ちた。
「あの……あまり見ないでください」
俯いて呟く空に、恭介がくすりと笑みを浮かべる。
「そんなに見てる?」
「さっきからずっと見てます!」
顔を赤らめて怒る空を、恭介は思わず抱き締めた。
「ごめん。もう、二度と触れられないと思ってたから……。
タツ……いや、今は空なのかな。
きみがどんな姿でも、俺は必ず見つけ出せる自信があるよ」
その言葉に、空の瞳が揺れた。
「……隠れんぼ」
「ん?」
「お母様が言っていたんです。
“隠れんぼに勝ったら、願いを叶えてやる”って。
だから、私を“死んだこと”にしなければ、里から出すことができなかったそうです。
……私は、自分の命が尽きたのだと思っていました。
悲しい思いをさせてしまって……すみませんでした」
「本当に、悪いと思ってる?」
「もちろんです。たくさん……泣かせてしまいました」
恭介は空の頬にそっと触れ、静かに微笑んだ。
「じゃあ、二度と離れないって、誓ってほしい」
そのまま、唇が触れ合う。
「……恭介さん。でも、美咲さんが……」
戸惑う空に、恭介は吹き出すように笑った。
「風太でさえ気付いたのに……。
きみ、心が読めなくなると鈍感なんだな。
──藤野君は今や、片桐君の婚約者だよ。
今日だって、二人の婚約祝いだって言って連れ出されたんだから」
「えっ……修治さんと美咲さんが?」
驚く空に、恭介はそっとその手にキスを落とした。
「それで? きみの返事は?」
空は真っ赤になって顔を逸らす。
「そんな聞き方……ずるいです」
恭介が笑うと、空はおずおずと顔を上げて言った。
「風太と……未来、そして恭介さんと私で……家族になりたいです。
でも……そうなると恭介さん、一気に二人の子持ちですよ? 本当にいいんですか?」
戸惑う空を、恭介はそっと抱き寄せ、微笑んだ。
「言っただろう? きみたちを養うだけの甲斐性は、あるつもりだよ」
そして、静かに言った。
「この先の未来、ずっと一緒に歩いて行こう」
空は涙をこぼしながら笑顔を浮かべ、
「はい!」と答えて恭介の胸に飛び込んだ。
「空……愛してる」
「恭介さん……私も、愛しています」
ゆっくりと重なる唇。
七年の時を経て、ようやく二人の時間が再び動き出した。




