表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/50

教授、スマホ持ってないって言いましたよね!?

今まで“可愛い”ともてはやされてきた美咲にとって、

恭介の反応はどれも戸惑うことばかりだった。


そのたびに湧き上がる不安。

──もしかしたら、教授は自分の“王子様”じゃないのかもしれない。


胸がぎゅっと締めつけられる。

それでももう、諦められない。

例え恭介が王子様じゃなくても、好きで仕方がないのだ。


「藤野君?」

突然黙り込んだ美咲を、恭介が心配そうに覗き込む。


「あっ! そうだ、教授! LINE交換しませんか?」


必死に笑顔を作る美咲に、恭介は呆れ顔でため息をつく。


「急に黙るから心配したら……そんなこと考えてたのか」


「え? 心配してくれたんですか!? もう〜教授ったら、やっぱり美咲のこと好きなんですね!」

そう言って、恭介の腕にしがみついた。


「だ〜か〜ら〜、抱きつくな!」


腕を振り払われ、美咲はぷくっと頬を膨らませる。


「どうしてですか!? 美咲、本気で教授が好きなんです! どうしたら分かってくれるんですか!」


恭介はため息をひとつ。

「藤野君、さっきも言ったけど……俺と君、いくつ歳が違うと思ってるんだ?」


「愛があれば歳の差なんて関係ないです!」


「……」


「それに、付き合ってみたら、教授も美咲の魅力に気付くと思いますよ!」


「藤野君の魅力、ねぇ……」


「はいっ!」


キラキラした目で答える美咲に、恭介は眼鏡を押し上げながら言った。

「俺には、君のお尻にオムツが見えるんだが……」


「やだ! 教授ったら、どこ見てるんですか!? 

そりゃ〜美咲のナイスバディに目がくらむのも分かりますけどっ!」


バシバシと背中を叩かれ、恭介は額に手を当てる。

「……めまいがしてきた」


「やだ〜、そんなに魅力的ですか?」

嬉しそうに笑って、また抱きつこうとする美咲。


警戒した恭介が身を引いた、その時──


「あっ!」


突然叫ぶ美咲に、恭介はまた頭を抱えた。

「今度は何だ……」


「LIME交換の話、途中でしたよね! 教授、スマホ貸してください!」


にっこり笑って手を差し出す美咲。

恭介は無言でその顔を見る。


「スマホ」

笑顔で圧をかける美咲に、恭介も引きつった笑みで返す。


二人は見つめ合い、思わず笑い合う。


けれど美咲は笑顔のまま、さらに詰め寄る。

「ス・マ・ホ!」


「……持ってない」


「え?」


「スマホ、持ってない」


美咲はぽかんと口を開けた。

「まさか……そんなわけ……」


その瞬間── 着信音が鳴り響く。


二人は顔を見合わせ、同時に笑い出した。


「教授? スマホ持ってないんですよね?」

作り笑顔で言う美咲に、恭介は涼しい顔で答える。

「藤野君のスマホじゃないのか?」


「そっか〜、私のスマホか〜」


にっこり笑ったあと、美咲はスッと表情を消して言った。

「私、教授との時間を邪魔されたくないので、音は消してるんですよ」


再びにっこり。


恭介が苦笑していると、美咲が言った。

「どうぞ」


「……?」


「電話、出てください」


「いや、持ってないから」


恭介が苦しい言い訳をしたその瞬間、着信音が一度止まり……


また鳴った。


「教授? ここ森の中ですよ。私のじゃないなら、教授の着信音ですよね?」


笑顔で圧をかける美咲。

「出たらどうですか? 急用かもしれませんし」


「誰だよ! こんな時に電話してくる奴!」

恭介は小声で毒づきながら、尻ポケットから携帯を取り出した。


「えっ! 今どきガラケー!?」


恭介は背を向け、着信画面を見てふっと笑う。


「もしもし、片桐君?」


その声を聞いて、美咲の笑顔が固まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ