胸騒ぎの縁側
美咲が戸惑うように頷くと、風太はぽつりと呟いた。
「そっか……。空が言ってたのは、本当だったんだな」
「え? 空さん、何か言ってたの?」
美咲が問い返すと、風太は少し考えてから答えた。
「オイラ達はさ、本来、美咲たちには見えない存在なんだって。
ここは大龍神様が治める世界──いわゆる“神様の世界”らしい。
だから、美咲たちにもオイラ達が見えてる。
でも、座敷童子は人間界で傷ついて帰ってきたから、
たとえここにいても、美咲たちには声が聞こえないかもしれないって」
風太はそう言うと、笑って座敷わらしの顔を見た。
「な? 座敷童子」
風太の言葉に、美咲は眉を寄せた。
「それって、どういうこと……?」
風太は腕を組み、少し難しそうな顔をする。
「詳しいことは分かんねぇけどよ。
人間が神様を信じなくなって、自然を大事にしなくなった。
だから神様たちの力も弱まって、この世界を守るのが難しくなってるんだって」
そこまで話すと、風太は縁側からぴょんと飛び降りた。
「座敷童子もさ、お願いばっかりされて、
都合のいい時しかお参りしてもらえなかったから、
力が弱まって動けなくなってたのを、空に助けられたって言ってたよ」
そう言って、足元の小石を蹴りながら遊び始める。
「……空さんって、どんな人なの?」
美咲が思わず聞くと、風太は無邪気に答えた。
「空? 大龍神様に仕える龍神で、
もとはオイラの母ちゃんに仕えてたらしいよ」
あまりに自然に話す風太を前に、美咲の胸がざわつく。
空君が風太の母親ではないとして──
その“母”に仕えていたというのなら、
風太の“父”を知っているのは、空ということになる。
しかも風太の父は、人間だという。
その瞬間、美咲の胸に嫌な胸騒ぎが広がった。
「風太君……もしかして、風太君の父親って……」
「あれ? 美咲、ここにいたの?」
呟いた途端、呑気な声が響いた。
修治が笑顔で立っていた。
「あ! 修治だ!」
風太と座敷童子が駆け寄る。
「遊ぼうぜ! 修治、遊ぼうぜ!」
「あ〜れ〜? 何? 俺って、ちび子たちにも大人気?」
修治が調子に乗った声を出すと、美咲が呆れた顔をする。
「“にも”って何? あんた、いつ、誰に人気あったのよ」
「美咲、安心してくれ。俺はいつだって、美咲が一番だよ!」
修治が美咲の手を取ってキスしようとした瞬間、
「気持ち悪いことすんな!」
とチョップが炸裂。
「いってぇ!」
風太と座敷童子も真似をして、修治の腕にチョップを食らわせる。
「こ〜ら〜! 誰だ、俺にチョップしてるのは!」
「やばい! 逃げろ〜!」
風太と座敷童子が走り出し、修治が慌てて追いかける。
そんな賑やかな声を聞きながら、美咲がふと顔を上げると、裏山の方から恭介が帰ってくる姿が見えた。
今日もお読みくださり、ありがとうございます。
緊張感が漂う中、修治が現れると、少しホッとしますね。
皆さまにとっても、そんな存在であったら嬉しいです。
次回更新は【明日の朝8時】になります。
楽しみにしていただけたら嬉しいです。




