第二話:星の扉と時の渦
黒岩島で目覚めたアキラとミオ。
波に呑まれた調査船、謎の声、遺跡に刻まれた古代文字――
二人は「星の力」に導かれ、封じられた石門へと挑む。
星が揃うとき、試練は新たな段階へ。
そして――時の扉が、静かに開く。
島の空が、夜の帳に包まれていく。
空気は澄み、雲ひとつない星空が広がっていた。
「見て、アキラさん。あれが……『カリオペの導き』!」
ミオが指差す先には、南の空に4つの明るい星が十字を描いていた。
南十字星によく似たこの星座は、古代カリオペ文明の伝承にもしばしば登場するという。
それは“神の目”として、夜空を見張り、時の扉を開く鍵とされていた。
「パズルと照らし合わせるには、絶好の夜だな」
アキラは星の位置をスケッチし、ミオは植物図鑑の後ろに挟まれた星図を広げる。
「この明るさと配置……ここと、ここ……あ、これが偽物!」
ミオが指差した石板は、他のと微妙に輝きが異なっていた。
「罠を混ぜてあるのか……なら、本物だけを慎重に選ぶしかないな」
二人は交互にパズルを解いていく。星図と現実の星座を照らし合わせ、慎重に石板を配置する。
失敗すればリセットされる仕組みを見抜き、何度もやり直しながらも、やがて──
「……ガコン!」
重々しい音とともに、石門がゆっくりと開いた。
「……開いた、のか……?」
アキラの声に、ミオは思わず跳ねるように喜ぶ。
「やったー!アキラさん、最高!私たち、完璧だったよ!」
その瞬間、島全体が微かに震えた。風が止み、静寂が広がる。
そして、あの声が──再び響く。
「時の旅人よ……試練は、始まりに過ぎぬ……」
門の内側から、青白い光が漏れ出した。
二人の足元に紋様が浮かび上がり、重力の感覚が消えていく。
「ま、待て、これは……!」
光が視界を覆い、風景が引き裂かれるように変化する。
ミオは叫んだ。「母さんの声が……遠くなる……!」
アキラも、胸を押さえる。「妹……名前は覚えてるのに……顔が……ぼやける……」
“記憶”が、削られていく。
島が彼らを選んだ。その対価は、「忘却」だった。
──次に二人が目を開いたとき、そこは現代ではなかった。
熱帯の森、鳥のさえずり、焚き火の煙。
黒岩島が、まだ“生きていた”頃。時は、およそ2500年前。
「うそ……タイムスリップ……?」
「これは……古代カリオペ時代……か?」
混乱する二人の前に、羽根飾りをまとった若い戦士が現れる。
漆黒の瞳で彼らを見据え、警戒した声を放った。
「お前たち……時の旅人か?」
彼の名は、タラニ。
この島の守護者であり、試練を課す者だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
第二話では、石門の謎と〈時の跳躍〉が描かれました。
次回はいよいよ古代黒岩島編が本格始動。
タラニという新キャラクターとの出会いと、初めての「試練」が待っています。
ミオの植物知識が思わぬ武器になるかも……?
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それではまた、黒岩島の古き森でお会いしましょう