パ〇ス(ぬわー!!)
人生とはなかなかうまくいかないものです。
これを書いている私の心は、散りぎわの桜のように乱れています。
勇者の討伐に向かったオーガたちは、予定通り勇者の生まれたと言われる村を襲いました。そこまでは良かった。
ですが、なんと肝心の勇者については取り逃したというではありませんか。
オーマイファック……私はこれまでに無いほど動揺しています。
聞けばオーガたちは勇者たちの家を取り囲んだそうです。
あと少しで勇者をその手にかけることができる――そういった時に、勇者の父親が立ちはだかったとのことでした。
タチの悪いことに、その父親は王都で騎士団を務めていたという強者だったのです。
何人かのオーガが斬り殺され、不運にもその人生に幕を閉じました。それでも集団で取り囲み、多勢に無勢のフルボッコで勇者の父を倒したとのことです。
父親は誰にも届かない遺言を残してから「ぐふっ」と息を引き取ったとのことでした。
時間はかかりましたが、邪魔者はいなくなりました。
さあ、これで勇者をその手に――というところで家に踏み込んだところ、すでにそこはもぬけの殻となっていました。
――やられました。
そうです。父親は自身の命と引き換えに勇者を遠くへと逃がしたのです。
これだから人間という生き物は嫌なのです。
私たちにはまったく理解ができません。
どうして他者を救うために自身の命を犠牲にできるのか。イカれているとしか思えません。
どうあれ、勇者には逃げられました。最悪の結果です。
作戦に失敗したオーグたちを「粛清」した後、私は恐怖で震えました。
嗚呼、いつか勇者が私を殺しに来る。
私は彼に、魔王を殺す理由を与えてしまいました。
何年も経った後に、彼は復讐心に満ちた最強の敵となって帰って来るでしょう。
私はいつになれば安心して眠れるのでしょうか?
生きていくのはつらく、厳しいことです。
誰か私に、生きる希望をください。