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僕のエッセイ作品集

ビールと僕との間には

作者: Q輔

 毎日晩酌をする。もっぱら焼酎をお茶で割って飲んでいる。ビッグサイズのクソ安価な焼酎を、娘たちをホステス代わりに、かっかっかっと煽って、さっさと寝てしまう。


 酒の味とか価値みたいなもんは、年相応に分かったふりをしているだけで、お恥ずかしい話、正直よく分かっちゃいない。美酒と肴とその時間を楽しむ、ちゅうより、一刻も早く酔いどれに向かっているっちゅうパターンの酒飲み。


 僕という人間は、元来アッパラパーでチャランポランな愚物であるが、こと仕事中はそれなりに頭を回転させていたり、プレッシャーに押し潰されそうだったり、長時間気を張っていたりする。

 仕事を終え、酒をぐいっと煽ると、一日中張り詰めていた気持ちが、ホロリとほころぶ。ほころぶような気がする。妻はそんな僕を見るにつけ「アル中野郎」の一言で掃いて捨てるように片付けるが、まあ、そんな言われ方されたらぐうの音も出ないのであるが、でも僕は絶対にアル中ではないし、てかアル中なんてワードそう簡単に口にするものではないし、でも最終的にアル中ならアル中でいいじゃないか、何か問題でも? なんつって開き直って、グラス片手に瞳孔を開き切り、意識を火星近辺にぶっ飛ばし、知らぬ間に口からヨダレが一本とぅーっとテーブルに滴っていたりする様を、家族に薄気味悪がられる始末なのである。


 昔は毎晩ビールを飲んでいた。管理職になってから、なんとなくそれをやめた。ビールが美味しく感じられなくなったのだ。ビールを美味しいと感じる時って、その日常のそれぞれ局面での大なり小なりはあれど、その日その時その瞬間が何かしらフワッと上向きの状況だと思うのです。祝いの酒。勝利の酒。労いの酒。集いの酒。左記の状況から、僕はビールを連想する。


 全身全霊全力で遊びまわっていた二十代や、深く悩んだり考えたりする必要にさほど迫られなかった三十代前半ぐらいまでは、毎日ビールがすこぶる美味しかった。それから、社会でそれなりにお金を稼げるようになるのと並行して、悲しみの酒、疲労の酒、恨みの酒、妬みの酒、苦悩の酒、そんな重苦しい酒が世の中にあることを、とことん思い知らされた。そういった場でのビールは極めて不味い。そういう時は、日本酒や焼酎やウイスキーがすすむ。


 もうここ何年も、家にビールを買い置きしていない。本当に飲みたい時、今日はきっとビールの美味しい日だと確信した時、飲みたいだけのビールをわざわざ店に買いに行くことにしている。

 毎日ビールが美味しい人生を送れている人は、つくづく幸せだと思う。自分もかくありたい。いつかはそんな日常を手に入れたいな。でも今はちょっと難しいかな。今の僕は焼酎かっ食らって爆睡するのが関の山です。そんでもって、このビールとの間の微妙な距離感が、実は、けっこー嫌いじゃなかったりするのです。


 昔は、サッポロ黒ラベルが大好きだった。


 今は麒麟の一番搾りがお気に入り。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私もビール、好きです。そんなにお酒が強くないので、他のお酒が飲めないんですよね……。サッポロ黒ラベル派です。 以前は家でもたまに飲んだりしていましたが、缶ビールより生ビールの方がおいしいなぁ…
[良い点] 精神的に落ち込んでいる時のビールはあまり美味しくないというのは分かる気がします。 スカッとするより、苦味の方が先に来るといいますか…。 ビールとの距離感、大事にしたいですね。 [一言] あ…
[一言]  お酒、飲めません。  あ、音楽に例えれば良い?  スリージーなロックンロールじゃなくて、ブルーズやジャズ、R&Bを愛でる日が増えてきたり……あ、きのうもメロハー(メロディアス・ハード)…
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