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外伝2−5.偽聖女騒動の尻拭いね

 簡単すぎるほどざっくり纏めると、目の前の白い獣耳の少年は別世界の神様らしい。その神様は双子神で、必ず二つに分かたれて生まれる習わしだった。


 悪である勇者を倒した魔王が、世界を平定したところで生まれ変わりのタイミングが来た。勇者と魔王の立ち位置が逆なのね。異世界はなんでもアリだわ。


 心配ないと考えて眠りについた神様だけど、片割れが行方不明になったらしい。その原因が、随分前にこの世界に落ちてきたイレギュラーの異世界人。


 彼女が本来落ちるのは、この世界ではなく、目の前のケモ耳神様の世界だった。ところが間違えて落ちて、戻されてしまったことでバランスが狂う。結果、崩れたバランスに引き摺られて、向こうの神様がこの世界に落ちたというわけ。


「でも、異世界人の自称女神が来てから、すごく時間が経ってるわよ?」


「そうでもありません。まだ1万年も経ってませんから」


 なるほど、神様時間だと短いわけね。ここ数ヶ月で生まれる子を対象に、調べまくっているんだとか。


「あれ? でも、数ヶ月だと私は対象外だよ」


「どうしてですか?」


 きょとんとした顔の少年に、私は寿命の話を始めた。少なくともあと2年は悪阻が続き、赤子が生まれるのは数年先であること。聖女と聖獣の子だから、女神様の息がかかっていて、おそらくよその神様が入り込む隙がないだろうことも。


 しょんぼりと肩を落とした神様は気の毒だけど、この子は対象外だと思う。そこは理解してくれた。今後も探したいが、あちこちで変な噂が広まって協力が得られないと肩を落とす姿に同情する。


「サラはそういうと思いました。構いませんよ、手伝いましょう」


「はい、これ。肩に巻いて。冷やさないようにリディからの伝言ね」


 アランに苦笑いされ、仕事を放り投げて駆けつけたエルにショールを巻かれる。温かくするのは賛成なので、すぐに巻いた。お腹も大事だからね。大判のショールで助かった。


 二人とも仕事を放り投げたわね。私が連れ去られたから、当然だと思うけど。


「アリスは大丈夫だった?」


「大泣きでしたよ」


 母親がいなくなったと泣きながら、侍女に抱えられて屋敷に飛び込んだらしい。行動力あるのね、あの子。


「女神様から連絡が入ったとか?」


「ええ。可能な範囲で手伝っていいそうです。お陰でお腹を開けなくとも、中の胎児を確認できますよ」


 アランが持つ遠見の力と、治癒を得意とするエルの能力で、触れれば赤子の状態を確認できるみたい。感動したケモ耳神様は半泣きでお礼を言い始めた。まだ見つかってないから早いわよ。


 よろしくお願いしますと頭を下げる神様に、アランは穏やかに頷く。


「じゃあ、まず私のお腹で試してみて」


 この子は99%違うけど、練習にはなるわよね。この二人が失敗するわけないから、何も心配いらないわ。


「……そういうところですよ、サラ」


「ほんと、無防備というか」


 二人に特大の溜め息を吐かれてしまった。何か変なこと言ったかしら?

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