外伝1−3.私の知ってるやつじゃない!
真っ白な雪山に突撃、かと思いきやするりと洞穴に入った。上から見ると真っ白だけど、飛び込む直前に見た穴は黒く見える。地上から見上げたら、この洞穴は結構大きかったのかも。アゼスがそのまま入れたくらいだもの。
「うひゃぁ……」
外はひんやりした印象だったのに、中は暖かい。というか、真夏の気温じゃないかな。幸い湿度は低いようで、蒸し暑さはなかった。
「この先にね、火口があるのよ」
「これだけの雪山なのに活火山とか、不思議だよね」
リディやエルが口々に話しながら、するりと人型を取る。アゼスも元に戻って服を確認していた。
「アラン、戻らないの?」
「ああ、すみません。サラの膝が心地よくて……っ」
うっかりした発言の直後、黒猫は首の後ろをリディに掴まれた。ぶらりと手足を垂らして抵抗できないアランに、説教が始まる。エルも参戦したので、少ししたら止めなくちゃね。
ネコ科って首の後ろを噛まれたら動けないと聞いたけど、黒豹にも有効だったわ。覚えておこう。
「サラ、そんなこと覚えなくても」
「ちょっと! ちゃんと聞いてるの!?」
説教を聞き流していたことがバレたアランは、リディに追加で叱られた。私はその間に上着を脱いで、エルに渡された冷たい氷の入った皮袋を抱き締める。いわゆる氷枕と同じ。ひんやりするけど中身は漏れてこなくて、意外にも皮袋は優秀だった。家畜の膀胱が原材料と聞いたときは引いたけど。
アゼスは奥の方へ歩いて行き、途中で立ち止まった。手招きされて追いかける。当然、エルやリディも説教を中断して駆け寄った。アランが「やれやれ」と肩をすくめて、掴まれた襟の乱れを直しながら追いつく。
「ここだ、見えるか」
「うわっ、熱い」
アゼスが指差す先は、真っ赤な水溜まりがある。おそらくマグマ的な何かだよね。水属性のエルには堪えるのか、汗だくになって数歩下がった。
「見えた!」
いた! と叫ぶのが正解かな? 黒い影がのそりと動くのが分かる。あれが生き物なら、ドラゴンだよね。
「おぉい! こっち来い、ラドン」
「ちょっと待ってろ、足が抜けん」
初のドラゴンのセリフが、足が抜けないって……そんなのあり? もしかして危険な状態だったりして。心配した私が覗こうとしたら、アゼスが慌てて襟を掴まえた。
「落ちるぞ、あれはいつものことだ。溶岩に流されぬよう、体の一部を壁に突き刺して寝る」
うん……なんとか想像出来たけど、随分ワイルドな生活なんだね。溶岩というか、マグマに流されちゃったことがあるみたいな言い方だ。たぶん、起きてびっくりしたタイプだよ。
ががっ、妙な音がして壁が大きく揺れた。火口の真っ赤なマグマを体に纏わりつかせ、翼を広げた竜が飛び上がる。短い前足、猫やウサギみたいな後ろ足、そして煌めく鱗。
えっと……うそ! これって、私の想像したドラゴンじゃない!?