表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/100

外伝1−3.私の知ってるやつじゃない!

 真っ白な雪山に突撃、かと思いきやするりと洞穴に入った。上から見ると真っ白だけど、飛び込む直前に見た穴は黒く見える。地上から見上げたら、この洞穴は結構大きかったのかも。アゼスがそのまま入れたくらいだもの。


「うひゃぁ……」


 外はひんやりした印象だったのに、中は暖かい。というか、真夏の気温じゃないかな。幸い湿度は低いようで、蒸し暑さはなかった。


「この先にね、火口があるのよ」


「これだけの雪山なのに活火山とか、不思議だよね」


 リディやエルが口々に話しながら、するりと人型を取る。アゼスも元に戻って服を確認していた。


「アラン、戻らないの?」


「ああ、すみません。サラの膝が心地よくて……っ」


 うっかりした発言の直後、黒猫は首の後ろをリディに掴まれた。ぶらりと手足を垂らして抵抗できないアランに、説教が始まる。エルも参戦したので、少ししたら止めなくちゃね。


 ネコ科って首の後ろを噛まれたら動けないと聞いたけど、黒豹にも有効だったわ。覚えておこう。


「サラ、そんなこと覚えなくても」


「ちょっと! ちゃんと聞いてるの!?」


 説教を聞き流していたことがバレたアランは、リディに追加で叱られた。私はその間に上着を脱いで、エルに渡された冷たい氷の入った皮袋を抱き締める。いわゆる氷枕と同じ。ひんやりするけど中身は漏れてこなくて、意外にも皮袋は優秀だった。家畜の膀胱が原材料と聞いたときは引いたけど。


 アゼスは奥の方へ歩いて行き、途中で立ち止まった。手招きされて追いかける。当然、エルやリディも説教を中断して駆け寄った。アランが「やれやれ」と肩をすくめて、掴まれた襟の乱れを直しながら追いつく。


「ここだ、見えるか」


「うわっ、熱い」


 アゼスが指差す先は、真っ赤な水溜まりがある。おそらくマグマ的な何かだよね。水属性のエルには堪えるのか、汗だくになって数歩下がった。


「見えた!」


 いた! と叫ぶのが正解かな? 黒い影がのそりと動くのが分かる。あれが生き物なら、ドラゴンだよね。


「おぉい! こっち来い、ラドン」


「ちょっと待ってろ、足が抜けん」


 初のドラゴンのセリフが、足が抜けないって……そんなのあり? もしかして危険な状態だったりして。心配した私が覗こうとしたら、アゼスが慌てて襟を掴まえた。


「落ちるぞ、あれはいつものことだ。溶岩に流されぬよう、体の一部を壁に突き刺して寝る」


 うん……なんとか想像出来たけど、随分ワイルドな生活なんだね。溶岩というか、マグマに流されちゃったことがあるみたいな言い方だ。たぶん、起きてびっくりしたタイプだよ。


 ががっ、妙な音がして壁が大きく揺れた。火口の真っ赤なマグマを体に纏わりつかせ、翼を広げた竜が飛び上がる。短い前足、猫やウサギみたいな後ろ足、そして煌めく鱗。


 えっと……うそ! これって、私の想像したドラゴンじゃない!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ