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外伝1−1.ドラゴンへの手土産

「ドラゴンに会いたい」


「え? いいけど」


 ごろごろと寝転がっって日向ぼっこをしていた午後、突然言い出した私の我が侭。百年以上この世界で生きて、ようやく我が侭を口に出せるようになった。気遣いとか後回しにして、言い放つだけ。


 隣で休んでいたエルが、あっさり許可を出す。そうじゃないの。我が侭を言い出したら、一度「我が侭ばかり、ダメよ」と叱ってくれなきゃ!


「アラン、サラが面倒臭いこと言ってるぅ」


「いいではありませんか、女の子は少し我が侭なくらいが可愛んですよ」


 あなたはまだ子どもですね。そんな口振りでエルを突き放したアランが、さっと歩み寄って私を床から拾い上げた。分厚い絨毯が敷かれ、重ねて毛皮のラグに寝転がる私は、やっと7歳前後の外見だ。本当は早く大人になりたいけど、大人になったらゆっくり歳を取りたいんだよね。


「それは難しいですね」


 くすくすと笑うアランの婚約者として、私が公表されたとき……聖女だと知っていてもロリコン疑惑が持ち上がった。幼女趣味と罵られても、平然と応じるアランはカッコいい。口から出る嫌味も切れ味抜群だ。


「ドラゴンの住処なら、アゼスが詳しいです。呼んでみましょう」


「呼んじゃうの?」


 聞くだけじゃなくて、呼びつける? 皇帝陛下のお仕事してる時間じゃないかな。明るい午後の日差しに「うーん」と唸る私だけど、転移で一瞬だった。


「ドラゴンだな。奴はいい男で女子どもに優しい。特に問題はない」


 あっさりと紹介する約束をくれた。昔の話を思い出し、我が侭を口にして僅か10分。明日にはドラゴンの元へ向かうと決まった。早いな、これだけ長寿なのにせっかち。


「せっかちとは違いますね。サラの希望だから叶えたいんです。出来るだけ早く褒めて欲しいんですよ」


 整った顔で優しく甘い囁きは禁止だよ。赤くなっちゃうじゃん。ぐいっと遠ざける動きをすると、笑いながら手のひらにキスされた。


 婚約者確定してから、とにかく甘いよね。それと、私の心の声を何とかする修行が中断してるけど、またチャレンジしようかな。私だけ筒抜けなの恥ずかしい。


「可愛いから許可できません」


「あ、僕もアランに賛成」


「リディと俺の票もアランに入れておく」


 全員一致で拒否された。何その可愛いから許可できないっての。私だって発動するわよ、カッコいいから許可できないってやつ。


「サラにカッコいいと褒められるのは、私の喜びです」


 全然効果なさそう。がくりと項垂れた私は大人しく明日の準備を始めた。お弁当は作ってもらうとして、ドラゴンへの手土産って何がいいかな。


「手土産? ああ、貢ぎ物ですか。聖女であるサラは手ぶらで構いません」


「そうだぞ、奴が付け上がる」


 アランとアゼスに反対され、迷った末にリディに問いかけてみた。すると、可愛い女の子にプレゼントされたら、彼に惚れられて厄介よと返ってくる。


「リディの言う通り。サラが誘拐されては困る」


 重ねて訴えるアゼスに、私は困ってしまった。知らない人の家を訪ねるときは、手土産が常識だったんだけど。すると、同行するアランが手土産を用意すると言い出した。私の婚約者である彼が出すならいいのかな。アゼスは無造作に地面から宝石を取り出す。キラキラした赤い宝石は拳ほどの大きさがあった。


「あいつは赤が好きだ。これを土産にするといい」


 なんだかんだ、お父さんアゼスは娘に甘い。大きな宝石をアランは収納に入れて、私はエルと一緒に他の準備を始めた。敷き物、上着、枕……なぜか道具は増えていき、まとめてエルの収納へ放り込まれた。


「僕も一緒に行くからね」


 アラン、嫌そうな顔をしないで。

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