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82.醜い感情も許されるのかな

 ぐっすり眠れた。夜中に何回か起きたけど、時々誰かがいなかったような……でも次に起きると一緒に寝てたし。大した問題じゃないわね。


 大きく伸びをして、隣の黒豹にもう一度もたれかかる。


「おはようございます、サラ」


「おはよ、アラン。エルとリディ、アゼスも」


 目が合った順に声を掛けていく。全員がご機嫌で、窓の外は少し曇り空だけど。それ以外はいい朝だった。暑すぎない意味では、やっぱりいい天気よね。


「あの女性はどうなったの?」


「女神様が回収したよ、返したんじゃないかな」


 物を返す意味の「返す」を使ったように聞こえるけど、気のせいよね。エル達の気持ちもわかるけどね。ラノベの異世界転移って、聖女や勇者の肩書きで召喚される話が多いから。私だって一応、聖女の名目で召喚された。


 彼女がそう思い込むのも仕方ないと思う。よく似た世界から来たなら、日本そっくりの世界で生きてきたのかも。


 ベッドの上を転がって縁に座る。後ろからのそりと近づいた黒豹が、するっとアランに戻った。当たり前みたいに手を差し伸べて、私を抱き上げる。


「何色のワンピースにしますか?」


「そうねぇ、気分は明るい色かな」


 偽聖女が消えて、ほっとしてる。汚い感情だなと思うけど、あの人がアランの横に立つのは嫌。アゼスやリディに対して偉そうに振る舞うのも、エルの頭を撫でるのだってダメ。全部私の特権だもの。そう思っちゃう醜い子でも、聖女でいいのかな。


 成長を止めた手足をじっくり眺める。あと数十年しないと年齢を重ねない。幼女のままで多少不自由でも、甘やかしてくれる人達がいるから構わなかった。幼い外見に引きずられるように、私の心も子どもの我が侭を叫んでる。


 聖獣達は私のよ! って。


「これって醜いよね」


「私は好きですよ。今日は黄色いワンピースにしましょうか。白い帽子が似合いますよ」


 黄色だけど少しオレンジがかった、まるで向日葵のようなワンピースを着る。裾が花びらみたいに不規則に揺れた。可愛い。白い帽子はリボンで作られた黄色い花が載って、ツバが広かった。麦わら帽子っぽい形で、柔らかな生地。被るとツバの先がへにゃりと垂れる。日焼け防止で、顔が影になるように出来てるんだって。


「気に入りましたか?」


「うん。……あれ? 3人は大人しいね」


 いつもならすぐ話しかけてくるはずの3人は顔を見合わせ、おずおずと私の顔色を窺う。首を傾げた途端、一斉に謝られた。


「すまん。アランの事情を知りながら黙っていた」


「ごめんなさい。彼が仕事で離れていたのは事実で、その内容を話さなかったの」


「僕もごめんね。本当は偽聖女をサラに会わせないため、監視を頼んでたの」


 それぞれに詫びた内容はすべて同じ。アランにあの女性の監視を頼んだこと。私が勘違いして怒ってるのを正さなかったこと。理由は、私がアランを好きっぽいから……でしょ? いいの。今回のことがあって私もやっと自覚したから。


「アラン、私……結構あなたが好きみたい」


 感激して涙目になったイケメンに抱き締められ、苦しいくらいの抱擁の中で唇以外の顔中にキスをもらった。恥ずかしいより嬉しくて、そんな自分にちょっとドン引き。でも、これからも幸せは続きそう。

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