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81.サラが残した言葉の意味

 偽聖女と女神に断定された、異世界人の女性を前に聖獣達は物騒な相談を始める。


「殺さないようにすればいいのよね? じゃあ、皮を剥ぐくらいかしら」


「それじゃ死ぬ可能性があるだろ、せいぜい腕や足を切り落とすくらいにしよう」


 皇后リディは生皮を剥ぐ提案をする。ところが皇帝アゼスが眉を寄せた。殺してしまっては意味がない。ここはぎりぎりの線を責めるべきだと主張した。だが提案内容に問題ありだ。


「手足切ったら治療しないと死ぬじゃん」


 ぼそっとエルが吐き捨てる。


「僕やだよ? 治療とか。人間って血を止めないと死ぬんでしょ」


「なんだと!? そんなにか弱いのはサラだけだと思っていたぞ」


「皇帝陛下として認識がおかしいよ」


 一体何年、人間を統べてきたのさ。そう突きつけられ、しばらく考え込んだ。次の手を探している様子だが、エルはけろりと案を出した。


「ねえ、追いかけっこはどう? 期限は女神様が迎えに来る、明日の朝まで。追いついたら攻撃がひとつ可能になる、とか」


「殺さぬように追い回すのが難しいが、なるほど手加減の練習になるか」


 エルとアゼスの相談に、リディは大きく欠伸をした。


「そんなの面倒よ。逃げ回る姿を見るのは楽しそうだけど……こんなのはどう? あの偽物を捕まえて攻撃するたびに癒すのよ。何度でも、ね」


 狐の執念は恐ろしい。恨まれないよう注意しなくては。揃って同じ感想を抱いた二人は顔を見合わせる。そこでサラを連れ去ったアランから、一言飛んできた。


 ――血生臭いのも構いませんが、サラは「私が知らないところでして」と言いましたよ。いいんですか?


 はっとした顔でエルが呟いた。


「知らないところって、もう知られてるじゃん」


「なんという優しい子だ。そういう意味か」


「危うく、グチャグチャにするところだったわ」


 サラの告げた言葉の意味を理解したから、アランはあっさり手を引いた。そう考えると負けた気がして悔しい。しかし自称聖女を押し付けてサラと過ごした手前、しれっと合流するのも気まずい。悩んだ末、八つ当たりの対象にできる異世界人を振り返った。


「サラちゃんが知らなければいいのよね?」


「そうだな。バレなければいい」


 顔を突き合わせて相談した結果、震える女性を地下牢へ放り込む。三人は素知らぬ顔でアランとサラが寛ぐ部屋に合流し、仲良く同じベッドで眠りについた。そのベッドが巨大であっても、聖獣すべてを載せたら危険なため小型化して。


「もふもふがいっぱい!」


 嬉しそうなサラの顔に、選択を間違わずに済んだと聖獣達はほっとした。本番は彼女が寝入ってから。こっそり一人ずつ抜けて、報復すればいい。彼女が知らないところで……知らない間に。


『妙な知恵がつくのもどうなのかしら。でもいい関係よね』


 女神はちらりと覗いた下界の様子に、殺される心配はなさそうと笑った。翌朝の引き取りで、集中的に自慢の顔を狙われて、ぱんぱんに腫れた彼女を回収するまでは……。

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