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68.コウの旦那さんを見つけよう!

 コウの行動範囲は宮殿の裏にある森。なぜなら昼間は森へ出ても、夜は宮殿の敷地内で寝ていたから。日帰りできる距離にいた狼としか、出会いのチャンスはなかったはず。


 人差し指を立てて得意げに推理を披露する。嬉しそうに聞いていた二人が、大きく首を縦に振った。聖獣は金色の目をしているから、他の獣と間違われることは滅多にない。ふかふかの毛皮に抱き付いて、左右にゆらゆら揺られながら森を進んだ。


 順調に森の奥へ向かう。聖獣に歯向かう動物はいないので安心だった。本能が発達してるから、怖いと出てこないよね。それでも襲われない安心感から、草食動物が逃げないこともあった。


「コウのお散歩コース聞くの忘れて出てきちゃった」


 私は聖女だけど、普通の獣と会話が出来ない。話せる獣は聖獣だけで、距離関係なく通じるんだけど。コウは表情豊かに振る舞うから、あまり不自由に感じなかった。可愛い犬を飼ってる気分だったし。


 聖獣とコウの間で意思疎通は可能なので、散歩道を聞いておけば父狼発見の手掛かりになったのにとぼやく。自分のミスだけどね。


「問題ないよ、熊は鼻が利くからね」


「エルの鼻がいいと関係あるの?」


「コウの匂いを辿れば、散歩道がわかるじゃん」


 びっくり、そんなに鼻がいいのか。そういえば熊の獲物を奪うと、ずっと匂いをたどって追いかけてくると聞いたことがあるわ。あれね。


「物騒な例えしないでよ、僕の嗅覚を信じてサラはどんと構えてて」


「うん、よろしく」


 珍しくアランがあまり話さない。何か気になるらしく、時折首を傾げていた。問題があれば教えてくれるよね。今も心の考えはダダ漏れの私だから、そのうち説明してくれそう。


 実は5年の間に訓練はしてみたんだ。必要ない部分を閉鎖して、届けたい言葉だけ伝える練習ね。結果はご覧の通り、全部筒抜けのまま。人には向き不向きってあると思うの。悲しいけれど、現実は無視できなかったわ。


「こっちだね」


 エルが左側に曲がる。道標もない獣道を進むエルだけど、帰り道の不安はなかった。匂いを辿れるなら、絶対に自分達の帰る先は見失わないよね。いざとなれば、アランの転移を使って帰れるし。


「レッツゴー!」


 勢いよく手を前へ振る。応えるようにエルの速度が上がった。


「見つけましたっ!!」


 叫んだアランが木の幹を駆け上がり、枝の上を走って頭上から飛びかかる。ずっと何かを探していたけど、見つかったらしい。と思ったら、大きな狼が押さえつけられていた。


 聖獣のアランと同じくらいあるから、きっと普通の狼より大きい。巨大なエルの上にいると、どうもサイズ感が麻痺するのよね。灰色の毛皮の狼は唸り、もごもごと文句を伝える。アランが唸って伝えた後、大人しくなった。


「この狼がコウの旦那さん?」


「たぶんね」


 コウより一回り大きいかな? ひとまず話を聞くことにした。

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