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67.相変わらずな私は5年経っても幼女です

 何事もなく、聖女として皇帝陛下ご夫妻の養女になって、大公国や自治領の聖獣も従えて……気づいたら5年が過ぎました。


「なんで成長しないのよっ!!」


「何回も説明しましたよ。この世界では寿命に応じて成長度合いが変わります」


 同じ叫びを放ち、同じ説明を聞くこと数十回。私は未だに幼女のまま。成長する兆しは見られない。爪や髪は伸びるのに、身長だけ伸びなかった。


 ぷくぅと頬を膨らませると、エルがぷすっと指で押す。空気が間抜けな音で漏れた。


「このままが可愛いのよ。女神様もよく分かってるわ」


 リディは嬉しそうだけど、彼女の言葉通り原因は女神様だった。過去の一般的な聖女も寿命は長かったらしい。最低でも500年は生きたというから、成長度合いは単純に5〜6倍に伸びたと思う。私の場合、さらに寿命が長いから……あと10年近くこのまま。


 数十年で1歳の成長って、のろすぎて成長したか確認できないじゃん。よくやる柱に印を刻むやつ、頑張っても数十年は変化ないし。変化がわかる頃には建物が老朽化して建て直しになるよね。


「いつまでも可愛いサラちゃんが維持されるのよ。最高だわ」


「リディの言う通りだ。長く一緒にいられるな」


 リディもアゼスも嬉しそう。私としては、高校生くらいまで一気に成長して、若いまま永遠の18歳を楽しみたかった。吸血鬼みたいに若く不老長寿になると思ったのに。想像と違いすぎる。これが異世界マジックなのね。


「サラのそういうとこ、面白いよね。僕は好きだけど」


「私はどんなサラでも受け入れますよ。あと500年くらいしたら婚約しましょうね」


 エルが告白した後ろで、穏やかな口調のアランがしれっと婚約話を持ちだす。それをアゼスとリディが「まだ早い」と退けた。お笑いのコントさながら、何度も繰り返された状況に、脱力する。苦笑いが浮かんだ。


「ま、いいか。のんびり行こう」


 くーん、鼻を鳴らすコウの首に抱きつくと、膝の上に小さな狼達がよじ登った。コウは今年が初産で、3匹も子狼が生まれた。可愛いので宮殿で飼う予定。ちなみに父狼が行方不明で一度も顔を見せないのは、ちょっと許せないかな。


「父狼探す?」


「いいね! 時間がたくさんあるし。一緒に行く」


 困り顔のコウだが、子狼がいるので動けない。侍女達にお願いして、お弁当を用意してもらった。それから着替えを数枚、タオルも一緒に収納魔法へ入れる。


 そう、習得まで3年かかったけど、収納魔法を覚えた。これは便利、ありとあらゆる物をしまえる。生き物だっていけるらしいけど、怖いから試してない。死んでたら怖いし。ラノベの展開だと生き物を入れたら死んじゃうから。


 お弁当も収納して、アランと手を繋ぐ。エルは熊姿で私を乗せようと誘いをかけた。揺れるけど、意外と楽しいんだよね。どうしようかな。


「私は残念だけど来客予定があるの」


「ふむ。書類処理が終わり次第合流する」


 リディとアゼスは動けない。なら、エルの背中にしよう。手足が短いのでアランに乗せてもらい、隣で黒豹になった彼に手を振った。


 駆け出していく。宮殿の高い塀を飛び越え、あっという間に森の中。お目当ての狼を探して、日帰りできるといいな。

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