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63.私の常識が通用しない世界観

 二日酔いにならず、無事に宴会を終えた。といっても、さすがに幼女の私が朝まで付き合えるはずもない。リディに抱っこされ、エルと共に退場となった。


「これに懲りず、また参加してください」


「皇女殿下、ゆっくりお休みください。後日、我が領地の葡萄ジュースを献上させていただきます」


「可愛い」


 最後にうっとりしていた男は、ちょっと事情を聞くと口にしたアランに連行されたが、それ以外は大きな混乱もなく宴会に戻っていく。手を振って退場した私は、疑問をリディにぶつけた。


「ねえ、どうして皆優しいの?」


「……どういう意味で?」


 逆に問い返されてしまい、頭の中に浮かんだ転生ものラノベのあらすじを思い浮かべる。


「普通はね、異世界から来たら化け物扱いされたり、いきなり現れたのに生意気って罵られたり、利用されたりするの」


「物騒な世界だったんだね、サラ」


 可哀想にとエルに同情された。そうじゃなくて、この世界の貴族は皆優しい。突然現れた幼女が、異世界から来た聖女だとあっさり認めた。それに自分より地位の高い皇女になっても、やっかむ様子がないのは変だ。


「ああ、そういう意味ね。簡単よ、聖女は聖獣より地位が高いの」


「うん?」


 聖獣の主人である聖女は、その地位がこの世界で最上位になる。女神のすぐ下だが、女神はこの世界の人と数えないとか。この帝国がもっとも大きな国で、その皇帝が聖獣なのだから、最強国家の皇帝陛下の主人が聖女なのだ。


 そう説明されると納得できるけど、異世界からいきなりきて、そんな高い地位に就いたら妬みや嫉みがすごいはず。


「聖女の地位を脅かすと国が亡びる。幼子でも童話で覚える内容だよ」


 小さい頃からの刷り込み教育で、聖女に逆らうなかれと教えるようだ。


「それに今回は、サラだったから余計に逆らわないと思うよ」


 エルが奇妙な表現をした。首を傾げた私への説明は、以下の通り。女神様の銀髪や青い目を受け継ぐ外見と、愛らしい幼女であったことが好印象を増幅させたらしい。


「可愛い幼女にケンカ売る気はないんでしょ。普通は嫌われたくないもん」


「聖獣は4人、全員と契約したのは歴代聖女の中でもサラちゃんだけよ」


 私を抱っこした美女は、ふさふさの尻尾を揺らしながら笑った。女神様に似てるから愛されてるなら、それでもいいや。嫌われたくないもの。何より、居心地がいい。あのケイトウって国で乱暴に扱われたのも、この幸運のためかな。


「その考え方おもしろいね。悪いことがあると、次はいいことが来る。埋め合わせ? ふーん、聖女の考えとして広めたらいいかも」


 エルは楽しそう。今日はエルとリディが一緒に眠る順番だって。リディに、別の男とベッドに入ってもいいの? と尋ねたら満面の笑みで返された。エルはベッドじゃなくて、ソファで寝るのよ、と。そっか、そうだよね。


「頼まれたってリディなんて襲わないから」


 むっとした口調のエルは、もしかして貧乳派だろうか。ぺたんこの自分の胸を撫でながら、そう考えたら大笑いされちゃった。

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