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61.いつもと違う味で痺れました

 酔っ払いに絡まれることもなく、エルと一緒にお菓子を食べる。隣で寝そべるコウは、先ほどまで生肉を貪っていた。宴会用なので、野生の肉より臭みの少ない家畜だけど、コウは気に入ったみたい。


「エル、いつもこんな感じなの?」


「うーん、隠しても仕方ないけど。アランの国はもう少しお上品だよ」


 アオザイみたいな長衣を着たエルは、簡単に説明してくれた。私を召喚したケイトウ=ヒユ聖王国は滅びたらしい。あの国はやたら形式張って、あれこれマナーが煩かったんだって。


 アランの治めるロメリア大公国は、中間くらい。周囲の小国もマナーはそこそこ。その理由はなんとも切なかった。


「国の衰退が激しいので、文化の継承がままならないのです」


 透明のカルピス味のジュースを渡され、私は口をつけた。先日飲んだばかりだけど、ヨーグルト系の味が気に入ってる。濁ってないのが不思議なんだよね。何かの果実の搾り汁と聞いたけど。濁りは濾過してるのかな。


「そんなにすぐ滅びちゃうの?」


「ええ。僅か三代ほどで滅びるのですから。王朝も王国もすべてです。先日滅びたケイトウも三代目でしたね」


 魔の三代目……歴史で習ったけど、やっぱりそこが肝みたい。徳川は、家康が生きて目を光らせてたから、家光の時の騒動を収められたんだっけ? 曖昧な知識を引っ張り出し、理解していく。やっぱり知ってる事例に当て嵌めるのが、一番分かりやすいね。


 空になると、新しく注ぐんじゃなくてコップごと交換。素直に受け取って口をつけた。


「ん、変な味」


 さっきと味が違う。眉を寄せた私は飲むのを中断した。変なの、口の中が痺れる感じする。筒抜けの感想を聞いたエルが、私の上にキラキラした粉を降らせた。アランが声を張り上げる。


「そこの侍女を捕まえてください。それとこの宴会の責任者をここへ」


 玉座で挨拶を受けていたアゼスが立ち上がり、この宴会に参加した者を含める全員を集めるよう指示する。青ざめたリディの後ろに尻尾が出た。ぶわっと増えて、たぶん9本出ちゃってると思う。


 ぼんやりと見守る私は、エルに言われるまで気づかなかった。


「サラ、熱が出てるね。治癒するから楽にしてて」


 さっきのキラキラで毒を消したけど、ただの人間の私は影響を受けてたみたい。発熱したせいで、意識がぼんやりしていた。怒ったリディが何か言ってるけど、遠くで聞こえる。


「体が回復の眠りに入っちゃうか。いいよ、守るから安心して」


「ゆっくり眠ってください、サラ。目が覚めたら掃除は終わっていますからね」


 うん、頷いて大きく深呼吸した。守ってもらえるのは信じてるし、アランのお掃除も……明日でいいのにね。宴会はまだ続くんでしょう? 熱に浮かされた私は心の中で呟きながら目を閉じた。


 ふわふわして気持ちいい。お酒に酔った時みたい。

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