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60.貴族の宴会は想像と違いすぎた

 大急ぎで支度を整えた私は、それでも一番最後だったみたい。コウの背中に跨って移動した廊下の先で、リディやアゼスは正装姿だった。紺色に金の飾りがついた軍服みたいなアゼスと、鮮やかなオレンジのドレスにハーフアップのリディ。どっちも素敵。


 リディの髪飾りは真珠や宝石がふんだんに使われてて、高そうなのは一目でわかった。指輪も嘘みたいに大きい宝石がついてる。あれがキャンディだと言われても、私は納得しちゃうな。そういうお菓子あったもの。


「飴の指輪ですか? 今度ご用意しますね」


「あら、そういうのは親の私がするべきじゃないかしら」


 アランは執事っぽいスーツみたいな服、でも胸元が違っていた。背中から見たらスーツだけど、襟まできっちり飾りがついた服は、ちょっと学生服にも似た形だ。中華風が近いのかな? 上着の裾が長くて、スリット入ってひらひら揺れる。燕尾服とも違うんだよね。


 リディが張り合って間に入ろうとしたけど、エルが割り込んだ。


「僕がいない間に何してんのさ。エスコートしようか? サラ」


「エスコートはいいの。コウがいるから」


 笑顔で断った。だってエルの手を取ったら、アランやアゼスが拗ねるし、リディが残念がるもの。コウの背中は、歩くとごつごつ骨が動くのが分かるんだよ。でも私を落とさないように注意してくれて、何より柔らかくて気持ちいいから好き。


「……失敗しましたね。聖獣である私達を差し置いて、一番の席を黒狼が奪うとは」


 複雑そうな顔でアランが嘆く。くーんと鼻を鳴らすコウは、なぜか得意げに顎を上げた。手を伸ばして顎の下も耳の横も掻く。


 入場を宣言する声が響き、アゼスとリディが腕を組んで進む。次が黒狼に乗った私、アランとエルは後ろに並んで入った。会場内はすでに飲んだり食べたりしていたみたいで、ざわめいていた。私達が入ると、すぐに静かになる。


「我らが国に聖女様が降臨なされた。これからの豊穣が約束されたのだ。すべての聖獣を従え、女神の祝福を受けた聖女の降臨を祝ってくれ」


「「「乾杯」」」


 わっとどよめきが戻り、手にしたグラスを掲げる。私が想像してたより、普通の宴会だった。イメージは結婚式場の披露宴かな。親戚のおじさんが踊り出したり、酔っ払った若者が窓から飛び降りたり。


「ラウ子爵家嫡男アベル、行きます」


「行け!」


「屍は拾ってやる」


 無責任に嗾けるおじさん達、すでに泥酔した青年がテラスの柵を乗り越える。


「あれっ! 危ない」


「大丈夫です。この下は池ですから」


「そうよ、こういう人が多いから池を作ってあるの」


 宴会用の広間の窓の外は、庭ではなく池らしい。高さも1階を半地下にして、備えているとか。完璧過ぎるけど……それくらいなら、参加者の意識を高めた方が安上がりなんじゃない?


「サラ、ひとつ教えておきましょう。人はすぐに前の失敗を忘れて同じ失敗を繰り返す生き物ですよ」


 あ、教育したけど代替わりするとまたやらかす、で合ってる? 首を傾げた私に、アランは「よく出来ました」と笑った。

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