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58.自由奔放な女神様だった

 女神様は何も説明してくれなかった。それどころか、聖獣達に話を聞くまで私に関わってたことも知らない。ラノベの転生者みたいに「このまま死ぬか、新しい世界で生きるか」すら聞かれなかった。目を開けたら、いきなり異世界で幼女……あれ? これって責任放棄かな。


『放棄はしてないわよ。ただ権限が凍結されてたの』


 聞こえてはいけない声が聞こえて、咄嗟に耳を両手で塞いだ。小さい子って頭が大きくて手足が短いから、結構上を押さえたイメージ。きっちり塞いだのに声は届いてしまった。


『残念、それじゃ聞こえちゃうわ。あなたの頭の中に直接届けてるから』


 砕けてお茶目な女神様ということは理解した。仕方なく手を外す。ずっと手を上げてると疲れるもん。


「権限の凍結って何ですか」


『うーん、そうね。私の持ってる権限では、転生者に必要以上に干渉しちゃいけないの。だけど、今回はひどい状況だったから手を出しちゃって。審議が終わるまで、手出しも口出しも禁じられた感じね』


 もう審議も終わって、お咎めなしだったのよ。からりと笑う女神様は、半透明だった。目の前に浮かぶ地に足つかないお姿、耳を塞いでも聞こえる声。あ、これって心霊現象だ。


『ふふっ、サラちゃんは可愛いのに賢いのね。神霊だなんて』


 字が違う。ホラーの方の心霊現象ね。心の中で訂正したら、聖獣は一斉に首をかしげた。通じないみたい。でも女神様はさらに笑い転げる。空中なのに器用だよね。


『こちらの世界からの召喚だから、おまけはいっぱいつけたのよ。長い寿命と可愛い姿、聖獣もふもふをてんこ盛り。あと魔法も使えるように奮発しちゃう』


 えいっと気合を入れた合図で、私の上に光の粉が降った。これが魔法が使えるようになる「奮発」らしい。異世界きたら魔法を使うのは憧れなので、ここは素直にお礼を言った。


「ありがとうございます」


『ああん、そこは噛んで欲しかった。ありがとうごじゃいましゅ、とか』


 無理。そんなあざとい真似は無理です。20歳近い女に何を求めてるんですか。全力で首を横に振ったら、ふらりとよろけてしまった。当たり前のようにリディが受け止める。後頭部に触れるお胸が気持ちいい。


『何かあったら、私を呼ぶといいわ』


 そう言い残して、女神様は消えてしまった。見送った聖獣達は一礼しているから、確かに本物の女神様だったんだと思う。騒がしく一方的に話して消えた彼女の最後の言葉を思い返し、私は叫んでいた。


「何て呼べばいいのよ!!」


 あの女神様、お名前を教えていかなかったわ。

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