表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/100

46.天罰は聖獣によって容赦なく

 備蓄を総動員したところで、せいぜい1ヵ月もつかどうか。彼らの食物自給率は、15%前後だった。すべて傷みやすい葉物ばかりだ。国は小さいのに、無駄に広い道を整備した王都を立派に見せようとした。周囲を山に取り囲まれた地形なのに、だ。その所為で貴重な平地が畑ではなく、道や広場になった。


 ケイトウ国の自給率が低いのは、当然の失策だった。見栄えばかり気にした都には、立派な石造りの門や塀で守られている。他国から来る使者や商人に立派な都を自慢したいだけの、無駄遣い。散財した結果はすぐに現れた。


 国民の生活は困窮していく。それでも見栄を張りたいケイトウ国王は暴挙を為した。異世界からの聖女召喚である。結果は欲しいが、貢ぎ物は勿体ない。そんな彼らが行った召喚は不十分だった。対価となる魔力が不足し、呼び寄せられたサラが中途半端な状態に置かれた。


 すっぽりと入った穴の出口が、手首も通れない細さしかなかった……こう想像すれば分かるだろう。無謀に過ぎた。指先がかろうじて抜けたところで、詰まってしまう。このまま放置すれば、サラは消滅してしまう。暮らしていた世界で、彼女はすでに居場所がなかった。


 召喚され応答した形になれば、過去に戻ることは出来ない。不可逆性の強い一方通行の道なら、出口を広げるだけ。無理やり引っ張り出すにあたり、どうしても通過できない部分を諦めた。代わりに不足した部分を女神が補う。己の創造物が行った不手際のツケを払うために。


 ――だからこそ、天罰は聖獣によって容赦なく与えられる。






 主人との楽しい朝食を終え、エルとアランは貿易中立都市バーベナに戻った。仕事と言うのは嘘ではない。ただ詳しく話せないのも事実だった。


「荷物の回収は昼間のうちに。日が暮れたら動く、それでいい?」


「構いません、バラバラにしてもいいと女神の許可も出ていますし」


 にやりとアランが悪い笑みを浮かべる。悪役そのものだ。しかし対するエルも大差なかった。


「すぐバラさないでね。苦しめて痛めつけて、生きてることを後悔させてやるんだから」


 生まれたことも後悔してもらうが、その部分は女神の領域だ。神にとっても長い時間、苦しみを味わい続けるだろう。それでも生きている間は、聖獣の領域だった。一寸刻みか、摺り下ろすのも悪くない。エルの思考も大概ヤバイ方向に振り切っていた。


「馬鹿だね、せめてサラを大切に扱えばよかったのに」


「ですが、彼らが放り出したお陰で私達の主人になってくれたのですから、逆に感謝すべき話では? もちろん、お礼の方法はいろいろありますが」


 お礼参り……? サラが聞いていたらそう呟いただろう。彼らの黒い企みは彼女に届くことはなく、おそらく知られることはない。それでよかった。聖獣達は礼を言われるために契約するのではない。


「取り返した荷物を渡す理由を考えましょう」


 明るい話題に変更するアランに、エルも乗っかった。


「拾ったとかじゃなくて、返してもらったは?」


「嘘くさくありませんか?」


「じゃあ、何かと引き換えにしたってのはどうだろう」


 わくわくしながら、午前中を今後の相談に当てた二人。午後の実行を残すのみだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ