表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/100

38.聖獣が政を行う理由が判明しました

 皇帝、皇后、大公主、自治領トップ……一応、皇女。入場する面々の名が読み上げられる。長い名前が終わる前に、先頭を切ってアゼスが歩き出した。腕を絡めたリディと微笑み合う姿は、理想の夫婦だ。ゴツい大男と妖艶美女、これぞ美女と野獣そのものだった。


 まあ、アゼスは顔も精悍でカッコいいけどね。野獣呼ばわりは可哀想かも。


 続くアランに抱っこされた私を見て、ひそひそと噂話が始まった。これは良くあるラノベ展開的な「お前なんか皇族じゃない」や「突然湧いて出た得体の知れない子」扱いが待ってるのかな?


 不謹慎だけど、ドキドキしちゃう。誰が最初に話しかけてくるんだろう。あのお嬢さんかな、それともあちらの紳士? きょろきょろする私に、アランがそっと耳打ちした。


「サラのご期待に添えない展開だと思いますよ」


 意味を捉えかねた私が口に出す前に、アゼスの挨拶が始まった。バリトン系の惚れ惚れする声だ。


「我らが皇女サラの祝いの席を設けた。この国の繁栄と我ら聖獣が主人を得た僥倖に、乾杯!」


「「「乾杯」」」


 口々に声とグラスを上げた貴族は、当然のように一気飲みする。口を付けて置くのが普通かと思ったら、帝国では一気飲みが主流みたい。お酒が弱い人は参加しづらくない?


 お酒じゃなくてもいいんですよ、こそっと心の中でアランが教えてくれた。普段は読まれてばかりの私だけど、こういう秘密のお話が出来るのは便利だね。都合のいいカンニングペーパーみたいじゃない?


 アゼスとリディもグラスを空け、アランやエルは口をつけただけ。これは帝国の貴族かどうかで違うのかも。私は小さな手にグラスを渡された。持ちづらいので、両手で掴む。中身はちょっとで、透明だけど甘い匂いがした。傾けて一気に飲み干す。


 味はカルピスっぽい。濁ってないのに、ヨーグルト系の味なのは不思議。飲み終えて返したグラスは、すぐに侍女が片づけた。溢さなくてよかったと安心しながら顔を上げると、貴族達が私を凝視している。まさか、挨拶するとか?


「挨拶の時間だ」


 エルがぼそっと呟いたので、慌てて頭の中で考え始める。まずは名乗って、これから皇女になりますって言う? それと「よろしくお願いします」は皇族っぽくないかも。何か……えっと「頼む」は偉そうだし。


「お初にお目にかかります。アントワーヌ公爵家の……」


「皇女殿下にお目にかかれたこと、光栄に存じます。エマール侯爵家の……」


 大量に名前とご挨拶が降ってくる。その度に、大きな箱や高そうな小箱のプレゼントが積み重ねられた。私はといえば、アランのお膝に乗ったまま。全員で壇上の長椅子で寛いでいる。この世界って、聖獣が人間を支配してるの?


「少し違いますね。聖獣でない者が上に立つと、公平性を欠く政を行い破綻します。それを数十回見守った結果、我らが統治した方が安泰だと気づいてしまったのです」


 苦笑いするアランの説明に、なるほどと納得した。目先の利益で踊る王族や皇族では、周囲が大変なんだ。媚を売ってくる者や賄賂を持ってくる者だけ優遇したら、過去の日本の政治みたいに一貫性がなくなる。


「サラの世界も大変だったんだね」


 日本の未熟な政治体制を嘆いていたら、エルに同情されちゃった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ